月例経済報告(H31.3.20) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やか に回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、一部に弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続く ことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。 |
中国経済減速等の影響
○ 中国経済の減速等の影響を受け、輸出の伸びが鈍化し、企業の生産活動の一部に弱さが
みられる。
・情報関連財を中心に中国向けの輸出が弱含んでいる。
・こうした輸出の鈍化を背景に、企業の生産も一部に弱さがみられ、製造業全体としておおむね
横ばいとなっている。
・ただし、輸出はGDPの18%(輸入を差し引いた純輸出ではほぼゼロ%)であり、日本経済全体
としては内需を中心に緩やかな回復が続いている。
○ 内需の柱である個人消費と設備投資は増加傾向にあり、日本経済全体は緩やかな回復が
続いている。
・GDPの7割を占める個人消費と設備投資(個人消費56%、設備投資16%)は増加が続き、内需
は堅調を保っている。
・雇用・所得環境の改善、高水準にある企業収益といったファンダメンタルズがしっかりしていることが
この背景にある。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。冷蔵庫やテレビ等家電販売が好調なほか、外食も緩やかに増加
し、上昇に寄与した。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、10月+0.9%、11月▲0.3%、12月▲1.2%、1月+0.3%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月▲0.4%、11月▲0.1%、12月▲0.2%、1月▲0.8%、2月▲0.4%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となり、緩やかに増加している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月+0.8、11月+0.8%、12月+0.6%、1月▲2.7%。
・持家着工数は前月比で、10月+4.5%、11月▲2.4%、12月+1.3%、1月+0.3%。
・貸家着工数は前月比で、10月▲4.3%、11月+3.0%、12月▲2.4%、1月▲3.5%。
・分譲着工数は前月比で、10月+2.3%、11月+4.2%、12月+3.5%、1月▲2.4%
○ 公共投資は、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前年同月比で、10月+4.0%(出来高▲1.6%)、11月▲3.9%(出来高+0.5%)、
12月+4.9%(出来高▲0.5%)、1月▲11.8%(出来高1.6%)、2月+26.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用は着実に改善した。一方、人手不足感が高い水準となっている。
・有効求人倍率は、9月1.64、10月1.62、11月1.63、12月1.63、1月1.63
(正社員は1.14)となった。
・完全失業率は、9月2.3%、10月2.4%、11月2.5%、12月2.4%、1月2.5%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ横ばいとなっている。(1月総合前月比+0.4%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、12月総合前年比+0.2%。
投資・収益・業況
○ 業況は、おおむね横ばいとなった。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年3月+24、6月+21、9月+19、12月+19、2019年3月+15。
「大企業・非製造業」は、2018年3月+23、6月+24、9月+22、12月+24、2019年3月+20。
「中小企業・製造業」は、2018年3月+15、6月+14、9月+14、12月+14、2019年3月+8。
「中小企業・非製造業」は、2018年3月+10、6月+8、9月+10、12月+11、2019年3月+5。
○ 企業収益は、改善に足踏みがみられるが、高い水準にある。
○ 設備投資は、増加している。設備投資計画は前年度を上回っている。
また、企業の投資意欲が高まっており、構築物投資も緩やかな増加が見込まれる。
生産
○ 生産は、一部に弱さがみられ、おおむね横ばいとなっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月▲0.1%、1月▲3.4%、2月(予測)+5.0%、3月(予測)▲1.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、10月▲3.1%、11月+2.8%、12月▲3.5%、1月▲9.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月+8.7%、11月▲1.7%、12月▲2.6%、1月▲7.8%。
・輸送機械は前月比で、9月1.7%、10月+4.6%、11月▲0.2%、12月+0.6%、1月▲6.4%。
外需
○ 輸出は、このところアジア向けを中心に弱含みとなっている。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支の赤字は、このところ減少している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、10月+0.9、11月+1.5、12月▲2.7、1月▲1.2、2月+1.9。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、10月▲0.7、11月+1.6、12月▲2.9、1月+1.5、2月▲0.5。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速する中、大規模な景気刺激策を実施している。
・10-12月期の実質GDP成長率は6.4%となった。
・乗用車販売台数は、減少した。
・生産は、このところ伸びがやや低下している。
・輸出は、減少した。
・固定資産投資は、伸びがおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率は、このところやや低下した。
◎ 2019年の主な政策対応
<財政政策>
・企業負担の軽減:年2兆元弱
(中小企業減税(1月~3年間)、増値税減税(4月~)、社会保険料負担軽減(5月~))
・個人所得税減税:年約3,200億元(1月~)
・地方特別債発行枠拡大:19年2.15兆元(※18年は1.35兆元)
<金融政策>
・預金準備率の引下げ(1月)
・中小銀行を対象とした更なる預金準備率の引下げ
・国有大型商業銀行の中小企業向け融資30%以上の増額
〇 韓国では、景気は緩やかに回復しているが、弱い動きもみられる。
○ 台湾では、景気はこのところ弱めの回復となっている。
○ タイでは、景気は緩やかに回復しているが、一部に弱い動きもみられる。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気回復はやや緩やかになっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。
・2018年10-12月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.6%。
〇 良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費は引き続き堅調となっている。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・2月の失業率は、3.8%となった。
〇 コア物価上昇率は、安定している。
○ 生産はこのところおおむね横ばいとなっている。
○ 製造業の景況指数このところ低下している。
○ 輸出はこのところ弱い動きとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。
ドイツでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2018年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+0.9%
(イギリスは+0.7%、ドイツは+0.1%、イタリア▲0.4%)。
・イギリスの民間設備投資は、弱い動きとなっている一方、EU離脱に備え、在庫を積み増ししている。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスではおおむね横ばいとなった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・2月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.2%、イギリス1.9%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに、このところおおむね横ばいとなった。
◎イギリスのEU離脱の今年3月の経緯と今後の予定
2019年3月
11日 メイ首相がEU側と離脱協定の修正に関し合意
12日 英国議会下院で修正後のEU離脱協定を否決
13日 〃 合意なきEU離脱を否決
14日 〃 離脱延期を可決
21日 EU首脳会議
29日 現行の英国EU離脱期日
30日以降 (離脱協定批准した場合に限り)移行期間開始
2020年
12月31日 移行期間終了