月例経済報告(H27.9.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基調が 続いている。 ・消費者物価は、緩やかに上昇している。 〈先行き〉 先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の 効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、アメリカの 金融政策が正常化に向かう中、中国経済をはじめとするアジア新興国等の 景気が下揺れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある。こうした中で 金融資本市場の変動が長期化した場合の影響に留意する必要がある。
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個人消費の動向
○ 個人消費は総じて見れば底堅い動きである。
・ 消費総合指数は、前月比で、5月+0.9%、6月▲0.4、7月▲0.0%。
○ 自動車販売は、おおむね横ばいである。
・新車販売台数〈含軽〉は前月比で、6月+0.7%、7月▲4.3%、8月+5.8%。
○ 家電はおおむね横ばいである。
○ 百貨店・スーパーの売上はおおむね横ばいである。
○ 外食及び旅行は、おおむね横ばいである。
・外食売り上げは、前月比で、5月+2.3%、6月▲1.8%、7月1.2%。
・7月の旅行取扱金額は、前月比で、国内▲2.3%、海外+5.4%、合計+0.1%。
○ 消費者マインドは、持ち直しに足踏みがみられる。
・消費者態度指数は、6月41.7(前月差+0.3)、7月40.3(前月差▲1.4)、8月41.7(前月差+1.4)。
○ 60歳以上の単身世帯の消費は弱含みである。
○ 実収入の伸びに比べ、消費は抑制傾向にある。
○ 足下、中国経済、株、物価上昇等がマイナスに寄与した。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、持ち直しの動きである。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月▲0.2%、6月+13.4%、7月▲11.5%。
・持家着工数は前月比で、5月▲1.7%、6月+9.5%、7月▲6.0%。
・貸家着工数は前月比で、5月+1.3%、6月+10.5%、7月▲2.0%。
・分譲着工数は前月比で、5月+3.8%、6月+22.1%、▲31.7%。
○ 住宅着工戸数は、ほぼ全地域で前年比増となった。
○ 住宅の建設費は、このところ横ばいである。
○ 公共投資は、総じて弱い動きである。
・請負金額は前月比で、5月▲6.3%(出来高+3.5%)、6月▲2.9%、(出来高+4.7%)、7月▲8.3%
(出来高+4.6%)、8月▲4.8%。
雇用・賃金の動向
○ 総雇用者所得は持ち直してきている。
・7月の名目総雇用者所得は前年比で+1.2%、実質総雇用者所得は前年比で+1.5%。
○ 不本意非正規雇用者比率は低下した。
○ 転職後の賃金は、30歳代以下において改善が顕著である。
○ 有効求人倍率は上昇した。
・有効求人倍率は、6月1.19、7月1.21。
・完全失業率は、6月3.4%、7月3.3%。
物価の動向
○ 消費者物価は、緩やかに上昇している。
・7月のコア(生鮮食品を除く総合;固定基準)は、前月比+0.0%。
・7月のコアコア(生鮮食品、石油製品その他特殊要因を除く総合;連鎖基準)は、前月比+0.2%。
○ 消費者物価(コア)は、前年と同水準である。
・7月のコア(固定基準)は、前年比+0.0%。
・7月のコアコア(連鎖基準)は、前年比+0.9%。
○ 食料、外食、耐久消費財が上昇に寄与している。
○ 家庭向けの電気代及び都市ガス代には、下落の動きがみられる。
投資・収益・業況
○ 企業収益は改善、設備投資は総じて持ち直してきている。
○ 電気機械等では、設備投資は減価償却と同水準にある。
○ 業況判断は、一部に慎重さがみられるものの、おおむね横ばいである。
○ 中小企業の仕入価格DI(前年比「上昇」-「下落」)は、低下傾向にある。
・中小企業の仕入・販売価格の動向について、中小企業月次景況観測(商工中金)の「販売価格
DI-仕入価格DI」は、5月▲11.5、6月▲13.1、7月▲10.6、8月▲9.4。
・中小企業景況調査(日本公庫)の「販売価格DI-仕入価格DI」は、5月▲10.4、6月▲18.8、
7月▲11.6、8月▲6.8。
生産
○ 生産は、このところ横ばいである。
・鉱工業生産は、前月比で6月+1.1%、7月▲0.8%(予備調査で、8月は前月比+2.8%、9月は
前月比▲1.7%)。
○ 輸送機械及び電子部品・デバイスは、このところ弱含みである。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月▲1.2%、8月(予測)+2.2%、9月(予測)▲9.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、7月▲3.8%、8月(予測)+3.0%、9月(予測)+7.2%。
・輸送機械は前月比で、7月▲1.4%、8月(予測)+2.5%、9月(予測)▲5.1%。
○ 電子部品・デバイスおよび輸送機械の出荷は内外需ともに弱含みである。
○ 在庫は、はん用・生産用・業務用機械を中心に増加傾向にある。
外需
○ 輸出はこのところ弱含んでいる。
○ 中国向け輸出は、スマートフォンの生産関連、アメリカ向け輸出は原動機・掘削機・化学製品など
が減少した。
○ 輸入はこのところ弱含んでいる。
○ 旅行収支の黒字幅は、拡大している。
・旅行収支は前月比で、6月+37.9%、7月▲0.2%。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)は、7カ月ぶりに50以下となった。
・現状判断DIは、6月51.0(前月差▲2.3)、7月51.6(前月差+0.6)、8月49.3(前月差▲2.3)。
○ 現状判断は、多くの地域で低下した。
○ 先行き判断(DI)は、8か月ぶりに50以下となる。
・先行き判断DIは、6月53.5(前月差▲1.0)、7月51.9(前月差▲1.6)、8月48.2(前月差▲3.7)。
○ 先行き判断は、すべての地域で低下した。
アメリカ経済の動向
○ アメリカの景気は、回復が続いている。
・2015年4-6月期実質GDPは前期比年率+3.7%
○ 設備投資は持ち直した。
○ 雇用者数は増加し、失業率は低下した。
○ 消費は、増加している。
中国経済の動向
○ 中国の景気は、緩やかに減速してきている。
・2015年4-6月期実質GDPは前年比+7.0%
○ 生産は伸びが鈍化、輸出はこのところ弱い動きである。
○ 固定資産投資は、弱い伸びとなっている。
○ 製造業購買担当者指数(PMI)は低下した。
○ 輸出入は弱い動きである。
・8月の輸出総額は前年比▲5.5%、8月の輸入総額は前年比▲13.8%。
○ 最近の中国の経済対策
◎追加の金融緩和(8月25日)
・貸出基準金利引下げ、預金準備率引下げ等
◎安定的な成長を支援するための財政政策措置(9月8日)
・小規模・零細企業に対する租税優遇策の適用範囲の拡大の迅速な実施等
◎国有企業改革に関する指導意見(9月13日)
・混合所有制の推進(株式公開の促進、民間企業との株式交換等)
・国有資産の監督管理の強化
・国有企業のイノベーション・資源環境保護における模範的役割の確立
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに回復している。
・2015年4-6月期実質GDPは前期比年率+1.4%。
○ ユーロ圏の失業率は、高水準ながら低下した。
・ユーロ圏全体の7月の失業率は、10.9%(若年失業率21.9%)
○ ユーロ圏の消費は増加した。
○ ユーロ圏の消費は緩やかに増加している。
・7月の実質小売売上は前月比で、+0.4%(なお、ドイツ+1.4%、英国8月期+0.2%)。
○ ユーロ圏の物価上昇率は低水準で横ばいである。