月例経済報告(R2.5.28) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化して おり、極めて厳しい状況にある。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の レベルを段階的に引き上げていくが、当面、厳しい状況が続くと見込まれる。金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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○ 主要国の実質GDPは、3月中旬以降に実施された外出制限等により、本年1-3月期に大きく低下している。5月に入り経済活動の再開が
段階的に進められているが、4-6月期はさらに大幅な落ち込みとなる見込みである。
日本も、欧米ほどではないが、厳しい数字となる可能性がある。
・2020年1-3月期GDPの推移(前期比年率)は、日本▲3.4%、アメリカ▲4.8%、ドイツ▲8.6%、フランス▲21.4%、イギリス▲7.7%。
○ 7-9月期以降は、持ち直しが期待されているが、感染症の状況や経済活動の段階的再開の進展に依存しており、第2波・第3波の発生も
含め、不確実性が高い。
2020年1-3月期日本のGDP1次速報
○ 本年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比▲0.9%(年率▲3.4%)と2期連続のマイナスとなった。
○ 2月下旬以降の外出自粛により個人消費が減少するなど内需が弱く、外需も、財輸出では資本財(機械類)、サービス輸出では旅行
(インバウンド)が減少しており、内外需ともに厳しい状況となった。
○ 緊急事態宣言発出後の4、5月は経済活動が抑制されており、4-6月期のGDPはより厳しい数字となる可能性も想定される。
働き方や消費行動の変化
○ 感染拡大防止と企業活動の継続を両立させるために、幅広い業種で、在宅勤務やテレワークの導入が進展した。
○ 外出自粛の中、財やサービスの支出は全体として厳しい状況。他方、ネット経由による財の購入(Eコマース)やコンテンツ配信など、自宅で
行える消費支出は増加した。
・テレワークやEコマースのさらなる普及や、様々な業種で感染防止策を講じることを通じ、新たな日常をつくり上げることで、経済活動を段階的
に引き上げることが重要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、感染症の影響により、急速な減少が続いている。
・消費総合指数(実質)は、前月比で、12月▲1.0%、1月+1.2%、2月▲0.9%、3月▲3.5%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、12月+0.2%、1月▲0.2%、2月▲0.5%、3月▲7.4%、4月▲9.3%。
・3月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月▲1.9%、1月▲4.6%、2月+7.2%、3月+3.9%。
・持家着工数は前月比で、12月▲1.0%、1月▲5.4%、2月+10.0%、3月+6.9%。
・貸家着工数は前月比で、12月▲0.8%、1月+1.1%、2月+0.3%、3月+3.1%。
・分譲着工数は前月比で、12月▲4.5%、1月▲9.3%、2月+12.8%、3月+1.3%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前年比で、12月▲7.3%(出来高▲0.9%)、1月+5.2%(出来高▲0.5%)、2月▲1.9%(出来高▲2.8%)、3月+14.8%(出来高+4.6%)、4月▲9.2%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱さが増している。
・求人は、全体としては弱い一方、増加している職種もあり、労働需給のマッチング促進が重要である。
・企業や労働組合では、失業を防ぎながら需給調整を図るよう、企業内の労働移動や企業間の業務提携等の取り組みがみられる。
・引き続き雇用を守るためには、今般拡充した雇用調整助成金の活用が有効となる。
・今春の賃上げ率は2%前後となり、所得環境の下支えが期待される。
・有効求人倍率は、11月1.57、12月1.57、1月1.49、2月1.45、3月1.39(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、11月2.2%、12月2.2%、1月2.4%、2月2.4%、3月2.5%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、下落した。
・消費者物価は、横ばいとなっている。(4月総合前月比▲0.2%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に減少している。
・1-3月期の上場企業決算は、感染症の影響を受けて、急速な減益となった。
業種別にみても、国内外の売上の減少から、製造業、非製造業ともに厳しい状況である。
・中小企業の資金繰りは、急速に悪化しているが、強力な資金繰り支援が実施されている。
○ 倒産件数は、2019年まで年間8千件程度の低い水準で推移している。
・4月の倒産件数は、全体としては増加が抑制されているが、感染症関連倒産は増加。
○ 設備投資は、このところ弱含んでいる。
○ 業況判断は、感染症の影響により、急速に悪化している。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年6月+7、9月+5、12月+0、2020年3月▲8、6月▲11。
「大企業・非製造業」は、2019年6月+23、9月+21、12月+20、2020年3月+8、6月▲1。
「中小企業・製造業」は、2019年6月▲1、9月▲4、12月▲9、2020年3月▲15、6月▲29。
「中小企業・非製造業」は、2019年6月+10、9月+10、12月+7、2020年3月▲1、6月▲19。
生産
○ 生産は、感染症の影響により、減少している。
・製造業の生産は、内外需の弱さを受け減少した。 特に、自動車生産は、大幅な減少が続く見込みである。一方、テレワークの普及等もあり、電子部品・
デバイス生産は持ち直しが続く見込みである。
・鉱工業生産指数は前月比で、2月▲0.3%、3月▲3.7%、4月(予想)+1.4%、5月(予想)▲1.4%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12月+16.2%、1月▲3.5%、2月▲5.0%、3月▲10.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、12月+3.3%、1月▲1.3%、2月+8.3%、3月▲3.1%。
・輸送機械は前月比で、12月▲4.0%、1月+6.6%、2月▲5.0%、3月▲4.3%。
外需
○ 輸出は、新型コロナウイルス感染症の影響により、減少している。
・財の輸出は、欧米向けを中心に、急速に減少している一方、4月の中国向けは増加した。
・自動車関連罪などは弱いが、IC等、情報関連財の堅調さが下支えしている。
○ 輸入は、感染症の影響は残るものの、このところ下げ止まりつつある。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 街角景気は、これまで過去最低だったリーマンショック時を下回り、極めて厳しい状況にある中で、
さらに悪化している。
・分野・業種別にみると、街角景気は、飲食、サービス等非製造業で特に特に厳しい状況となっている。
・非製造業の生産をみても、消費の低迷を反映して、3月に急落した。業種別にみると、外出自粛を受けて、特に宿泊、飲食、運輸といったサービス消費を
担う業種で減少幅が大きい。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月連続で大きく下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月+2.2、2月▲14.5、3月▲13.2、4月▲6.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、5か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月▲3.7、2月▲17.2、3月▲5.8、4月▲2.2。
アジア経済の動向
○ 中国では、引き続き厳しい状況にあるものの、足下では持ち直しの動きもみられる。
・2020年1-3月期の実質GDP成長率(前年比)は▲6.8%となった。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出は、減少した。
・消費は、弱い動きが続いている。
・消費者物価上昇率は、やや低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。
○ その他のアジア諸国・地域においては、感染症の影響により、経済活動が一段と抑制されており、景気が下押しされている。
・韓国・インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。
・台湾では、景気は減速している。
・タイ・インドでは、景気は極めて厳しい状況にある。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は急速な悪化が続いており、極めて厳しい状況にある。
・2020年1-3月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率▲4.8%。
○ 雇用者数は極めて大幅に減少しており、失業率は急速に上昇している。
・4月の失業率は14.7%となった。
○ 生産はさらに急速に減少している。
○ 設備投資は大幅に減少している。
○ 消費・自動車販売台数はともに大幅に減少となった。
○ 製造業・非製造業ともに景況指数は急速に悪化となった。
○ 財輸出は減少した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、感染症の影響により景気は急速な悪化が続いており、極めて厳しい状況にある。
・2020年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲14.2%
(イギリスは▲7.7%、ドイツは▲8.6%)。
○ 民間設備投資は、ユーロ圏では機械設備投資はおおむね横ばいとなり、イギリスでは弱い動きとなっている。
○ 自動車販売台数は、極めて大幅な下落となった。
・4月の自動車登録台数は前年同月比で、ユーロ圏▲79.6%、ドイツ▲61.1%、イギリス▲97.3%。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、大幅に減少している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低下となり、イギリスは安定している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.1%(4月)、イギリス+1.4%(4月)。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに大幅に減少している。