月例経済報告(H28.5.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。 ・消費者物価は、緩やかに上昇している。 〈先行き〉 先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の景気 が下揺れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある。こうした中で、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、平成28年(2016年)熊本地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。 |
個人消費の動向
○ 個人消費は消費者マインドに足踏みがみられる中、おおむね横ばいである。
・ 消費総合指数は、前月比で、12月+0.2%、1月+0.7%、2月+0.2%、3月▲0.1%(1-3月期+0.5%)。
○ 地震、円高、株安等がマイナスに寄与した。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月▲2.2%、1月+1.5%、2月+11.6%、3月+2.0%。
・持家着工数は前月比で、12月▲5.1%、1月+6.8%2月+5.6%、3月+4.6%。
・貸家着工数は前月比で、12月+1.4%、1月▲0.8%、2月+10.9%、3月▲4.4%。
・分譲着工数は前月比で、12月▲6.1%、1月▲0.9%、2月+15.0%、3月+12.5%。
○ 公共投資は、緩やかに減少している。
・請負金額は前月比で、1月+7.6%(出来高+1.6%)、2月▲8.3%(出来高▲1.3%)、
3月+4.1%(出来高▲0.8%)、4月+19.9%。
雇用・賃金の動向
○ 有効求人倍率は上昇傾向にある。
・有効求人倍率は、1月1.28、2月1.28、3月1.30。
・完全失業率は、1月3.2%、2月3.3%、3月3.2%。
○ 総雇用者所得は、緩やかに増加してきている。
・3月の名目総雇用者所得は前年比で+2.9%、実質総雇用者所得は前年比で+3.5%。
○ 一般・パートの雇用数が増加し、マンアワー(雇用者数×労働時間)が増加した。
物価の動向
○ 消費者物価は、緩やかに上昇している(3月総合前月比▲0.1%)。
・3月のコア(生鮮食品を除く総合;固定基準)は、前月比▲0.1%。
・3月のコアコア(生鮮食品、石油製品その他特殊要因を除く総合;連鎖基準)は、前月比▲0.1%。
○ 電力自由化により、電気代には一部で値下げの動きがみられる。
○ ガソリン・電気代には、下落の動きがみられる。
投資・収益・業況
○ 企業収益は改善傾向にあるが、そのテンポは緩やかになっている。
○ 中小企業の仕入価格DI(前年比「上昇」-「下落」)は、低下傾向にある。
・中小企業の仕入・販売価格の動向について、中小企業月次景況観測(商工中金)の「販売価格
DI-仕入価格DI」は、12月▲15.3、1月▲10.5、2月▲10.1、3月11.0。
・中小企業景況調査(日本公庫)の「販売価格DI-仕入価格DI」は、12月▲20.8、1月▲12.0、
2月▲10.9、3月▲10.8。
○ 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
・機械受注は前月比で、1月+15.0%、2月▲9.2%、3月+5.5%
(1-3月期+6.7%、4-6月期見通し▲3.5%)。
・資本財総供給は前月比で、1月+3.8%、2月▲6.8%、3月+2.1%(1-3月期▲3.1%)。
生産
○ 生産は、このところ横ばいである。
・鉱工業生産は、前月比で、2月▲5.2%、3月+3.8%、4月(予測)+2.6%、5月(予測)▲2.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月▲1.4%、3月+3.8%、4月(予測)▲1.7%、
5月(予測)+4.3%、
・電子部品・デバイスは前月比で、2月▲16.5%、3月+2.8% 、4月(予測)+6.2%、
5月(予測)▲1.8%。
・輸送機械は前月比で、2月▲8.8%、3月+7.2%、4月(予測)+9.6%、5月(予測)▲12.4%。
○ 在庫は、輸送機械・鉄鋼で増加した。
外需
○ 輸出はおおむね横ばいである。
○ 貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。
○ 旅行収支の黒字幅は拡大傾向にある。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)は2か月ぶりの低下となり、季節調整値は4か月連続の低下となった。
・現状判断DIは前月差で、2月▲2.0、3月+0.8、4月▲1.9。
・現状・季節調整値DIは前月差で、2月▲3.9、3月▲3.0、4月▲1.6。
○ 景気の先行き判断(DI)は3か月連続の低下となり、季節調整値は5か月連続の低下となった。
・先行き判断DIは前月差で、2月▲1.3、3月▲1.5、4月▲1.2。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月▲3.7、3月▲0.4、4月▲2.4。
「平成28年(2016)年熊本地震」のストック面への影響試算
※ 平成28年熊本地震では、地域住民の生活基盤、地域経済を支える生産施設・設備や 社会インフラ等のストックが、広範にわたり毀損した。こうしたストックの毀損は、住民生活 のみならず、生産や雇用など地域経済、さらにはサプライチェーンや内外観光等を通じ て日本経済にも影響を及ぼしており、先行きに留意する必要がある。 このため、熊本地震による地域経済や日本経済への影響を分析する一環として、東 日本大震災時の推計方法を踏まえ、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震の被害状況 (損壊率)を参照しつつ、個人住宅や民間企業が保有する機械設備及び建屋等も含め たストック全般の毀損額を暫定的に試算した。
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○ 熊本・大分県の毀損額(推計)は、約2.4~4.6兆円
(熊本県;約1.8~3.8兆円。大分県;約0.5~0.8兆円)。
〈内訳〉
・建築物等 約1.6~3.1兆円。
・社会インフラ 約0.4~0.7兆円。
・電気・ガス・上下水道 約0.1兆円。
・他の社会資本 約0.4~0.7兆円。
○ 両県のストック総額(推計)は、 約63兆円(熊本県;約34兆円。大分県;約28兆円)。
(注1)激甚指定時の被害見込額は道路等の公共土木施設等及び農地・農業用施設
・林道の約2,900億円、中小企業約1,600億円等となっている。
(注2)「建築物等」のうち、民間企業資本ストックおよび住宅に相当する部分は約95%、
「電気・ガス・上下水道」のうち、民間企業業資本ストックに相当する部分は約51%
となり、ストック全体に占める民間保有の割合は約66%である。
中国経済の動向
○ 輸出は下げ止まりの動きがみられる。
○ 固定資産投資は、伸びがおおむね横ばいとなった。
○ 理財商品(投資信託類似商品)の残高と貸付残高に占める不良債権比率は、増加してきている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は回復が続いている。
○ 2016年1-3月期実質GDP成長率は、0.5%増加した。
○ 雇用者数は増加し、賃金の伸びはやや高まっている。
○ 設備投資は弱い動きである。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は緩やかに回復している。
○ ユーロ圏の1-3月期実質GDPは、前期比年率2.1%増加した。
○ ユーロ圏の消費は増加した。
○ ユーロ圏の輸出は、弱い動きである。