月例経済報告(H30.7.19) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の 効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、平成30年7月豪雨の経済に与える影響に十分留意する必要がある。 |
平成30年7月豪雨の経済への影響(暫定版)
○ 豪雨による被害は広範囲にわたっており、マクロ経済への影響については、工場の操業停止と
いった直接的な被害、物流の滞りによる部品供給の遅れなどサプライチェーンを通じた影響、
インフラへの被害による影響などがみられる。
○ 今後も、農林水産業、中小企業・小規模事業者、社会資本等への影響も含め、様々な面から
状況の把握に努めていく。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・ 消費総合指数は、前月比で、2月+0.4%、3月▲0.7%、4月+0.7%、5月▲0.4%。
・ 消費者態度指数(DI)は前月差で、2月▲0.3%、3月±0%、4月▲0.7%、5月+0.2%、6月▲0.1%。
・ 5月の実質総雇用者所得は、前期比で+1.5%。
○ 技術革新やインターネットの普及に伴い、eコマース(インターネットを利用した消費)の市場
規模が拡大している。現状では、市場規模の半分以上は物販系分野が占めており、特に
事務用品、家電、書籍等をオンラインで購入する機会が多くなっている。
○ インターネットの利用の拡大は、シェアリングなどの新しいサービスの普及にもつながって
いる。例えば、カーシェアリングの動向をみると、車両台数や会員数が大きく増加している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなった。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2月▲1.3%、3月▲1.5%、4月+5.1%、5月+2.5%。
・持家着工数は前月比で、2月▲0.6%、3月▲0.6%、4月+0.3%、5月+2.4%。
・貸家着工数は前月比で、2月▲0.9%、3月+0.6%、4月+3.1%、5月▲0.4%。
・分譲着工数は前月比で、2月▲5.6%、3月▲1.2%、4月+10.8%、5月+8.7%
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前年同月比で、2月▲4.0%(出来高+0.3%)、3月+7.2%(出来高±0.0%)、
4月+21.4%(出来高+0.5%)、5月▲5.9%(出来高▲0.6%)、6月▲7.1%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢が着実に改善する中、本年の春闘では、働き方改革関連法の施工を先取りする動きとして、
①時間外労働の上限や勤務間インターバル制度の導入など、長時間労働の是正に向けた取組
②非正規雇用者に対する一時金支給等、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた取組
が見られている。
・有効求人倍率は、1月1.59、2月1.58、3月1.59、4月1.59、5月1.6(正社員は1.1)となった。
・完全失業率は、1月2.4%、2月2.5%、3月2.5%、4月2.5%、5月2.2%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している(5月総合前月比±0.0%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、5月総合前年比+0.6%。
投資・収益・業況
○ 業況は、おおむね横ばいとなった。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2017年9月+22、12月+26、2018年3月+24、6月+21、9月+21。
「大企業・非製造業」は、2017年9月+23、12月+25、2018年3月+23、6月+24、9月+21。
「中小企業・製造業」は、2017年9月+10、12月+15、2018年3月+15、6月+14、9月+12。
「中小企業・非製造業」は、2017年9月+8、12月+9、2018年3月+10、6月+8、9月+5。
○ 企業収益は、改善している。
○ 設備投資は、緩やかに増加している。
・設備投資計画6月調査では、前年度比+9.1%となり、6月調査では最高の伸び率となった。
・食料品や運輸・郵便、電気機械部門の業種が増加に寄与した。
生産
○ 生産は、緩やかに増加している。
・鉱工業生産指数は前月比で、4月+0.5%、5月▲0.2%、6月(予測)+0.4%、7月(予測)+0.8%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月+3.6%、3月+0.3%、4月+1.3%、5月+0.5%。
・電子部品・デバイスは前月比で、2月+4.8%、3月+2.5%、4月▲5.7%、5月+3.4%。
・輸送機械は前月比で、2月+10.3%、3月+0.8%、4月+3.9%、5月▲5.9%。
外需
○ 輸出は持ち直し、輸入は持ち直しの動きが見られる。
○ 貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1カ月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、2月▲1.3、3月+0.3、4月+0.1、5月▲1.9、6月+1.0。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1カ月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月▲1.0、3月▲1.8、4月+0.5、5月▲0.9、6月+0.8。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は持ち直しの動きが続いている。
・実質GDP成長率は、2018年4-6月期6.7%。
・製造業新規輸出受注は、先月から低下している。
・輸入は高い伸びとなっており、輸出も堅調に推移している。
・乗用車販売台数は、伸びがこのところ持ち直した。
・消費は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・生産は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は、伸びが低下している。
・消費者物価上昇率は、おおむね横ばいとなっている。
〇 韓国・台湾では、景気は緩やかに回復している。
○ タイ・インドネシアでは、景気は持ち直している。
〇 インドでは、景気は内需を中心に回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。
・2018年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+2.0%。
〇 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・6月の失業率は、4.0%となった。
〇 コア物価上昇率は、緩やかに上昇している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 製造業の景況指数は堅調に推移している。
○ 生産は、緩やかに増加している。
○ 財輸出は、緩やかに増加している。
○ 設備投資は、緩やかに増加している。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに回復している。
ドイツでは、景気は緩やかに回復している。
イギリスは、景気回復は緩やかになっている。
・2018年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+1.5%(イギリスは+0.9%)。
・EUの離脱に伴い、イギリスの消費者マインドは低迷し、設備投資が伸び悩んでいる一方、
ユーロ圏の企業の景況感は4-6月期は、回復傾向にある。
〇 個人消費は、ユーロ圏では増加した。
イギリスは、このところ、増加のテンポが緩やかになっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスはこのところ低下している。
・消費者物価指数(コア)は前年比で、ユーロ圏1.2%(6月)、イギリス2.2%(6月)。
○ 輸出は、ユーロ圏では持ち直しているが、このところ一服感がある。
イギリスではこのところおおむね横ばいとなった。
○ 設備投資は、ユーロ圏は緩やかに増加、イギリスでは横ばいとなった。
○ 失業率は、ユーロ圏では低下傾向にあるが、イギリスではおおむね横ばいとなった。