月例経済報告(R1.5.24) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが 期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響に一層 注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。 |
平成2019年1-3月期GDP(一次速報)
○ 2019年1-3月期の実質成長率は、前期比プラス0.5%、年率に換算するとプラス2.1%と2期
連続のプラスとなった。
・公共投資が5期ぶりにプラスとなる一方で、中国経済の減速等を背景に、輸出が2期ぶりのマイナス。
設備投資についても、製造業を中心に先送りの動きがみられることなどから、今期は小幅なマイナス。
個人消費については、今期はおおむね横ばいとなった。
○ 2018年度の名目GDPは550兆円となり、年度ベースでも過去最高を更新した。
☆ GDPの需要面の特徴
・輸出(GDP構成比18%)は、中国経済の減速等の影響により弱含んでいる。
これを受けて、設備投資(GDP構成比16%)は、このところ機械投資に弱さもみられるが、
全体としては、緩やかな増加傾向にある。
・ GDPの6割近くを占める個人消費は持ち直している。
直近の消費動向をみると、4月の新車販売やゴールデンウィークの旅行者数が大きく増加している。
☆ GDPの供給面の特徴
・ 2割を占める製造業では、輸出の鈍化を背景に、生産がこのところ弱含んでいる。
・ GDPの8割を占める非製造業の活動は持ち直している。特に、情報通信業や運輸・ 郵便業、
職業紹介・労働者派遣業などの活動が堅調に推移している。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、12月▲1.2%、1月+1.0%、2月▲0.2%、3月±0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、12月▲0.2%、1月▲0.8%、2月▲0.3%、3月▲1.0%
4月▲0.1%。
・3月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となり、緩やかに増加している。
◎ゴールデンウィークの消費動向
近畿地区旅行代理店(良)……ゴールデンウィークが長期にわたることで、旅行時期の分散化
が進み、間際需要が増えてきている。
北海道地区スーパー(やや良)……新元号に関連した商戦、ゴールデンウィークの10連休など、
消費が活発になるきっかけがあったことから、景気はやや良く
なっている。
東海地区百貨店(不変)……大型連休を前に旅行関連消費は盛り上がっているが、旅行以外の
消費については消費を抑えようとする姿勢が感じられる。
四国地区家電量販店(不変)……客単価は良いが、ゴールデンウィークはレジャーに出掛ける人
が多く、来客数は減少傾向にある。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月+0.6%、1月▲2.7%、2月+0.4%、3月+1.0%。
・持家着工数は前月比で、12月+1.3%、1月+0.3%、2月1.6%、3月+1.0%。
・貸家着工数は前月比で、12月▲2.4%、1月▲3.5%、2月+0.1%、3月+0.6%。
・分譲着工数は前月比で、12月+3.5%、1月▲2.4%、2月▲2.7%、3月+3.9%
○ 公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。
・請負金額は前月比で、12月+4.9%(出来高▲0.5%)、1月▲11.8%(出来高1.3%)、
2月+26.0%(出来高+0.3%)、3月▲7.7%(出来高▲0.9%)、4月▲1.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は着実に改善しており、女性、若年、高齢者を中心に就業率も上昇している。
・有効求人倍率は、11月1.63、12月1.63、1月1.63、2月1.63、3月1.63
(正社員は1.16)となった。
・完全失業率は、11月2.5%、12月2.4%、1月2.5%、2月2.3%、3月2.5%となった。
・賃上げの流れが継続している。製造業に加え、人手不足等もあり、小売業、運輸業等でも
伸びが高まっている
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。(4月総合前月比+0.1%)。
・生鮮食品や外食を除く価格が足下で上昇に寄与した。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、4月総合前年比+0.9%。
・原油価格・人件費の上昇等により、企業間の取引価格が上昇した。
投資・収益・業況
○ 業況は、製造業を中心に、慎重さがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年、6月+21、9月+19、12月+19、2019年3月+12、6月+8。
「大企業・非製造業」は、2018年6月+24、9月+22、12月+24、2019年3月+21、6月+20。
「中小企業・製造業」は、2018年6月+14、9月+14、12月+14、2019年3月+6、6月▲2。
「中小企業・非製造業」は、2018年6月+8、9月+10、12月+11、2019年3月+12、6月+5。
○ 企業収益は、製造業を中心に足踏みがみられるものの、水準は高い。
○ このところ機械投資に弱さもみられるが、緩やかな増加傾向となっている。
生産
○ 生産はこのところ弱含んでいる。
・鉱工業生産指数は前月比で、2月+0.7%、3月▲0.6%、4月(予測)+2.7%、5月(予測)+3.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12月▲3.5%、1月▲9.6%、2月+5.6%、3月▲6.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、12月▲2.6%、1月▲7.8%、2月▲3.7%、3月+5.8%。
・輸送機械は前月比で、12月+0.6%、1月▲6.4%、2月+5.5%、3月▲2.5%。
外需
○ 輸出は、弱含みとなっている。
・米中間の追加関税・対抗措置が導入されており、対象となる財の貿易への下押しや、
サプライチェーンを通じた部品等の輸出への影響に留意する必要がある。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲1.2、2月+1.9、3月▲2.7、4月+0.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月+1.5、2月▲0.5、3月▲0.3、4月▲0.2。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速しており、今後の通商問題の動向に注意が必要である。
・2019年1-3月期の実質GDP成長率は6.4%となった。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、今後の金融政策や貿易の動向に注意が
必要である。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。
ドイツでは、景気は一部に弱さがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2019年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+1.6%
(イギリスは+2.0%、ドイツは+1.7%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資は緩やかに増加し、イギリスでは弱い動き
となっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスではEU離脱を控えた駆け込み需要
もあり、このところ緩やかな増加となった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・4月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.4%、イギリス1.8%。
○ 輸出は、ユーロ圏は、このところおおむね横ばいとなった。
イギリスは、EU離脱を控えた駆け込み需要もあり、このところ緩やかな増加となった。