月例経済報告(H31.4.18) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やか に回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、一部に弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続く ことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。 |
平成経済30年の変遷(国内)
○ 平成の30年間、名目GDPは420兆円から550兆円に130兆円拡大した。
バブル景気の後、1990年代終わりからデフレに入り、リーマンショック、東日本大震災による
大きな落ち込みを経験したが、平成最後の6年間、再び拡大基調に戻った。同様に、株価・
地価についても、バブル崩壊やデフレによる下落、低迷が長く続いた後、近年、上昇に転じて
いる。
・人口構造も大きく変化し、生産年齢人口は1995年(平成7年)をピークに減少に転じた。
その一方で、女性や高齢者の労働参加が拡大し、特に最近は雇用環境の改善もあって
就業者数は大きく増加している。失業率は平成初めのバブル景気並みの低水準、有効
求人倍率はバブル期を超えて45年ぶりの高さとなっている。
平成経済30年の変遷(対外)
○ 平成の30年間、日本経済のグローバル化は大幅に進展した。
・貿易額は67兆円から164兆円へ2.5倍、海外直接投資は6倍となった。
・特に、インバウンド(訪日外国人数)は30年間で10倍、3,000万人を超えた。
○ 海外との取引内容も変化した。経常収支は平成の30年一貫して黒字だが、その内訳は大きく
変わり、貿易黒字が大幅に減少する一方、海外からの投資収益など所得収支の黒字が着実に
増加している。
個人消費の動向
○ 個人消費は、トレンドとして持ち直している。
景気ウォッチャーをみると消費者の節約志向の高まりを指摘する声がある一方、ゴールデン
ウイークは例年以上に旅行需要の盛り上がりが期待される。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、11月▲0.3%、12月▲1.2%、1月+0.8%、2月▲0.3%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、11月▲0.1%、12月▲0.2%、1月▲0.8%、2月▲0.3%、3月▲1.0%。
・2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となり、緩やかに増加している。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月+0.8%、12月+0.6%、1月▲2.7%、2月+0.4%。
・持家着工数は前月比で、11月▲2.4%、12月+1.3%、1月+0.3%、2月1.6%。
・貸家着工数は前月比で、11月+3.0%、12月▲2.4%、1月▲3.5%、2月+0.1%。
・分譲着工数は前月比で、11月+4.2%、12月+3.5%、1月▲2.4%、2月▲2.7%
○ 公共投資は、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前月比で、11月▲3.9%(出来高+0.5%)、12月+4.9%(出来高▲0.5%)、
1月▲11.8%(出来高1.6%)、2月+26.0%、3月▲7.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用は着実に改善した。一方、人手不足感が高い水準となっている。
・有効求人倍率は、10月1.62、11月1.63、12月1.63、1月1.63、2月1.63
(正社員は1.15)となった。
・完全失業率は、10月2.4%、11月2.5%、12月2.4%、1月2.5%、2月2.3%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。(2月総合前月比+0.1%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、2月総合前年比+0.2%。
投資・収益・業況
○ 企業の景況感について、「良い」と答えた企業数が「悪い」と答えた企業数を上回っている
状態は続いているものの、その割合は製造業を中心に、前回12月調査よりも低下した。
○ 生産用機械や電気機械など中国経済の減速の影響を受けやすい業種で景況感が低下して
いる一方、非製造業の景況感は、堅調な内需を背景に高い水準が続いている。
○ 業況は、製造業を中心に、慎重さがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年、6月+21、9月+19、12月+19、2019年3月+12、6月+8。
「大企業・非製造業」は、2018年6月+24、9月+22、12月+24、2019年3月+21、6月+20。
「中小企業・製造業」は、2018年6月+14、9月+14、12月+14、2019年3月+6、6月▲2。
「中小企業・非製造業」は、2018年6月+8、9月+10、12月+11、2019年3月+12、6月+5。
○ 企業収益は、高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。
○ 設備投資は、増加している。
・機械投資は中国経済の減速等により弱い動きだが、2019年度計画はプラスであり、ソフトウェア・
研究開発投資も増加が見込まれている。
生産
○ 生産は、一部に弱さがみられ、おおむね横ばいとなっている。
・鉱工業生産指数は前月比で、1月▲3.4%、2月+1.4%、3月(予測)+0.3%、4月(予測)+1.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11月+2.8%、12月▲3.5%、1月▲9.6%、2月+5.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、11月▲1.7%、12月▲2.6%、1月▲7.8%、2月▲3.7%。
・輸送機械は前月比で、11月▲0.2%、12月+0.6%、1月▲6.4%、2月+5.5%。
外需
○ 輸出は、弱含みとなっている。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、11月+1.5、12月▲2.7、1月▲1.2、2月+1.9、3月▲2.7。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、11月+1.6、12月▲2.9、1月+1.5、2月▲0.5、3月▲0.3。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速している。
・2019年1-3月期の実質GDP成長率は6.4%となった。
・乗用車販売台数は、減少した。
・生産は、このところ伸びがやや低下している。
・輸出は、減少した。
・固定資産投資は、伸びがおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率は、このところやや低下した。
〇 韓国では、景気は緩やかに回復しているが、弱い動きもみられる。
○ 台湾では、景気はこのところ弱めの回復となっている。
○ タイでは、景気は緩やかに回復しているが、一部に弱い動きもみられる。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気回復はやや緩やかになっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、今後の金融政策や貿易の動向に注意が
必要である。
・2018年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.2%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・3月の失業率は、3.8%となった。
〇 コア物価上昇率は、安定している。
○ 生産はこのところおおむね横ばいとなっている。
○ 製造業の景況指数このところおおむね横ばいとなっている。
○ 輸出はこのところ弱い動きとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。
ドイツでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2018年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+0.9%
(イギリスは+0.9%、ドイツは+0.1%、イタリア▲0.4%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資は緩やかに増加し、イギリスでは弱い動き
となっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスではおおむね横ばいとなった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・3月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.0%、イギリス1.9%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに、このところおおむね横ばいとなった。
◎イギリスのEU離脱の今年3、4月の経緯と今後の予定
2019年3月
21日 EU首脳会議
・EU27か国が(英国議会下院が離脱 協定を可決しない場合)4月12日までの離脱期限延期
に合意
29日 英国議会下院で離脱協定を再々否決
2019年4月
5日 メイ首相、EUに対し離脱期限を6月30日まで延期することを要請
10日 特別欧州理事会(特別EU首脳会議)でEU27か国が10月31日までの離脱期限延期に
合意
※ 5月22日までに英国が離脱協定の批准を終えず、かつ欧州議会選挙を実施しなかった場合、5月31日に離脱期限延期が失効
※ 10月31日に英国のEU離脱期限を迎える
2020年
12月31日 移行期間終了