月例経済報告(H28.4.21) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。 ・消費者物価は、緩やかに上昇している。 〈先行き〉 先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の 景気が下揺れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある。こうした中で、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意 する必要がある。また、平成28年(2016年)熊本地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。 |
個人消費の動向
○ 個人消費は消費者マインドに足踏みがみられる中、おおむね横ばいである。
・消費総合指数は、前月比で、12月+0.2%、1月+0.5%、2月▲0.2%。
○ 消費者マインドは、足踏みがみられる。
・消費者態度指数は前月差で、1月▲0.3、2月▲2.2、3月+1.6%。
○ 先行き不安、円高、株等がマイナスに寄与した。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月+2.8%、12月▲2.2%、1月+1.5%、2月+11.6%。
・持家着工数は前月比で、11月+2.1%、12月▲5.1%、1月+6.8%2月+5.6%。
・貸家着工数は前月比で、11月+3.5%、12月+1.4%、1月▲0.8%、2月+10.9%。
・分譲着工数は前月比で、11月+6.1%、12月▲6.1%、1月▲0.9%、2月+15.0%。
○ 公共投資は、緩やかに減少している。
・請負金額は前月比で、12月▲5.3(出来高▲1.5%)、1月+7.6%(出来高+1.6%)、
2月▲8.3%(出来高▲1.1%)、3月+4.1%。
雇用・賃金の動向
○ 有効求人倍率は上昇している。
・有効求人倍率は、12月1.27、1月1.28、2月1.28。
・完全失業率は、12月3.3%、1月3.2%、2月3.3%。
○ 総雇用者所得は持ち直してきている。
・2月の名目総雇用者所得は前年比で+2.4%、実質総雇用者所得は前年比で+2.4%。
○ 長期失業率は、男女ともに低下傾向にある。
○ 賃上げを実施する企業の割合が上昇した。
物価の動向
○ 消費者物価は、緩やかに上昇している(2月総合前月比+0.3%)。
・2月のコア(生鮮食品を除く総合;固定基準)は、前月比▲0.1%。
・1月のコアコア(生鮮食品、石油製品その他特殊要因を除く総合;連鎖基準)は、前月比+0.1%。
○ 食料が上昇に寄与している。
○ ガソリン・電気代には、下落の動きがみられる。
投資・収益・業況
○ 業況判断は、慎重さがみられる。
○ 中小企業の仕入価格DI(前年比「上昇」-「下落」)は、低下傾向にある。
・中小企業の仕入・販売価格の動向について、中小企業月次景況観測(商工中金)の「販売価格
DI-仕入価格DI」は、12月▲15.3、1月▲10.5、2月▲10.1、3月▲11.0。
・中小企業景況調査(日本公庫)の「販売価格DI-仕入価格DI」は、12月▲20.8、1月▲12.0、
2月▲10.9、3月▲10.8。
・業況判断DI(日銀短観;「良い-悪い」、%ポイント)は、
大企業・製造業で、12月+12、3月+6、先行き+3。
大企業・非製造業で、12月+25、3月+22、先行き+17。
中小企業・製造業で、12月±0、3月▲4、先行き▲6。
中小企業・非製造業で、12月+5、3月+4、先行き▲3。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・機械受注は前月比で、12月+1.0%、1月+15.0%、2月▲9.2%(1-3月期見通し+6.4%)。
・資本財総供給は前月比で、12月▲3.9%、1月+3.8%、2月▲6.8%。
○ 企業のM&Aは増加した。
生産
○ 生産は、このところ横ばいである。
・鉱工業生産は、前月比で、1月+3.7%、2月▲5.2%、3月(予測)+3.9%、4月(予測)+5.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月+7.2%、2月▲1.4%、3月(予測)+7.3%、
4月(予測)+7.5%、
・電子部品・デバイスは前月比で、1月+6.3%、2月▲16.5%、3月(予測)▲3.0%、
4月(予測)+12.1%。
・輸送機械は前月比で、1月+2.9%、2月▲8.8%、3月(予測)+11.5%、4月(予測)+9.4%。
○ 在庫は、はん用・生産用・業務用機械を中心に、減少傾向にある。
外需
○ 輸出はおおむね横ばいである。
○ 貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。
○ 旅行収支の黒字幅は拡大傾向にある。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)は3か月ぶりの上昇となり、季節調整値は3か月連続の低下となった。
・現状判断DIは前月差で、1月▲2.1、2月▲2.0、3月+0.8。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲2.0、2月▲3.9、3月▲3.0。
○ 景気の先行き判断(DI)は2か月連続の低下となり、季節調整値は4か月連続の低下となった。
・先行き判断DIは前月差で、1月+1.3、2月▲1.3、3月▲1.5。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月▲1.7、2月▲3.7、3月▲0.4。
「平成28年(2016年)熊本地震」の経済への影響について(暫定版)
○ 震災の経済への影響について、サプライチェーンを通じた影響が懸念される(報道ベース等)。
〈農林水産業〉
・八代市、宇城市、熊本市の農協がトマトの出荷を停止(16日)。
八代市、熊本市の農協は出荷再開(18日~)。
関東や関西圏への春野菜の出荷にも影響。
〈製造業〉
・A社(飲料)は、九州全体の拠点である工場の生産停止(15日~)。
再開には1か月以上かかる見通し。
・B社(自動車向け半導体)は生産停止(14日~)。22日より一部工程において 生産を再開。車体の
エンジン用部品を生産。
・C社(画像センサー)は、生産停止(14日~)。C社の画像センサーは世界シェア トップであり、
デジタルカメラやスマートフォン向け部品を国内外のメーカーに 供給。生産停止が長引けば、
デジタルカメラやスマートフォンのメーカーの生産に影響。
・D社(自動車部品)は、生産停止(14日~)。D社の本社は、部品を自社の海外拠点 から調達する
方針。E社は国内の完成車組み立て工場の大半を段階的に停止。25日以降、段階的に稼働を再開。
〈非製造業・サービス〉
・F社(住宅販売)は熊本県内で工事休止(24日まで)。
・九州新幹線(1日あたりの収入135百万円)は運行を休止(14日~)。
新水俣-鹿児島中央間で運転再開(20日~)。
九州を縦断する在来線も運休(16日~)。
・熊本空港のターミナルビルの破損により全便が欠航。19日から一部の便で運航を再開。
・中国は、九州への渡航を慎重に行い、熊本県への渡航を控えるよう注意喚起する旨 HP掲載
(4月16日~5月16日)。マカオも同様(4月16日~)。
香港及び台湾は熊本県への渡航に対し注意喚起(4月16日~)。
中国経済の動向
○ 輸出は減少し、生産の伸びが鈍化している
★5月1日からの税制改革の概要(営業税から増値税への全面的移行)
〈改革の概要〉
◎ 2012年より地域・業種を限定して実施してきた営業税(売上高に課税)から増値税(付加価値額に
課税)への移行を5月1日に全面的に実施、営業税は廃止(※企業所得税は別途存在)。
◎ 税率は6%(サービス業等)~17%(輸入業等)の4段階(小規模事業者は売上高をベースに
一律3%)。
〈改革の意義〉
◎ 分業・提携の促進を通じた産業の多様化や構造調整の促進、税負担の軽減。
〈改革に伴う影響〉
◎ 本年の企業の税負担が5,000億元(日本円で約8兆円)以上軽減される見込み
(本年の財政赤字増加幅5,600億元(対GDP比0.6%)の大半に相当)。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は回復が続いている。
○ 消費は増加、自動車は、一時的な要因もあり、減少している。
○ 雇用者数は増加し、労働参加率は持ち直してきている。
○ 生産・財輸出はこのところ弱い動きである。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は緩やかに回復している。
○ ユーロ圏の10-12月期実質GDPは、前期比年率+1.3%。
○ ユーロ圏の生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
○ ユーロ圏の輸出は、弱い動きである。