月例経済報告(H28.10.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。 ・消費者物価は、横ばいとなっている。 〈先行き〉 先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国をはじめとするアジア新興国等の景気が 下揺れし、わが国の景気が下押しされるリスクがある。また、英国のEU 離脱問題など、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の 影響に留意する必要がある。 |
個人消費の動向
○ 個人消費は、総じて見れば底堅い動きである。
・ 消費総合指数は、前月比で、5月▲0.1%、6月+0.0%、7月+0.5%、8月▲1.2%。
○ 外食売上・旅行取扱額が、8月期の減少に寄与した。
・ 消費者態度指数(DI)は、前月差で、6月+0.9、7月▲0.5、8月+0.7、9月+1.0%。
○ 総雇用者所得は、緩やかに増加してきている。
・8月の名目総雇用者所得は前年比で+1.5%、実質総雇用者所得は前年比で+2.4%。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、このところ横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月2.3%、6月▲1.3%、7月+0.1%、8月▲4.9%。
・持家着工数は前月比で、5月+1.1%、6月+2.9%、7月+1.3%、8月▲3.1%。
・貸家着工数は前月比で、5月+0.4%、6月▲2.3%、7月+6.8%、8月▲1.1%。
・分譲着工数は前月比で、5月+3.1%、6月▲6.2%、7月▲8.4%、8月▲12.4%。
○ 公共投資は、底堅い動きをみせている。
・請負金額は前月比で、6月▲4.9%(出来高+0.6%)、 7月▲1.1%(出来高▲0.8%)、
8月+8.1%(出来高▲1.3%)、9月+5.6%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は改善している。
・有効求人倍率は、6月1.37、7月1.37、8月1.37(正社員は、0.88)。
・完全失業率は、6月3.1%、7月3.0%、8月3.1。
物価の動向
○ 消費者物価は、横ばいとなっている(8月総合前月比▲0.1%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、8月総合前年比▲0.5%。
投資・収益・業況
○ 業況は、一部に慎重さがみられるものの、おおむね横ばいとなっている。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、6月+6、9月+6、先行き+6。
「大企業・非製造業」は、6月+19、9月+18、先行き+16。
「中小企業・製造業」は、6月▲5、9月▲3、先行き▲5。
「中小企業・非製造業」は、6月±0、9月+1、先行き▲2。
○ 設備投資は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・機械受注は前月比で、6月+8.3%、7月+4.9%、8月▲2.2%(7-9月期見通し+5.2%)。
生産
○ 生産は、このところ持ち直しの動きがみられる。
・鉱工業生産は、前月比で、7月▲0.4 %。8月+1.3%、9月+2.2%(予測)、10月(予測)+1.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月▲0.8%、8月+2.2%、9月+5.1%(予測)、
10月(予測)+1.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、7月+1.5%、8月+6.2%、9月(予測)▲2.0%、
10月(予測)+8.8%。
・輸送機械は前月比で、7月+0.3%、8月▲1.7%、9月(予測)+5.0%、10月(予測)+2.0%。
外需
○ 輸出・輸入ともに、おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
○ IC・液晶デバイス分野が輸出の伸びに寄与している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続の上昇となった。
・現状・季節調整値DIは前月差で、6月▲0.7、7月+3.3、8月+2.8、9月+0.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続の上昇となった。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、6月▲4.9、7月+6.9、8月+2.3、9月+0.7。
中国経済の動向
○ 中国では、各種政策効果もあり、景気はこのところ持ち直しの動きがみられる。
○ 輸出はこのところ弱い動きである。
○ 消費は堅調に増加しているが伸びがおおむね横ばい、生産は伸びがおおむね横ばいとなった。
○ 固定資産投資は、伸びが低下した。
○ 消費者物価上昇率は、このところやや低下してきている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、企業部門の一部に弱めの動きもみられるが、景気は回復が続いている。
・原油掘削リグ稼働数とWTI原油価格は緩やかに上昇している。また、石油関連企業破たん件数も
減少傾向にある。
○ 消費は増加、自動車販売台数は高水準でおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工はおおむね横ばい、住宅価格は緩やかに上昇となった。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低水準でおおむね横ばい、賃金の伸びはやや高まった。
○ 生産は、持ち直しの動きがみられる。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏の景気は緩やかに回復し、イギリスの景気は回復した。
○ 消費は、緩やかに上昇している。
★ EU国民投票後のイギリスの動き
6月23日 EU残留・離脱を問う国民投票(翌24日開票)
7月13日 メイ英首相就任
8月 3日 イングランド銀行が金融緩和(政策金利を0.25%に引下げ、資産買取プログラムの
上限を4,350億ポンドに拡大する等)
10月 2日 メイ英首相が2017年3月末までにEU条約第50条(離脱通知)の発動を行うと表明
10月11日 メイ英首相がEU離脱に係る計画についての議会での審議を認めたと報じられる