月例経済報告(R1.12.20) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが 一段と増しているものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが 期待される。ただし、通商問題をめぐる動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱の行方等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に 加え、消費税率引き上げ後の消費者マインドの動向に留意する必要が ある。 |
2019年の日本経済総括
〇 海外経済の減速を背景に外需が弱い中、内需が景気回復をけん引した。
・2019年の我が国経済は、6年連続で今世紀最高水準の賃上げが実現し、実質総雇用者所得が
緩やかに増加する中で、個人消費(GDP構成比56%)を始めとする内需が緩やかに増加した。
・一方で、海外経済の減速を背景に、輸出(GDP構成比19%)は1年間を通じて弱い動きとなった。
・全体として、外需の低調さを内需が支えることで、景気は緩やかな回復を続けている。
〇 外需の影響を受けやすい製造業に弱さがある一方、内需が緩やかに増加する中で
非製造業は増勢維持となった。
・外需の弱さは、その影響を受けやすい製造業(GDP構成比21%)の生産を下押しした。
・他方、内需が緩やかに増加する中で、非製造業(GDP構成比79%)の生産は増勢が続いている。
・こうした製造業・非製造業の生産活動の差は、企業マインドにも表れており、企業の景況感は、
製造業を中心に慎重さが増している。
〇 ソサエティ5.0に向けた設備投資が進展した。
・海外経済減速の影響を受けながらも、我が国の企業は設備投資の増加基調を維持している。
・2019年度の設備投資計画(日銀短観)は、前回(9月)調査に比べ下方修正されたものの、
前年度比で増加しており、特に、人手不足業種を中心にソフトウェア投資が高い伸びとなっている。
・電気自動車関連や次世代通信規格「5G」を見越した投資のほか、省力化のためのソフトウェア
投資が盛んに行われており、ソサエティ5.0(サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を
高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会)への対応が
進んでいる。
今般取りまとめられた経済対策や補正予算、税制改正等が、こうした未来への投資を後押しすることが
期待できる。
個人消費の動向
○ 10月の家電販売・自動車販売は、9月の売上増の反動や台風の影響等により減少した。
11月以降、自動車販売は前年割れが続いているものの、家電やドラッグストアの販売は底堅い。
消費者マインドの影響に引き続き注意する必要がある。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、7月+0.7%、8月+0.1%、9月+2.3%、10月▲2.6%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、7月▲0.9%、8月▲0.7%、9月▲1.5%、10月+0.6%、11月+2.5%。
・10月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.4%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、7月▲1.3%、8月▲0.4%、9月▲0.9%、10月▲1.1%。
・持家着工数は前月比で、7月▲6.6%、8月▲3.2%、9月▲4.3%、10月▲0.8%。
・貸家着工数は前月比で、7月▲2.8%、8月▲0.1%、9月▲2.6%、10月▲2.4%。
・分譲着工数は前月比で、7月+3.8%、8月+4.6%、9月+4.1%、10月+1.7%
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、7月+14.1%(出来高▲0.7%)、8月▲13.6%(出来高+0.9%)、
9月▲1.1%(出来高+0.3%)、10月▲3.9%(出来高+0.7%)、11月+2.4%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は改善した。一方、人手不足感が高い水準にある。
・有効求人倍率は、6月1.59、7月1.59、8月1.59、9月1.57、10月1.57(正社員は1.13)となった。
・完全失業率は、6月2.2%、7月2.2%、8月2.2%、9月2.4%、10月2.4%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。(11月総合前月比±0.0%)。
○ 消費者物価上昇率は、11月総合前年比+0.2%。
投資・収益・業況
〇 企業収益は、非製造業では底堅く、全体として高水準を維持しているが、輸送用機械や
生産用機械など、輸出や生産に弱い動きがみられる製造業では伸び悩んでいる。
〇 設備投資は、機械投資に弱さも見られるが、緩やかな増加傾向にある。
○ 業況は、製造業を中心に、引き続き慎重さが増している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年3月+12、6月+7、9月+5、12月+0、2020年3月+0。
「大企業・非製造業」は、2019年3月+21、6月+23、9月+21、12月+20、2020年3月+18。
「中小企業・製造業」は、2019年3月+6、6月▲1、9月▲4、12月▲9、2020年3月▲12。
「中小企業・非製造業」は、2019年3月+12、6月+10、9月+10、12月+7、2020年3月+1。
○ 企業収益は、高い水準にあるものの、製造業を中心に弱含んでいる。
生産
○ 生産は、外需の弱さを受けて、一段と弱含んでいる。
・10月の台風等によるマイナスの影響もあるが、一段と弱含んでおり、先行きも弱めの動きとなった。
・鉱工業生産指数は前月比で、9月+1.7%、10月▲4.5%、11月(予測)▲0.5、11月(予測)+1.1%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月+0.8%、8月▲2.7%、9月+8.0%、10月▲6.4%。
・電子部品・デバイスは前月比で、7月+0.4%、8月+4.5%、9月▲1.8%、10月+0.9%。
・輸送機械は前月比で、7月+2.1%、8月▲1.8%、9月▲0.2%、10月▲7.8%。
外需
〇 輸出は弱含んでいる。
・自動車関連財の輸出が弱い動きとなっている。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、8月+1.6、9月+3.9、10月▲10.0、11月+2.7。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、8月▲4.6、9月▲2.8、10月+6.8、11月+2.0。
アジア経済の動向
〇 2019年のアジアでは、成長率が低下した。
・自動車販売も低調に推移しており、輸入は減少に転じている。
・一方、世界の半導体需要は回復に向かうことが期待される。
〇 中国では、景気は製造業を中心に一段と弱い動きがみられ、緩やかな減速が続いている。
・2019年7-9月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.0%となった。
・生産は、伸びが低下している。
・輸出は、減少した。
・消費は、伸びが低下している。
・消費者物価上昇率は、このところ高まっている。
〇 韓国では、景気は弱い動きとなっている。
〇 台湾では、景気は緩やかに回復している。
〇 タイでは、景気は弱い動きとなっている。
〇 インドネシアでは、景気回復は、緩やかになっている。
〇 インドでは、景気は弱い動きとなっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。
ただし、米中間の通商問題をめぐる動向の影響等に留意する必要がある。
・2019年7-9月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.1%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低水準でおおむね横ばいとなった。
・11月の失業率は、3.5%となった。
○ 生産はこのところ弱い動きとなっている。
〇 設備投資は減少している。
〇 消費はゆるやかに増加し、自動車販売台数はおおむね横ばいとなった。
○ 製造業の景況指数このところ低下した。
○ 輸出はこのところ弱含みとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は弱い回復となっている。
ドイツでは、景気は弱含んでいる。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2019年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.9%
(イギリスは+1.2%、ドイツは+0.3%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資はおおむね横ばいとなり、イギリスでは弱い動き
となっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに緩やかながら増加した。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなり、イギリスは安定した。
・10月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.2%(11月+1.5%)、イギリス+1.8%。
○ 輸出は、ユーロ圏は弱含み、イギリスはおおむね横ばいとなった。
◎英国のEU離脱の経緯と今後の予定
2019年7月24日 メイ首相が辞任 ジョンソン氏が首相就任
9月9日 EU離脱延期法成立
10月2日 英国がEU離脱に関する新提案を公表
17日 欧州理事会(EU首脳会議): 英国とEUが新たな離脱協定案に合意
29日 英国とEUが最長2020年1月31日までの離脱期日延期に合意
12月12日 英国下院選挙にて、保守党が単独過半数を獲得
(今後の予定)
2020年 1月31日 英国のEU離脱期限
6月30日 移行期間の延長申請期限
12月31日 移行期間終了