月例経済報告(H31.1.29) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策 の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 通商問題の動向 が世界経済に与える影響や、中国経済の先行きなど、 海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要が ある。 |
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・共働き世帯は増加傾向にあり、教育費や中食・外食等の消費が増加した。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、8月+0.0%、9月+0.0%、10月+0.9%、11月▲0.4%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、8月▲0.2%、9月+0.1%、10月▲0.4%、11月▲0.1%、
12月▲0.2%。
・11月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.6%。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、8月▲1.4%、9月▲1.6%、10月+0.8、11月+0.8%。
・持家着工数は前月比で、8月▲2.1%、9月+1.6%、10月+4.5%、11月▲2.4%。
・貸家着工数は前月比で、8月+0.9%、9月▲4.6%、▲4.3%、11月+3.0%。
・分譲着工数は前月比で、8月▲3.5%、9月+0.8%、10月+2.3%、11月+4.2%
○ 公共投資は、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前年同月比で、8月+1.3%(出来高▲1.1%)、9月+1.6%(出来高+0.1%)、
10月+8.6%(出来高▲1.4%)、11月▲11.4%(出来高+0.4%)、12月+14.3%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は着実に改善する中、女性や高齢者の労働参加が進んでいる。
・有効求人倍率は、7月1.63、8月1.63、9月1.64、10月1.62、11月1.63
(正社員は1.13)となった。
・完全失業率は、7月2.5%、8月2.4%、9月2.3%、10月2.4%、11月2.5%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、個人サービスや外食による押し上げが見られるものの、このところ横ばいとなっている。
(12月総合前月比▲0.2%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、11月総合前年比+0.3%。
・外国パック旅行費や宿泊料等の個人サービス業、外食業が価格の伸びを後押しする一方、
耐久消費財や食料品の価格の伸びが鈍化している。
投資・収益・業況
○ 業況は、おおむね横ばいとなった。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年3月+24、6月+21、9月+19、12月+19、2019年3月+15。
「大企業・非製造業」は、2018年3月+23、6月+24、9月+22、12月+24、2019年3月+20。
「中小企業・製造業」は、2018年3月+15、6月+14、9月+14、12月+14、2019年3月+8。
「中小企業・非製造業」は、2018年3月+10、6月+8、9月+10、12月+11、2019年3月+5。
○ 企業収益は、改善している。
・ 2012月12月に始まった今回の景気回復期間は74カ月となり、2000年代の回復期と比べ、
デフレではない状況を実現する中、名目成長率が高くなるとともに、雇用環境が大幅に改善し、
人口減少の中でも就業者数がバブル期並みに増加した。また、企業収益は過去最高となっている。
○ 設備投資は、増加している。
生産
○ 生産は緩やかに増加している。
・鉱工業生産指数は前月比で、10月+2.9%、11月▲1.0%、12月(予測)+2.2%、1月▲0.8%(予測)
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、8月+5.4%、9月+0.8%、10月▲3.1%、11月+2.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、▲9.0%、9月▲1.2%、10月+8.7%、11月▲1.7%。
・輸送機械は前月比で、8月+4.6%、9月1.7%、10月+4.6%、11月▲0.2%。
外需
○ 輸出は、情報関連財を中心に、このところ弱含みとなっている。
・中国向け工作機械の受注減少が弱含みに寄与した。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支の赤字は、このところ増加している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、8月+2.1、9月▲0.1、10月+0.9、11月+1.5、12月▲3.0。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、8月+2.4、9月▲0.1、10月▲0.7、11月+1.6、12月▲3.7。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速している。
・10-12月期の実質GDP成長率は6.4%となった。
・債務削減に向けた取組の影響によるインフラ投資の伸びの低下があり、消費の伸びも昨年秋以降、
やや低下している。
各種政策対応がなされているものの、中国経済の景気下振れのリスクに留意が必要。
・米中間の通商問題を背景に、輸出入ともに、はこのところ伸びが低下している。
・乗用車販売台数は、伸びが低下した。
・固定資産投資は、伸びがおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率は、おおむね横ばいとなっている。
〇 韓国では、景気は緩やかに回復しているが、弱い動きもみられる。
○ タイでは、景気は緩やかに回復しているが、一部に弱い動きもみられる。
○ 台湾・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、今後の金融政策や貿易の動向に
注意が必要である。
・2018年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.4%。
〇 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・12月の失業率は、3.9%となった。
〇 コア物価上昇率は、安定している。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 製造業の景況指数このところ低下している。
○ 輸出はこのところ弱い動きとなっている。
【参考】アメリカ政府機関の一部閉鎖とその一時解除
●トランプ大統領は19年度予算(18年10月~19年9月)にメキシコとの国境の壁建設費用を
盛り込むよう主張。共和党と民主党との間で予算案の合意に至らなかったことから、政府機関
が一部閉鎖(18年12月22日~19年1月25日の35日間、過去最長)。
●19年1月25日、3週間(2月15日まで)のつなぎ予算が成立し、一部閉鎖は一時的に解除
されたものの、壁の建設をめぐってはいまだ両党で合意に至っておらず、引き続き動向に注視
が必要。
≪一部閉鎖期間中の影響≫
〇税関・国境警備局等の42万人以上の職員が給与未支払いの状態で勤務、商務省等の38万人
以上の職員が一時解雇。
○貿易統計等、経済統計の公表が延期。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに回復している。
ドイツでは、景気は緩やかに回復している。
イギリスは、景気回復は緩やかになっている。
・2018年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+0.6%
(イギリスは+2.5%、ドイツは▲0.8%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスではおおむね横ばいとなった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスはこのところ安定している。
・12月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.1%、イギリス1.9%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに、このところおおむね横ばいとなった。