月例経済報告(H30.10.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策 の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、相次いでいる自然災害の経済に与える影響等に留意する必要がある。 |
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。ただし、自然災害の影響に注意する必要がある。
・ 消費総合指数は、前月比で、5月▲0.3%、6月+0.5%、7月▲0.6%、8月±0%。
・ 自動車販売額が持ち直しに寄与したものの、旅行取引額の弱含みをみると自然災害の
影響が見られる。
・ 2018年の夏のボーナスは、前年比で大きく増加した。
・ 消費者態度指数(DI)は前月差で、5月+0.2%、6月▲0.1%、7月▲0.2%、8月▲0.2%、9月+0.1%。
・ 8月の実質総雇用者所得は、前期比で▲1.2%。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなった。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月+2.5%、6月+0.7%、7月▲1.2%、8月▲1.4%。
・持家着工数は前月比で、5月+2.7%、6月▲6.9%、7月+3.8%、8月▲2.1%。
・貸家着工数は前月比で、5月▲3.4%、6月▲1.1%、7月+2.0%、8月+0.9%。
・分譲着工数は前月比で、5月+2.4%、6月▲20.0%、7月+14.4%、8月▲3.5%
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前年同月比で、5月▲5.9%(出来高▲0.3%)、6月▲7.1%(出来高▲0.6%)、
7月▲2.4%(出来高▲0.5%)、8月+1.3%(出来高▲1.2%)、9月+1.6%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢が着実に改善する一方、人手不足感が高い水準となっている。
・有効求人倍率は、4月1.59、5月1.6、6月1.62、7月1.63、8月1.63
(正社員は1.13)となった。
・完全失業率は、4月2.5%、5月2.2%、6月2.4%、7月2.5%、8月2.4%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。(9月総合前月比▲0.1%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、9月総合前年比+1.0%。
投資・収益・業況
○ 企業の景況感は、引き続き良好な企業が上回っているが、夏以降、自然災害の影響や
海外経済の不確実性が足下の景況感を押し下げていることに留意が必要である。
○ 製造業では、非鉄金属や生産用機械の景況感が低下しており、海外経済の不確実性の
高まり等が影響したとみられる。
○ 非製造業では、北海道、近畿、中国地方の宿泊・飲食サービス、運輸業等の景況感が
低下しており、自然災害が景況感を押し下げているとみられる。
○ 業況は、おおむね横ばいとなった。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2017年12月+26、2018年3月+24、6月+21、9月+19、12月+19。
「大企業・非製造業」は、2017年12月+25、2018年3月+23、6月+24、9月+22、12月+22。
「中小企業・製造業」は、2017年12月+15、2018年3月+15、6月+14、9月+14、12月+11。
「中小企業・非製造業」は、2017年12月+9、2018年3月+10、6月+8、9月+10、12月+5。
○ 企業収益は、改善している。
○ 設備投資は、緩やかに増加している。
生産
○ 生産は、緩やかに増加している。
・鉱工業生産指数は前月比で、7月▲0.2%、8月0.2%、9月(予測)+2.7%、10月(予測)+1.7%
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、5月+0.5%、6月▲3.9%、7月▲2.1%、8月+5.4%。
・電子部品・デバイスは前月比で、5月+3.4%、6月+2.7%、7月+1.8%、▲9.0%。
・輸送機械は前月比で、5月▲5.9%、6月+0.6%、7月▲4.2%、8月+4.6%。
外需
○ 輸出はおおむね横ばいとなった。
○ 輸入はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 貿易・サービス収支の黒字は、減少傾向にある。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1カ月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、5月▲1.9、6月+1.0、7月▲1.5、8月+2.1、9月▲0.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1カ月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、5月▲0.9、6月+0.8、7月▲1.0、8月+2.4、9月▲0.1。
◎ 景気ウォッチャー調査(9月)における自然災害の影響
・地域別現状判断DI(良い-悪い)では、北海道で36.1(前月差▲11.6ポイント)、近畿では
48.8(同▲0.8ポイント)となるなど、特に北海道で大幅な低下がみられた。
アジア経済の動向
○ 中国では、政府の構造調整の取り組みの影響もあり、景気は持ち直しの動きに足踏みが
みられ、7-9月期の実質GDP成長率は6.5%と、4-6月期から0.2%低下した。
○ 中国政府は、投資主導から消費主導の経済への転換をすすめており、固定資産投資の
伸びは、本年に入り低下している。
○ 米中間の通商問題への懸念と共に、本年半ばより、人民元安が進んでいる。
これまでのところ、外貨準備の減少や貿易量の増減は、比較的小幅にとどまっているが、
今後の動向には留意が必要である。
・輸出は増加している。
・乗用車販売台数は、伸びが低下した。
・消費は伸びがやや低下している。
・生産は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・固定資産投資は、伸びが低下している。
・消費者物価上昇率は、おおむね横ばいとなっている。
〇 韓国・台湾・インドネシア・タイでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気は回復している。
・実質GDP成長率は、4-6月期で+8.2%となった。
・2014年9月から打ち出している製造業の活性化による成長・雇用創出を目指し、
規制緩和、インフラ整備、直接投資誘致などを推進したことが鉱工業生産の上昇に寄与した。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、今後の金融政策や貿易動向に注意が必要である。
・2018年4-6月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+4.2%。
・FOMC(連邦公開市場委員会)では、9月に0.25%の利上げを決定した。
〇 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・9月の失業率は、3.7%となった。
〇 コア物価上昇率は、安定している。
○ 消費は増加、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 製造業の景況指数は堅調に推移している。
○ 生産は、緩やかに増加している。
○ 財輸出は、このところ弱い動きとなっている。
・18年8月は、主要国・地域の全てで減少した。
○ 設備投資は、緩やかに増加している。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに回復している。
ドイツでは、景気は緩やかに回復している。
イギリスは、景気回復は緩やかになっている。
・2018年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+1.8%(イギリスは+1.6%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏では増加した。
イギリスは、緩やかながら増加した。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスはこのところ安定している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.1%(9月)、イギリス2.0%(9月)。
○ 輸出は、ユーロ圏ではこのところおおむね横ばい、イギリスでもおおむね横ばいとなった。
○ 設備投資は、ユーロ圏は緩やかに増加、イギリスではこのところ弱含みとなった。
○ 失業率は、ユーロ圏では低下傾向にあるが、イギリスではおおむね横ばいとなった。