月例経済報告(R2.10.23) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動の レベルを段階的に引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただし、 国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
|
世界経済
○IMFの見通し(10月時点)では、2020年の世界の実質GDP成長率は、6月時点から上方修正されている。
ただし、2021年は、感染症の影響が長引き、回復がやや弱まる見通しである。
○中国の2020年第3四半期の実質GDP成長率は前年比+4.9%となり、景気は持ち直している。
○アメリカについては、財消費は感染症拡大前の水準を超えたが、サービス消費は以前の水準まで戻していない。
欧州についても、財の動きを小売売上でみると以前の水準を超えたものの、サービス産業の活動は回復途上にある。
個人消費
○ 個人消費は、持ち直している。
・週当たり消費額は、9月以降、過去3年の水準を回復して推移している。家電販売額は消費税率引上げの影響を除くために2018年対比でみるとプラスで
推移した。足踏み感のあったサービス支出は、4連休のあった9月後半に前年比でマイナス幅が縮小し、10月に入っても宿泊施設稼働率は緩やかに
上昇した。
・9月末調査の街角景気(家計動向関連)は、改善の方向を示す現状判断・先行き判断ともに前月より上昇した。
景気の水準を示すDIは依然として低いが、やや上向きとなった。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、5月▲2.0%、6月+10.1%、7月▲0.9%、8月+0.8%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、5月+2.4%、6月4.4%、7月+1.1%、8月▲0.2%、9月+3.4%。
・8月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.2%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月+1.0%、6月▲2.4%、7月+4.8%、8月▲1.0%。
・持家着工数は前月比で、5月▲2.8%、6月+4.9%、7月+0.5%、8月+1.2%。
・貸家着工数は前月比で、5月+9.9%、6月▲8.1%、7月+8.2%、8月+0.2%。
・分譲着工数は前月比で、5月▲4.6%、6月▲3.2%、7月+5.8%、8月▲5.6%。
○ 公共投資は、堅調に推移している。
・請負金額は前月比で、5月▲0.7%(出来高+2.3%)、6月+4.2%(出来高+0.3%)、7月▲2.1%(出来高±0.0%)、8月+16.9%(出来高▲0.7%)、9月▲9.9%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、雇用者数等の動きに底堅さがみられる。
・8月の休業者数は3月の水準を下回り、概ね平年の水準に接近した。また、4月に非労働力化した人々が労働力に戻る動きがみられ、
一部は失業者の増加につながっているものの、就業者数の増加がこれを上回るなど、底堅い動きもみられる。
・残業時間は増加しており、現金給与総額も前年比マイナス幅は徐々に縮小している。日次有効求人数も、前年比マイナス幅は徐々に縮小
しており、下げ止まっている。
・有効求人倍率は、4月1.32、5月1.20、6月1.11、7月1.08、8月1.04(正社員は0.78)となった。
・完全失業率は、4月2.6%、5月2.9%、6月2.8%、7月2.9%、8月3%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、上昇テンポが鈍化した。
消費者物価は、横ばいとなっている。(9月総合前月比▲0.2%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、大幅な減少が続いている。
・2020年度の企業収益(経常利益)は、減少する見込みとなっている。
製造業では「輸送用機械」、非製造業では「宿泊・飲食サービス」、「運輸・郵便」などの減益率が大きい。
・企業の景況感は、改善の動きがみられるものの、水準は低く厳しさが残る。倒産件数はおおむね横ばいで推移しているが、今後の動向を引き続き注視して
いく必要がある。
○ 設備投資は、弱い動きとなっている
・設備投資4-6月期の動向は、前期比全産業で▲6.3%。
・設備の稼働水準が依然として低い中で、製造業、非製造業ともに設備過剰感が高止まっており、設備投資は弱い動きとなっている。
・2020年度の設備投資計画も全体は慎重な見通しとなっており、9月調査の結果は6月から下方修正した。
ただし、ソフトウェア投資は6月から上方修正されており、堅調となっている。
○ 業況判断は、厳しさは残るものの、改善の動きがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2019年12月+0、2020年3月▲8、6月▲34、9月▲27、12月▲17。
「大企業・非製造業」は、2019年12月+20、2020年3月+8、6月▲17、9月▲12、12月▲11。
「中小企業・製造業」は、2019年12月▲9、2020年3月▲15、6月▲45、9月▲44、12月▲38。
「中小企業・非製造業」は、2019年12月+7、2020年3月▲1、6月▲26、▲22、12月▲27。
生産
○ 生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出の復調を受け、輸送機械のほか、電子部品・デバイスや素材業種などで持ち直しの動きがみられる。9・10月の予測調査でも増加が続く見通しである。
・鉱工業生産指数は前月比で、7月+8.7%、8月1.0%、9月(予想)+5.7%、10月(予想)+2.9%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、5月▲11.8%、6月+10.2%、7月▲4.6%、8月▲9.9%。
・電子部品・デバイスは前月比で、5月▲9.2%、6月+0.6%、7月+4.6%、8月+3.9%。
・輸送機械は前月比で、5月▲20.7%、6月+24.1%、7月+30.3%、8月+8.6%。
外需
○ 輸出は、持ち直している。
・自動車関連財に加え、中国を筆頭にアジア向けが多くを占めるIC(集積回路)や半導体等製造装置といった情報関連財もこのところ増加傾向となっている。
○ 輸入は、このところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は5か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、6月+23.3、7月+2.3、8月+2.8、9月+5.4。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、6月+7.5、7月▲8.0、8月+6.4、9月+5.9。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は持ち直している。
・2020年7-9月期の実質GDP成長率(前年比)は+4.9%となった。
・生産は、このところ伸びが上昇している。
・輸出は、緩やかに持ち直している。
・消費は、大幅な減少からは持ち直している。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価上昇率は、低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きがみられる。
〇 韓国・タイは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。
〇 台湾では、景気は持ち直している。
〇 タイでは、景気は依然として厳しい状況にある。
〇 インドネシアでは、景気は厳しい状況にある。
〇 インドでは、景気は極めて厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
・2020年4-6月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率▲31.4%。
○ 雇用者数は増加に転じており、失業率は低下している。
・9月の失業率は7.9%となった。
○ 生産は持ち直している。
○ 設備投資は持ち直しの兆しが見られる。
○ 財輸出は持ち直しの動きがみられる。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
・2020年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲39.5%
(イギリスは▲58.7%、ドイツは▲33.5%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏、イギリスともに持ち直している。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低下しており、イギリスはおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+0.4%(9月)、イギリス+1.2%(9月)。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともに持ち直しの動きがみられる。
◎イギリス・EU間の通商交渉
(状況)
・英国が交渉期限とした10月15日までに合意に至らず
・欧州理事会は数週間の協議継続を決定(19日の週から協議再開)
(争点)
・英国・北アイルランド間の税関検査の実施有無
・労働・国家補助金等に関するEU規制との調和の確保(英国独自の決定権の有無)
・英国水域における漁業権(合意済みの論点)
・関税・数量割当てのない自由貿易の継続
(重要日程)
・12/31 移行期間終了