月例経済報告(R2.8.27) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の レベルを段階的に引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染症が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動に十分留意する必要がある。
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○ 日本の4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲27.8%と3期連続のマイナスとなった。
・ 4、5月の緊急事態宣言の影響により個人消費が大幅減、また、 輸出も欧米におけるロックダウンの影響により大幅減となった。
○ 欧米主要国の4-6月期の実質GDP成長率は、ロックダウンの影響等により、いずれも前期比年率▲30%~▲60%と大幅に低下している。
○ 日本・各国ともに4、5月を底に経済活動の再開が進展している。
新たな日常
○ 宿泊施設稼働率は、昨年に比べて低い水準で推移している。
「新しい旅のエチケット」の普及・啓発を進め、感染防止と安全に旅行を楽しむという経済社会活動の両立を目指す必要がある。
○ 「新たな日常」(1.デジタル化への集中投資・実装とその環境整備 2.地方創生 3.人・イノベーションへの投資の強化 4.包摂的な社会の実現 5.新たな世界秩序の下での
活力ある日本経済の実現)を作っていくため、事業者には、持続化補助金による支援を講じつつ、業種別ガイドラインに沿った感染防止対策の徹底を
促すとともに、規制緩和で民間の力を活用していく工夫が必要である。
○ 「新たな日常」を早期に実現するための、「実行計画」を年末までに策定する。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緊急事態宣言下の4、5月を底に、持ち直している。
・品目別では、家電販売額は前年比プラスで推移し、自動車販売台数は前年比のマイナス幅が縮小するなど、財支出は増加した。
・サービスも含めた週当たり消費額は、このところの感染者数の増加や天候不順もあり、過去3年に比べて低い水準で推移している。
・こうした中、消費の下支え等に資する直接給付等の各種支援策は着実に実行されている。
◎ 消費の下支え等に資する主な支援策の実績(直近値/予算額)
特別定額給付金……12.6兆円(8/21時点)/12.9兆円 ※約5,826万世帯(約98.6%)
持続化給付金 …… 4.0兆円(8/21時点)/ 5.2兆円 ※約311万件
雇用調整助成金 ……1.0兆円(8/21時点)/1.6兆円 ※約81.3万件(8/25時点)
緊急小口資金等 ……0.3兆円(8/15時点)/0.4兆円 ※約92.4万件
・消費総合指数(実質)は、前期比で、3月▲3.5、4月▲7.5%、5月▲2.1%、6月+9.4%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、3月▲7.4%、4月▲9.3%、5月+2.4%、6月+4.4%、7月+1.1%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で+1.1%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、3月+3.9%、4月▲12.0%、5月+1.3%、6月▲2.1%。
・持家着工数は前月比で、3月+6.9%、4月▲16.1%、5月▲2.8%、6月+4.9%。
・貸家着工数は前月比で、3月+3.1%、4月▲14.3%、5月+11.7%、6月▲8.1%。
・分譲着工数は前月比で、3月+1.3%、4月▲4.5%、5月▲5.3、6月▲2.5%。
○ 公共投資は、令和元年度補正予算の進捗等により堅調に推移している。
・今後も、令和2年度当初予算の執行もあり、引き続き経済の下支えに寄与することが期待される。
・請負金額は前月比で、3月+14.8%(出来高+2.5%)、4月▲9.2%(出来高+0.5%)、5月▲0.7%(出来高+2.3%)、6月+4.2%(出来高+0.3%)、7月▲2.1%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっている。
・就業者数は、4月に大幅減の後、5、6月に累計12万人増加した。
休業者数は、4月に大幅増の後、5、6月に累計385万人減少し、6月は267万人となった。
引き続き雇用調整助成金による下支えが重要である。また、こうした中、足下7月の求人広告掲載件数は、前月比増となった。
・6月の賃金は、一般労働者では、弱さが続く。パートタイム労働者は、同一労働同一賃金の下で賞与面の処遇改善もあり、前年比プラスと
なっている。
・有効求人倍率は、2月1.45、3月1.39、4月1.32、5月1.20、6月1.11(正社員は0.84)となった。
・完全失業率は、2月2.4%、3月2.5%、4月2.6%、5月2.9%、6月2.8%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、緩やかに上昇している。
消費者物価は、横ばいとなっている。(7月総合前月比+0.2%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により、大幅な減少が続いている。
・2020年4-6月期の企業収益は、大幅な減少が継続した。こうした状況下において、資金繰り支援は着実に企業を下支えしている
(8/25時点での実質無利子・無担保融資;約24.4兆円 ※約134.6万件)。
○ 設備投資は、弱含んでいる。
・2020年度設備投資計画は、企業収益の悪化や先行き不透明感の高まりを受けて、慎重さがみられる。
ただし、ソフトウェア投資の年度計画は、増勢を維持している。
○ 業況判断は、厳しさは残るものの、改善の兆しがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年9月+5、12月+0、2020年3月▲8、6月▲34、9月▲27。
「大企業・非製造業」は、2019年9月+21、12月+20、2020年3月+8、6月▲17、9月▲14。
「中小企業・製造業」は、2019年9月▲4、12月▲9、2020年3月▲15、6月▲45、9月▲47。
「中小企業・非製造業」は、2019年9月+10、12月+7、2020年3月▲1、6月▲26、▲33。
生産
○ 輸出の持ち直しの動きを受けて、6月の製造業の生産は増加した。
・7、8月の予測調査においても持ち直しの動きが続く見通しである。非製造業の生産も、国内の経済活動が引き上げられるにつれて、6月は増加した。
・鉱工業生産指数は前月比で、5月▲8.9%、6月+1.9%、7月(予想)+11.3%、8月(予想)3.4%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3月▲10.0%、4月+4.1%、5月▲11.8%、6月+10.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、3月▲3.1%、4月▲2.7%、5月▲9.2%、6月+0.6%。
・輸送機械は前月比で、3月▲4.3%、4月▲34.8%、5月▲20.7%、6月+24.1%。
外需
○ 輸出は、主要貿易相手国の経済活動再開が進む中で、持ち直しの動きがみられる。
・品目別輸出では、主要国における日本車販売台数が復調傾向にあることから、アメリカ向けを中心に、自動車関連財が全体を牽引した。
○ 輸入は、このところ下げ止まっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は3か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、4月▲6.3、5月+7.6、6月+23.3、7月+2.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、4月▲2.2、5月+19.9、6月+7.5、7月▲7.0。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は厳しい状況にあるが、このところ持ち直している。
・2020年4-6月期の実質GDP成長率(前年比)は+3.2%となった。
・生産は、持ち直している。
・輸出は、持ち直しの動きが見られる。
・消費は、大幅な減少からは持ち直している。
・消費者物価上昇率は、おおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。
〇 韓国は、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。
〇 台湾では、景気は下げ止まっている。
〇 タイでは、景気は依然として厳しい状況にある。
〇 インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。
〇 インドでは、景気は極めて厳しい状況にある。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。
・2020年4-6月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率▲32.9%。
○ 雇用者数は増加に転じており、失業率は低下している。
・7月の失業率は10.2%となった。
○ 生産は持ち直しの動きがみられる。
○ 設備投資は大幅に減少している。
○ 景況指数は、製造業・非製造業ともに持ち直しの動きがみられる。
○ 財輸出は持ち直しの動きがみられる。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。
・2020年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲40.3%
(イギリスは▲59.8%、ドイツは▲33.5%)。
○ 自動車販売台数は、大幅な下落が続いている。
・7月の自動車登録台数は前年同月比で、ユーロ圏▲50.9%(6月)、ドイツ▲29.0%、イギリス▲39.7%。
○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに持ち直しの動きがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏では上昇しており、イギリスでは高まりがみられる
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低下しており、イギリスはおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.3%(7月)、イギリス+1.8%(7月)。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに持ち直しの兆しがみられる。