月例経済報告(R1.7.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが 期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響に一層 注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する 不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。
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企業の景況感と設備投資計画
○ 企業の景況感について、全体として「良い」が「悪い」を上回る状態は続いているものの、
輸出鈍化の影響を受けやすい製造業を中心に低下した。
○ 一方、2019年度の設備投資計画は前年比6%近い増加が見込まれており、企業の設備投資
意欲は底堅い。
個人消費の動向
○ 個人消費は、雇用・所得環境の改善を背景に、持ち直している。
・新車販売や家電販売が堅調に増加している。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、2月▲0.2%、3月+0.1%、4月+1.8%、5月▲0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、2月▲0.3%、3月▲1.0%、4月▲0.1%、5月▲1.0%、
6月▲0.7%。
・5月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.5%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、2月+0.4%、3月+1.0%、4月+2.1%、5月▲2.3%。
・持家着工数は前月比で、2月1.6%、3月+1.0%、4月+1.8%、5月+0.2%。
・貸家着工数は前月比で、2月+0.1%、3月+0.6%、4月+0.2%、5月▲4.3%。
・分譲着工数は前月比で、2月▲2.7%、3月+3.9%、4月+0.4%、5月▲1.3%
○ 公共投資は、このところ底堅い動きとなっている。
・請負金額は前月比で、2月+26.0%(出来高+0.3%)、3月▲7.7%(出来高▲0.9%)、
4月▲1.0%(出来高+1.4)、5月+9.8%(出来高+0.9%)、6月▲8.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は着実に改善している一方、人手不足感が高い水準となっている。
・有効求人倍率は、1月1.63、2月1.63、3月1.63、4月1.63、5月1.62
(正社員は1.15)となった。
・完全失業率は、1月2.5%、2月2.3%、3月2.5%、4月2.4%、5月2.4%なった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。(6月総合前月比±0.0%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、6月総合前年比+0.7%。
投資・収益・業況
○ 設備投資は、このところ機械投資に弱さもみられるが、緩やかな増加傾向にある。
・構築物投資の緩やかな増加が見込まれており、2019年度計画も底堅い内容となった。
◎ 主な業種の2019年度設備投資計画(日銀短観)
自 動 車 +7.0% 電気自動車を含む新型車向け生産能力の増強投資や研究開発
関連施設投資など
化 学 +8.3% 電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池材料、需要増加に
伴う化粧品等の生産能力増強投資など
電気機械 +6.5% 車載関連の電子部品需要に伴う増強投資や、イメージセンサー
の増産投資など
運輸・郵便 +4.9% 鉄道高速化や駅内外の再開発(駅構内、駅ビル、駅前など)、安全
対策投資など
不 動 産 +11.1% 都市開発に伴うオフィスビルや商業施設の取得など
・企業の設備判断は、引き続き不足感がみられる。
○ 業況は、製造業を中心に、慎重さが増している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年9月+19、12月+19、2019年3月+12、6月+7、9月+7。
「大企業・非製造業」は、2018年9月+22、12月+24、2019年3月+21、6月+23、9月+17。
「中小企業・製造業」は、2018年9月+14、12月+14、2019年3月+6、6月▲1、9月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2018年9月+10、12月+11、2019年3月+12、6月+10、9月+3。
○ 企業収益は、高い水準で底堅く推移している。
生産
○ 生産は、輸出の弱含みを受けて、生産用機械や電子部品など生産の一部には弱さが
続いている一方、内需の底堅さを背景に、国内向け生産では、自動車など輸送機械、
建設機械が増加している。
・鉱工業生産指数は前月比で、4月+0.6%、5月+2.0%、6月(予測)▲1.2%、7月(予測)+0.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、2月+5.6%、3月▲6.2%、4月+5.3%、5月+4.4%
・電子部品・デバイスは前月比で、2月▲3.7%、3月+5.8%、4月▲7.7%、5月+6.4%。
・輸送機械は前月比で、2月+5.5%、3月▲2.5%、4月+4.2%、5月+3.6%。
外需
○ 輸出は、中国経済の減速や世界的な情報関連財需要の一服等の影響により、弱含んでいる。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、3月▲2.7、4月+0.5、5月▲1.2、6月▲0.1。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、5月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲0.3、4月▲0.2、5月▲2.8、6月+0.2。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速している。今後の通商問題の動向に注意が必要である。
・2019年4-6月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.2%となった。
・生産は、伸びがやや低下している。
・輸出は、減少した。
・消費は、伸びがやや低下している。
・消費者物価上昇率は、このところおおむね横ばいとなっている。
〇 韓国では、景気はこのところ弱い動きとなっている。
○ 台湾では、景気は弱めの回復となっている。
○ タイでは、景気は緩やかに回復しているが、一部に弱い動きもみられる。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気回復は緩やかになっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、今後の金融政策の動向に注意が必要である。
・2019年1-3月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.1%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低下傾向にある。
・6月の失業率は、3.7%となった。
〇 コア物価上昇率は、このところやや低下した。
○ 生産はこのところ弱い動きとなっている。
○ 製造業の景況指数このところ低下した。
○ 輸出はこのところ弱含みとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。
ドイツでは、景気は一部に弱さがみられるものの、持ち直しの動きがみられる。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2019年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+1.8%
(イギリスは+2.0%、ドイツは+1.7%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資は緩やかに増加し、イギリスでは弱い動き
となっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏では緩やかながら増加し、イギリスでは増加のテンポが緩やかになった。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・6月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.3%、イギリス+1.8%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリス共に、このところおおむね横ばいとなった。