月例経済報告(R2.4.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化して おり、極めて厳しい状況にある。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染症の影響による極めて厳しい状況が続くと 見込まれる。また、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに 十分注意する必要がある。 金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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世界経済の動向
○ 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、2020年の世界経済は大幅なマイナス
成長となる見通しである。
・アメリカ、ユーロ圏、中国で、リーマンショック後を大きく下回る成長率となる見込みである。
IMFが4月に公表した「2020年の世界経済見通し」は前年比で、▲3.0%(日本▲5.2%、アメリカ▲5.9%、
ユーロ圏▲7.5%、中国+1.2%、インド+1.9%)。
・外出制限等の実施により、店舗や公共交通機関への訪問・滞在時間は大きく減少した。経済活動は
大幅に縮小しているとみられる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、感染症の影響により、急速に減少している。
・3月のクレジットカード支出は、買いだめによる販売増がみられるスーパーに対し、外食・旅行等の
サービス消費は弱い。
・支出した人の割合を品目別にみても、外食・旅行の比率は4月半ばにかけて低下した。
・3月の消費者マインドは大幅に落ち込んだ。低下幅は、調査開始以来最大となった。
・外出自粛の影響により、5月連休の旅行需要は大きく減退した。消費の先行きは、厳しい状況が続く。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、11月+1.3%、12月▲1.0%、1月+0.6%、2月▲1.5%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、11月+2.5%、12月+0.2%、1月▲0.2%、2月▲0.5%、3月▲7.4%。
・2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.6%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月▲5.2%、12月▲1.9%、1月▲3.2%、2月+0.9%。
・持家着工数は前月比で、11月▲3.1%、12月▲1.0%、1月▲3.3%、2月+0.8%。
・貸家着工数は前月比で、11月▲0.5%、12月▲0.8%、1月▲0.2%、2月+0.3%。
・分譲着工数は前月比で、11月▲14.1%、12月▲4.5%、1月▲6.9%、2月+1.5%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前年比で、11月▲0.7%(出来高+0.2%)、12月▲7.3%(出来高▲0.9%)、
1月+5.2%(出来高▲0.5%)、2月▲1.9%(出来高▲2.8%)、3月+14.8%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、足下では弱い動きがみられる。
・賃上げ率は、厳しい環境の中、企業努力により前年比+1.94%となった。但し、交通運輸、
ホテル・サービスでは相対的に低い伸びとなっている。
・こうした中、日次の有効求人数は、4月も前年比の減少幅が更に拡大した。
・雇用調整助成金は、雇用維持に有効と考えられる(リーマンショック時は製造業を中心に
活用)。今回は、影響が大きい観光・飲食・イベント関連業種での雇用調整助成金の活用が
カギとなっており、徹底した周知が必要である。
・有効求人倍率は、10月1.57、11月1.57、12月1.57、1月1.49、2月1.45(正社員は1.05)となった。
・完全失業率は、10月2.4%、11月2.2%、12月2.2%、1月2.4%、2月2.4%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに下落している。
消費者物価は、このところ横ばいとなっている。(2月総合前月比▲0.1%)。
・年初来の原油安を背景にガソリン価格は下落した。
・原油安や、感染症の影響による宿泊料の値下がり等により、企業間取引に係る物価指標は足下で下落または横ばいとなった。
・消費者物価(コアコア)も、宿泊料の値下がり等を受け、このところ横ばいとなった。
・感染症の影響で、品薄のマスクが値上がりする一方、需要減少を背景に、宿泊料に加えて牛肉や
切り花の価格も下落した。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に減少している。
・3月の日銀短観では、企業の資金繰りは全体的にやや悪化した。
業種別には、宿泊・飲食サービス等で急速に悪化。
・3月の小規模事業者は、赤字企業の割合が大幅な超過となる見通しである。
○ 倒産件数は、2019年まで年間8千件程度の低い水準で推移している。
・3月の倒産件数は、大幅な上昇はみられなかったが、感染症関連倒産は足下で増加した。
○ 設備投資は、おおむねよこばいとなった。
○ 業況判断は、感染症の影響により、急速に悪化している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年6月+7、9月+5、12月+0、2020年3月▲8、6月▲11。
「大企業・非製造業」は、2019年6月+23、9月+21、12月+20、2020年3月+8、6月▲1。
「中小企業・製造業」は、2019年6月▲1、9月▲4、12月▲9、2020年3月▲15、6月▲29。
「中小企業・非製造業」は、2019年6月+10、9月+10、12月+7、2020年3月▲1、6月▲19。
生産
○ 生産は、感染症の影響により、減少している。
・自動車生産は、世界的な需要減と部品供給の制約を受け、4月に大きく減産する見込みである。
・鉱工業生産指数は前月比で、1月+1.0%、2月▲0.3%、3月(予想)▲5.3%、4月(予想)+7.5%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11月▲8.7%、12月+16.2%、1月▲3.5%、2月▲5.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、11月+0.1%、12月+3.3%、1月▲1.3%、2月+8.3%。
・輸送機械は前月比で、11月+4.1%、12月▲4.0%、1月+6.6%、2月▲5.0%。
外需
○ 輸出は、世界的な需要減を背景に、減少した。さらに4月以降も、自動車の減産を受け、減少が続く見込みである。
○ 輸入は、感染症の影響により、このところ減少している。
○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。
○ 訪日外客数は、入国制限や各国の海外渡航自粛勧告等を受け、大幅に減少した。
景気ウォッチャー調査
○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、街角景気は、これまで過去最低だったリーマンショック時を下回る、極めて厳しい状況となった。
・分野・業種別にみると、街角景気は、飲食、サービスが一段と低下し、特に厳しい状況となっている。
・足下では雇用関連が大きく低下した。求人や人材派遣の弱さ、採用の不調等を反映したものである。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で大きく下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、12月+0.9、1月+2.2、2月▲14.5、3月▲13.2。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、12月▲0.4、1月▲3.7、2月▲17.2、3月▲5.8。
アジア経済の動向
〇 中国では、引き続き厳しい状況にあるものの、足下では持ち直しの動きもみられる。
・2020年1-3月期の実質GDP成長率(前年比)は▲6.8%となった。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出は、減少した。
・消費は、大幅に減少した。
・消費者物価上昇率は、高まっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は上昇した。
〇 その他のアジア諸国・地域においては、感染症の影響により、経済活動が一段と抑制されており、景気が下押しされている。
・韓国・台湾・インドネシアでは、景気は下押しされている。
・タイ・インドでは、景気は大幅に下押しされている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある。
・2019年10-12月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+2.1%。
○ 雇用者数は大幅に減少しており、失業率は急速に上昇している。
・3月の失業率は4.4%となった。
○ 生産は急速に減少している。
○ 設備投資は減少している。
○ 消費は減少し、自動車販売台数は大幅に減少となった。
○ 製造業の景況指数は低下、非製造業の景況指数は急速に悪化となっている。
○ 輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、感染症の影響により景気は急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある。
・2019年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.4%(イギリスは+0.1%、ドイツは+0.1%)。
○ ユーロ圏・イギリスともに3月のサービス業の景況感は過去最大の下落幅となり、水準も過去最低値となった。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資はおおむね横ばいとなり、イギリスでは弱い動きとなっている。
○ 自動車販売台数は、大幅な下落となった。
・3月の自動車登録台数は前年同月比で、ユーロ圏▲58.5%、ドイツ▲37.7%、イギリス▲44.4%。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、減少した。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなり、イギリスは安定した。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.2%(3月)、イギリス+1.6%(2月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は弱含み、イギリスは減少している。