月例経済報告(H31.2.21) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策 の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、 通商問題の動向 が世界経済に与える影響や、中国経済の先行き、 海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の 影響に留意する必要がある。 |
2018年10-12月期GDP一次速報
○ 2018年10-12月期の実質成長率は、前期比+0.3%(年率換算+1.4%)となり、自然災害による
押し下げがあった前期から再びプラスに転じた。
・個人消費と設備投資が増加し、民需に支えられた成長となっている。
ただし、情報関連財を中心とした中国向けの輸出の弱含みもあり、外需寄与度が三期連続
のマイナスとなった。
・2018年の名目GDPは、548.5兆円となり、暦年ベースで過去最高を更新した。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。足下では暖冬の影響がみられるが、先行きは旅行・家電などに
明るい声が聞かれる。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、9月+0.0%、10月+0.9%、11月▲0.4%、12月▲0.6%。
・新車販売台数が落ち込んだ一方、旅行取扱額が上昇した。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、9月+0.1%、10月▲0.4%、11月▲0.1%、12月▲0.2%、
2019年1月▲0.8%。
・12月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.2%。
◎景気ウォッチャーの主なコメント
北陸地域 通信会社(やや良)……4K放送がスタートし、客からの反響が好調である。放送、
通信共に契約数が前年同期比プラスになっている。
南関東地域 百貨店(やや良)……改元前後に当たり、平成最後、新元号最初の記念として
のモノコト消費が活性化すると予想している。
近畿地域 旅行代理店(やや良)……皇太子殿下の御即位に伴うゴールデンウィークの10連休
が、そろそろ身近な話となる。駆け込み需要も含めて、この
機会しか10連休はないといった雰囲気が出てくる。
中国地域 家電量販店(やや悪)…… 来客数が前年の9割程度で、暖冬のため暖房器 具の売上
は伸びず、景気は良くない。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、9月▲1.6%、10月+0.8、11月+0.8%、12月+0.6%。
・持家着工数は前月比で、9月+1.6%、10月+4.5%、11月▲2.4%、12月+1.3%。
・貸家着工数は前月比で、9月▲4.6%、▲4.3%、11月+3.0%、12月▲2.4%。
・分譲着工数は前月比で、9月+0.8%、10月+2.3%、11月+4.2%、12月+3.5%
○ 公共投資は、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前年同月比で、9月+1.6%(出来高+0.1%)、10月+4.0%(出来高▲1.6%)、
11月▲3.9%(出来高▲0.3%)、12月+4.9%(出来高▲0.7)、2019年1月▲11.8%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用は着実に改善しており、就業者数は大幅に増加した。
一方、人手不足感が高い水準となっている。
・この6年間、生産年齢人口が503万人減少する中で、就業者は384万人増加。
内、女性は289万人増加し、65歳以上の男女は255万人増加している。
・65歳以上で増加した雇用者は非正規雇用が多いが、64歳以下の雇用者では
この6年間、正規雇用の増加により、正規・非正規が同程度の増加になった。
・特に、「正規の仕事がない」という理由で非正規雇用についた人の割合は、19.2%から
12.8%まで大きく低下している。
・産業別にみると、医療・福祉や宿泊・飲食サービス業のほか、資格や専門知識・技術が
必要なサービス業や情報通信業での就業が増加している。
・有効求人倍率は、8月1.63、9月1.64、10月1.62、11月1.63、12月1.63
(正社員は1.15)となった。
・完全失業率は、8月2.4%、9月2.3%、10月2.4%、11月2.5%、12月2.4%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ横ばいとなっている。(12月総合前月比▲0.2%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、12月総合前年比+0.3%。
投資・収益・業況
○ 業況は、おおむね横ばいとなった。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年3月+24、6月+21、9月+19、12月+19、2019年3月+15。
「大企業・非製造業」は、2018年3月+23、6月+24、9月+22、12月+24、2019年3月+20。
「中小企業・製造業」は、2018年3月+15、6月+14、9月+14、12月+14、2019年3月+8。
「中小企業・非製造業」は、2018年3月+10、6月+8、9月+10、12月+11、2019年3月+5。
○ 企業収益は、高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。
○ 設備投資は、技術革新や省力化への対応もあり、増加している。
生産
○ 生産は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに増加している。
ただし、電子部品・デバイスや生産用機械等で、海外向け出荷・受注が減速している。
・鉱工業生産指数は前月比で、11月▲1.0%、12月▲0.1%、1月▲0.1%(予測)、2月+2.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、9月+0.8%、10月▲3.1%、11月+2.8%、12月▲3.5%。
・電子部品・デバイスは前月比で、9月▲1.2%、10月+8.7%、11月▲1.7%、12月▲2.6%。
・輸送機械は前月比で、9月1.7%、10月+4.6%、11月▲0.2%、12月+0.6%。
外需
○ 輸出は、このところ弱含みとなっている。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支の赤字は、このところ減少している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、9月▲0.1、10月+0.9、11月+1.5、12月▲2.7、1月▲1.2。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、9月▲0.1、10月▲0.7、11月+1.6、12月▲2.9、1月+1.5。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速しており、韓国・台湾・タイにその波及がみられる。
・10-12月期の実質GDP成長率は6.4%となった。
・乗用車販売台数は、伸びが低下した。
・輸出は、このところ伸びが低下した。
・固定資産投資は、伸びがおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率は、おおむね横ばいとなっている。
〇 韓国では、景気は緩やかに回復しているが、弱い動きもみられる。
・1月の中国向け輸出は前年比で▲22.5%
○ 台湾では、景気はこのところ弱めの回復となっている。
・1月の中国向け輸出は、前年比で▲7.5%。
○ タイでは、景気は緩やかに回復しているが、一部に弱い動きもみられる。
・12月の中国向け輸出は、前年比で▲6.5%。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、今後の金融政策や貿易の動向に
注意が必要である。
・2018年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.4%。
〇 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・1月の失業率は、政府機関の一部閉鎖の影響もあり、4.0%となった。
〇 コア物価上昇率は、安定している。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 製造業の景況指数このところ低下している。
○ 輸出はこのところ弱い動きとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。
ドイツでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2018年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+0.8%
(イギリスは+0.7%、ドイツは+0.1%)。
・イギリスの民間設備投資は、4四半期連続でマイナスとなった。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスではおおむね横ばいとなった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・1月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.1%、イギリス1.9%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに、このところおおむね横ばいとなった。
◎イギリスのEU離脱の経緯と今後の予定
2018年
11月14日 英国政府が離脱協定案及び将来関係に関する政治宣言骨子案を承認
11月25日 EU27か国が離脱協定及び将来に関する政治宣言を承認
12月10日 メイ首相、英国議会における離脱協定の採決延期を決定
2019年
1月15日 英国議会下院でEU離脱協定を否決
21日 メイ首相、離脱協定の代替案を提示
29日 英国議会下院で、メイ首相代替案及び議員修正案2本を可決
2月12日 メイ首相、2月26日までに代替案についてEUの合意が得られない場合、翌27日に
英国議会下院で議論したい旨を表明
3月29日 現行の英国EU離脱期日
3月30日以降 (離脱協定批准した場合に限り)移行期間開始
2020年
12月31日 移行期間終了