月例経済報告(R1.6.18) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが 期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響に一層 注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。 |
世界経済の動向;メインシナリオは本年後半から成長が再び加速
○ IMFの予測では、世界経済の成長率は鈍化しているものの、本年後半には回復し、
2020年には3.6%成長になる見込みである。
・インド等新興国の成長がけん引役になると予想されている。
○ 但し、米中摩擦が更に悪化し、仮に米中ほぼ全ての貿易財に25%の関税が課された場合、
世界のGDPは追加的に0.3%押し下げられると警告しており、米中摩擦の動向には一層の
注意が必要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、雇用・所得環境の改善を背景に、持ち直している。
・新車販売や家電販売が堅調に増加しているほか、eコマースも進展しており、国内のみならず、
中国などからの需要もみられる。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、1月+1.0%、2月▲0.2%、3月+0.1%、4月+1.7%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、2月▲0.3%、3月▲1.0%、4月▲0.1%、
5月▲0.1%。
・4月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.0%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月▲2.7%、2月+0.4%、3月+1.0%、4月+2.1%。
・持家着工数は前月比で、1月+0.3%、2月1.6%、3月+1.0%、4月+1.8%。
・貸家着工数は前月比で、1月▲3.5%、2月+0.1%、3月+0.6%、4月+0.2%。
・分譲着工数は前月比で、1月▲2.4%、2月▲2.7%、3月+3.9%、4月+0.4%
○ 公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。
・請負金額は前月比で、12月+4.9%(出来高▲0.5%)、1月▲11.8%(出来高+0.4%)、
2月+26.0%(出来高+0.3%)、3月▲7.7%(出来高▲0.9%)、4月▲1.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は着実に改善している一方、人手不足感が高い水準となっている。
・有効求人倍率は、12月1.63、1月1.63、2月1.63、3月1.63、4月1.63
(正社員は1.16)となった。
・完全失業率は、12月2.4%、1月2.5%、2月2.3%、3月2.5%、4月2.4%なった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。(4月総合前月比+0.1%)。
・生鮮食品や外食を除く価格が足下で上昇に寄与した。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、4月総合前年比+0.9%。
・原油価格・人件費の上昇等により、企業間の取引価格が上昇した。
投資・収益・業況
○ 中国経済の減速からその動向が注目されている設備投資は、非製造業を中心に増加傾向
が続いている。
・製造業については、機械投資には弱い動きがみられるものの、第4次産業革命への対応から
ソフトウェア投資は昨年来高い伸びを続けている。
・設備投資の原資となる企業収益についても、非製造業を中心に底堅く、高い水準が続いて
いる。
ただし、電気機械産業など中国経済の減速の影響を受けやすい業種では足もと減益となって
いる点には留意が必要である。
・ 堅調な建設投資を背景に建設業は増益が続いている。
○ 業況は、製造業を中心に、慎重さがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年、6月+21、9月+19、12月+19、2019年3月+12、6月+8。
「大企業・非製造業」は、2018年6月+24、9月+22、12月+24、2019年3月+21、6月+20。
「中小企業・製造業」は、2018年6月+14、9月+14、12月+14、2019年3月+6、6月▲2。
「中小企業・非製造業」は、2018年6月+8、9月+10、12月+11、2019年3月+12、6月+5。
○ 企業収益は、高い水準で底堅く推移している。
生産
○ 生産は、このところ弱含んでいる。
ただし、製造業の収益は、海外投資の増加による配当金収入が下支えとなった。
○ 設備投資は、電気機械など一部に弱さがみられるが、非製造業は堅調である。
・鉱工業生産指数は前月比で、3月▲0.6%、4月+0.6%、5月(予測)+5.6%、6月(予測)▲4.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月▲9.6%、2月+5.6%、3月▲6.2%、4月+5.3%。
・電子部品・デバイスは前月比で、1月▲7.8%、2月▲3.7%、3月+5.8%、4月▲7.7%。
・輸送機械は前月比で、1月▲6.4%、2月+5.5%、3月▲2.5%、4月+4.2%。
外需
○ 輸出は、情報関連財などを中心に、弱含んでいる。
・半導体の世界出荷額も弱めの見通しとなっている一方、サービス収支は、インバウンド需要
や知財使用料に支えられて赤字幅が縮小した。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、2月+1.9、3月▲2.7、4月+0.5%、5月▲1.2%。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、2月▲0.5、3月▲0.3、4月▲0.2%、5月▲2.8%。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速している。
・2019年1-3月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.4%となった。
・生産は、伸びがやや低下している。
・輸出は、減少した。
・消費は、伸びがやや低下している。
・消費者物価上昇率は、このところおおむね横ばいとなっている。
〇 韓国では、景気はこのところ弱い動きとなっている。
・2019年1-3月期の実質GDP成長率(前年比)は▲1.4%となった。
○ 台湾では、景気は弱めの回復となっている。
○ タイでは、景気は緩やかに回復しているが、一部に弱い動きもみられる。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気回復は緩やかになっている。
・2019年1-3月期の実質GDP成長率(前年比)は+5.8%となった。
◎財政金融政策
・5月に第2次モディ政権が発足
・2019年度財政赤字(2月暫定予算)は前年度計画時から拡大見込み
(対GDP比3.1%→3.4%)
・選挙では、2022年までに農民所得倍増、5年間100兆ルピー(2018年度対GDP比
50%超)のインフラ投資等を公約
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。製造業で通商問題の影響がみられる。
・2019年1-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+3.1%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・5月の失業率は、3.6%となった。
〇 コア物価上昇率は、このところやや低下した。
○ 生産はこのところ弱い動きとなっている。
○ 製造業の景況指数このところ低下した。
○ 輸出はこのところ弱含みとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。
ドイツでは、景気は一部に弱さがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2019年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+1.6%
(イギリスは+2.0%、ドイツは+1.7%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資は緩やかに増加し、イギリスでは弱い動き
となっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスでは増加のテンポが緩やかになった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・4月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.4%(5月は1.0%)、イギリス1.8%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリス共に、このところおおむね横ばいとなった。
◎欧州中央銀行の成長見通しと金融政策
19年6月6日、欧州中央銀行は政策金利を現行水準(0.0%)に据え置くとともに、
据置きの期間を「少なくとも19年末まで」から「少なくとも20年前半を通じて」に変更した。