月例経済報告(R1.8.30) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復して いる。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが 期待される。ただし、通商問題をめぐる緊張の増大が世界経済に与える影響に一層注意するとともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と 政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要が ある。
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2019年4-6月期GDP1次速報
○ 2019年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率+1.8%)、
名目GDP成長率は、前期比+0.4%(年率+1.7%)となり、名実ともに3期連続のプラス成長となった。
名目GDPは過去最高の558兆円となった。
・ 内需の柱である個人消費と設備投資は堅調に増加するとともに、公共投資も底堅く、内需を中心とした
緩やかな回復を示す結果となった。
・ 一方で、輸出が2期連続でマイナスとなるなど、外需の減少が成長率を押し下げている。
※ 内需と外需の動向
日本経済は、自然災害が頻発した2018年7-9月期を除き、内需の増加が成長を支える姿となっている。
中でも、個人消費と設備投資は、2016年後半以降、増加基調を続けている。
外需については弱い動きが続いているが、その背景には世界経済の減速がある。世界経済は来年上向く
ことがメインシナリオではあるが、米中間の通商問題の動向などに注意していく必要がある。
個人消費の動向
○ 個人消費は、雇用・所得環境の改善を背景に、持ち直している。
・新車販売や家電販売が引き続き堅調に増加している一方、ただし、7月は梅雨明けの遅れ等からエアコン販売、
夏物商品を含むスーパーの売上が減少した。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、3月+0.1%、4月+1.5%、5月▲0.7%、6月▲0.6%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、3月▲1.0%、4月▲0.1%、5月▲1.0%、6月▲0.7%、7月▲0.9%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.4%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、3月+1.0%、4月+2.1%、5月▲2.3%、6月▲2.4%。
・持家着工数は前月比で、3月+1.0%、4月+1.8%、5月+0.2%、6月+0.9%。
・貸家着工数は前月比で、3月+0.6%、4月+0.2%、5月▲4.3%。6月▲1.8%。
・分譲着工数は前月比で、3月+3.9%、4月+0.4%、5月▲1.3%、▲6.8%
○ 公共投資は、このところ底堅さが増している。
・請負金額は前月比で、3月▲7.7%(出来高▲0.9%)、4月▲1.0%(出来高+1.6)、5月+9.8%(出来高+1.1%)、
6月▲8.0%(出来高+1.6%)、7月+14.1%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は着実に改善している一方、人手不足感が高い水準となっている。
・有効求人倍率は、2月1.63、3月1.63、4月1.63、5月1.62、6月1.59(正社員は1.14)となった。
・完全失業率は、2月2.3%、3月2.5%、4月2.4%、5月2.4%、6月2.2%なった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。(7月総合前月比±0.0%)。
○ 消費者物価上昇率(消費税抜き)は、7月総合前年比+0.5%。
投資・収益・業況
○ 設備投資は、このところ機械投資に弱さもみられるが、緩やかな増加傾向にある。
・9月の設備投資計画は、前年度比+11.5%(製造業+13.5%、非製造業+10.5%)
※ 主な業種における設備投資計画の特徴(政投銀調査)
化学……電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池材料、需要増加に伴う化粧品・日用品の増産投資など
輸送用機械……モデルチェンジ対応(ハイブリッド化)や電動化(電気自動車)に向けた投資の継続など
非鉄金属……自動車向け電池材料や半導体材料の増産投資など
運輸……鉄道高速化や安全対策投資、不動産開発のほか、物流施設の整備に向けた投資など
不動産……国際ビジネス拠点・大型複合施設の建設といった都心部開発の継続など
卸売・小売……コンビニの省力化投資、卸売(商社など)における物流施設の整備など
○ 業況は、製造業を中心に、慎重さが増している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2018年9月+19、12月+19、2019年3月+12、6月+7、9月+7。
「大企業・非製造業」は、2018年9月+22、12月+24、2019年3月+21、6月+23、9月+17。
「中小企業・製造業」は、2018年9月+14、12月+14、2019年3月+6、6月▲1、9月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2018年9月+10、12月+11、2019年3月+12、6月+10、9月+3。
○ 企業収益は、高い水準で底堅く推移している。
・製造業では、輸出の鈍化を受けて生産が減少し、営業利益が減少した。
生産
○ 生産は、このところ横ばいとなっているものの、一部に弱さが続いている。
・製造業の生産は、輸出の鈍化を受けて、横ばいの動きとなっている一方、非製造業は堅調な内需を背景に緩やかな増加が続いている。
・鉱工業生産指数は前月比で、5月+2.0%、6月▲3.3%、7月(予測)+2.7%、8月(予測)+0.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3月▲6.2%、4月+5.3%、5月+4.4%、6月▲6.9%
・電子部品・デバイスは前月比で、3月+5.8%、4月▲7.7%、5月+6.4%、6月▲2.0%。
・輸送機械は前月比で、3月▲2.5%、4月+4.2%、5月+3.6%、6月▲7.5%。
外需
○ 輸出は、アジア向けを中心に、弱含んでいる。
・情報関連材は、半導体等製造装置に弱さが続く一方、電子部品(IC)には下止まりの兆しが見える。
・自動車の輸出は、増勢が鈍化した。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、4月+0.5、5月▲1.2、6月▲0.1、7月▲2.8。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、4月▲0.2、5月▲2.8、6月+0.2、7月▲1.5。
アジア経済の動向
○ 中国では、景気は緩やかに減速している。今後の通商問題の動向に注意が必要である。
・2019年4-6月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.2%となった。
・生産は、伸びがやや低下している。
・輸出は、減少した。
・消費は、伸びがやや低下している。
・消費者物価上昇率は、このところおおむね横ばいとなっている。
〇 韓国では、景気はこのところ弱い動きとなっている。
○ 台湾では、景気はこのところ緩やかに回復している。
○ タイでは、景気は弱い動きとなっている。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
〇 インドでは、景気回復は緩やかになっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、米中間の通商問題をめぐる緊張の増大の影響等に
留意が必要である。
・2019年4-6月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+2.1%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低水準でおおむね横ばいとなった。
・7月の失業率は、3.7%となった。
〇 コア物価上昇率は、このところやや低下した。
○ 生産・設備投資はこのところ弱い動きとなっている。
〇 消費は増加した。
○ 製造業の景況指数このところ低下した。
○ 輸出はこのところ弱含みとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに回復しているものの、一部に弱さがみられる。
ドイツでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2019年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で、+0.8%(イギリスは▲0.8%、ドイツは▲0.3%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資はおおむね横ばいとなり、イギリスでは弱い動きとなっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに緩やかながら増加した。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは安定している。
・6月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏1.3%、イギリス1.8%。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリス共に、このところおおむね横ばいとなった。