月例経済報告(R2.1.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段 と増しているものの、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが 期待される。ただし、通商問題をめぐる動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域をめぐる情勢等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引き上げ後の消費者マインドの動向に 留意する必要がある。 |
個人消費の動向
○ 個人消費は、雇用・所得環境の改善を背景に、持ち直し基調を維持している。品目・業態ごとに
差はあるものの、10月の落ち込みの後、マイナス幅は縮小傾向となった。
引き続き、消費者マインドの影響に引き続き注意する必要がある。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、8月+0.1%、9月+2.3%、10月▲4.2%、11月+1.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、8月▲0.7%、9月▲1.5%、10月+0.6%、11月+2.5%、12月+0.4%。
・11月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.9%となった。
◎販売状況に関するヒアリング調査
衣料品……12月は中旬以降に気温が高く推移したことから防寒衣料の販売に苦戦し、
既存店売上高は前年比減となった。
百貨店……12月の売上高前年比は、土日祝日が昨年より2日少ないことによる下押し
があったものの、化粧品等が好調に推移するなど、前月からマイナス幅を
縮小させた。
コンビニ……12月も消費税率10%対象商品を含め前年比プラスで推移。キャッシュレス
決済の利用率も向上しており、政策効果は引き続き売上高の押上げに寄与
した。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、7月▲1.3%、8月▲0.4%、9月▲0.9%、10月▲1.1%。
・持家着工数は前月比で、7月▲6.6%、8月▲3.2%、9月▲4.3%、10月▲1.8%。
・貸家着工数は前月比で、7月▲2.8%、8月▲0.1%、9月▲2.6%、10月▲2.4%。
・分譲着工数は前月比で、7月+3.8%、8月+4.6%、9月+4.1%、10月+1.7%
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前年比で、8月▲13.6%(出来高+0.9%)、9月▲2.0%(出来高+0.3%)、
10月+5.5%(出来高+0.7%)、11月+3.7%、12月▲13.3%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は改善した。
・雇用情勢は改善。労働需給は引き締まった状態が続いており、雇用者数や労働者の給与も
引き続き増加した。その結果、実質総雇用者所得は、緩やかに増加している。
・有効求人倍率は、7月1.59、8月1.59、9月1.57、10月1.57、11月1.57(正社員は1.13)となった。
・完全失業率は、7月2.2%、8月2.2%、9月2.4%、10月2.4%、11月2.2%となった。
物価の動向
○ 消費者物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。(11月総合前月比+0.1%)。
○ 消費者物価上昇率は、11月総合前年比+0.2%。
投資・収益・業況
〇 企業収益は、高い水準にあるものの、製造業を中心に弱含んでいる。
〇 設備投資は、設備投資は緩やかな増加傾向にある。
・研究開発投資とソフトウェア投資が伸長する一方、製造業に設備過剰感が見られる中で、機械投資と
構築物投資の一部には弱さがみられる。
○ 業況は、製造業を中心に、引き続き慎重さが増している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年3月+12、6月+7、9月+5、12月+0、2020年3月+0。
「大企業・非製造業」は、2019年3月+21、6月+23、9月+21、12月+20、2020年3月+18。
「中小企業・製造業」は、2019年3月+6、6月▲1、9月▲4、12月▲9、2020年3月▲12。
「中小企業・非製造業」は、2019年3月+12、6月+10、9月+10、12月+7、2020年3月+1。
生産
○ 生産は、外需の弱さを受けて、一段と弱含んでいる。
・10月の台風で被災した中小メーカーによる大手への重要部品の供給が11月も引き続き滞り、
11月の生産を一部下押しした。
・先行きは、サプライチェーンの回復に伴う生産増や、半導体需要の高まりから持ち直しが
見込まれている。
・鉱工業生産指数は前月比で、10月▲4.5%、11月▲0.1%、12月(予測)+2.8%、2020年1月(予測)+2.5%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、8月▲2.7%、9月+8.0%、10月▲6.4%、11月▲8.7%。
・電子部品・デバイスは前月比で、8月+4.5%、9月▲1.8%、10月+0.9%、11月+0.1%。
・輸送機械は前月比で、8月▲1.8%、9月▲0.2%、10月▲7.8%、11月+4.1%。
外需
〇 輸出は引き続き弱含んでいるが、このところ中国向けは下げ止まりの兆しが見える。
・海外経済の減速を背景に、輸出は弱含みとなっている。引き続き、海外発の下方リスクには注意
が必要である。
・ただし、このところ中国向けは、半導体等の情報関連財や、自動車部品等の自動車関連財、さらに
設備投資に用いられるコンベヤ等の資本財が足下で増加となり、下げ止まりの兆しが見える。
○ 輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、9月+3.9、10月▲10.0、11月+2.7、12月+0.4。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、9月▲2.8、10月+6.8、11月+2.0、12月▲0.3。
アジア経済の動向
〇 中国では、緩やかな減速が続いている。
・2019年10-12月期の実質GDP成長率(前年比)は+6.0%となった。
製造業の一部に下げ止まりの兆しもみられるが、経済全体としては緩やかな減速が続いている。
・足下の景気刺激策と中長期的な構造改革の両立が課題である。
・米中貿易摩擦を背景に世界貿易は減少した。特に中国の対米輸出が減少し、米国の対中赤字は縮小した。
・今般の米中間の通商交渉の第1段階合意を受けて、中国製造業の景況感は改善しており、人民元も安定して推移した。
・生産は、伸びがやや上昇した。
・輸出は、このところ下げ止まりの動きがみられる。
・消費は、伸びが低下している。
・消費者物価上昇率は、このところ高まっている。
〇 韓国では、景気は弱い動きとなっている。
〇 台湾では、景気は緩やかに回復している。
〇 タイでは、景気は弱い動きとなっている。
〇 インドネシアでは、景気回復は、緩やかになっている。
〇 インドでは、景気は弱い動きとなっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に回復が続いている。ただし、米中間の通商問題をめぐる動向の影響等に留意する必要がある。
・2019年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+2.1%。
○ 雇用者数は増加しており、失業率は低水準でおおむね横ばいとなった。
・12月の失業率は、3.5%となった。
○ 生産はこのところ弱い動きとなっている。
〇 設備投資は減少している。
〇 消費はゆるやかに増加し、自動車販売台数はおおむね横ばいとなった。
○ 製造業の景況指数このところ低下した。
○ 輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は弱い回復となっている。
ドイツでは、景気は弱含んでいる。
イギリスは、景気は弱い回復となっている。
・2019年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.9%
(イギリスは+1.7%、ドイツは+0.3%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資はおおむね横ばいとなり、イギリスでは弱い動き
となっている。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに緩やかながら増加した。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなり、イギリスは安定した。
・12月の消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.4%、イギリス+1.4%。
○ 輸出は、ユーロ圏は弱含み、イギリスはおおむね横ばいとなった。
◎英国のEU離脱の経緯と今後の予定
2019年7月24日 メイ首相が辞任 ジョンソン氏が首相就任
9月9日 EU離脱延期法成立
10月2日 英国がEU離脱に関する新提案を公表
17日 欧州理事会(EU首脳会議): 英国とEUが新たな離脱協定案に合意
29日 英国とEUが最長2020年1月31日までの離脱期日延期に合意
12月12日 英国下院選挙にて、保守党が単独過半数を獲得
2020年 1月9日 英国下院でEU離脱関連法案を可決
(今後の予定)
2020年 1月31日 英国のEU離脱期限
6月30日 移行期間の延長申請期限
12月31日 移行期間終了