月例経済報告(R3.4.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さが みられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じる中で、各種政策の効果 や海外経済の改善も あって、持ち直しの動きが続くことが期待され るが、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する 必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要が ある。
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世界の感染状況と経済
○ 海外の感染状況をみると、アメリカでは、ワクチン接種が進むなか、新規感染者数は増加が抑えられているが、世界全体の新規感染者数は増加
している。
○ 世界各国の21年以降の成長率見通しは、ワクチン効果や経済対策の成立等を受け上方改定された。各国のGDPギャップは、21~22年にかけて
マイナス幅が縮小もしくはプラスに転じる見込みである。
【IMF 2021年主要国の実質GDP成長率見通し】
世界6.0%(+0.5%)、日本3.3%(+0.2%)、アメリカ6.4%(+1.3%)、ユーロ圏4.4%(+0.2%)、中国8.4%(+0.3%)
○ 貿易の見通しをみると、21年以降は中国やアメリカをはじめ各国で輸出入ともに増加の見込みとなった。
・アメリカでは、経済対策の効果により3月の小売は大幅に増加、雇用者数も増加幅が拡大した 。
個人消費の動向
○ 個人消費は、このところ弱含んでいる。
・3月のカード支出に基づく消費動向をみると、ネット消費(EC)は好調となっている。財は底堅さが続く一方、サービス支出は、感染症の影響により弱い動き
となっている。
・販売側データをみると、家電は前年を上回って推移している。外食は低水準で推移、家計側のデータをみると、外食や旅行に支出した人の割合は低い。
・週当たり消費額は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の実施もあり、昨年の緊急事態宣言時期ほどではないものの、低水準となっている。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、10月+2.0%、11月▲0.2%、12月▲0.4%、1月▲3.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、11月+0.1%、12月▲1.5%、1月▲2.1%、2月+4.0%、3月+2.2%。
・2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.7%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月+0.7%、12月▲4.2%、1月+2.2%、2月+0.8%。
・持家着工数は前月比で、11月+4.3%、12月▲1.1%、1月+2.4%、2月+1.5%。
・貸家着工数は前月比で、11月+4.2%、12月▲3.6%、1月▲5.8%、2月+13.2%。
・分譲着工数は前月比で、11月▲6.3%、12月▲8.8%、1月+15.2%、2月▲13.9%。
○ 公共投資は、高水準で底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、11月▲3.9%(出来高+0.3%)、12月▲9.7%(出来高+0.9%)、1月+17.4%(出来高▲1.6%)、2月▲12.3%(出来高▲0.9%)、
3月+10.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっている中で、雇用者数等の動きに底堅さも見られる。
・2月の雇用者数は、昨年6月から78万人増加している一方、昨年3月に比べると、未だ46万人少ない状況となっている。
完全失業者数は203万人と横ばいとなった。
・2月の賃金動向は、ボーナスを含む特別給与のマイナス寄与が大幅に縮小し、持ち直しの動きがみられる。
ただし、総実労働時間をみると、飲食サービス等は大きく減少しており、業種間の差が大きい。
・3月の民間転職市場や足下のハローワーク求人には、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 倒産件数は、資金繰り支援もあり、前年に比べて減少が続いている。
・有効求人倍率は、10月1.04、11月1.05、12月1.05、1月1.10、2月1.09(正社員は0.82)となった。
・完全失業率は、10月3.1%、11月3.0%、12月3.0、1月2.9%、2月2.9%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、緩やかに上昇している。
消費者物価は、横ばいとなっている。(2月総合前月比+0.1%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業では弱さがみられるものの、総じてみれば持ち直している。
○ 設備投資は、機械投資を中心に、このところ持ち直しの動きがみられる。ただし、構築物投資は、概ね横ばいとなった。
・生産設備の過剰感(日銀短観3月調査)は、製造業を中心に依然残るものの、改善傾向にある。
・2020年度の設備投資は、前年度比減少となる見込みだが、2021年度は増加が見込まれており、特にソフトウェア投資は高い伸びの見通しとなっている。
研究開発投資も増加の見通しである。
○ 業況判断は、厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年6月▲34、9月▲27、12月▲10、2021年3月+5、6月+4。
「大企業・非製造業」は2020年6月▲17、9月▲12、12月▲5、2021年3月▲1、6月▲1。
「中小企業・製造業」は、2020年6月▲45、9月▲44、12月▲27、2021年3月▲13、6月▲12。
「中小企業・非製造業」は、2020年6月▲26、▲22、12月▲12、2021年3月▲11、6月▲16。
生産
○ 生産は、持ち直している。
・製造業の生産は、5G関連などで需要が旺盛な電子部品・デバイス等を中心に持ち直している。
ただし、先行きについては、世界的に品薄感の強い半導体製品の供給制約の影響に留意が必要である。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月▲0.2%、1月+3.1%、2月▲1.3%、3月(予想)▲1.9%、4月(予想)+9.3%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11月+6.6%、12月▲0.7%、1月+8.1%、2月+4.1%。
・電子部品・デバイスは前月比で、11月+2.6%、12月+0.7%、1月+10.3%、2月▲2.3%。
・輸送機械は前月比で、11月▲3.1%、12月▲2.5%、1月+0.5%、2月▲3.3%。
外需
○ 輸出は、増加テンポが緩やかになっている。
・輸出は、アジア向けのウェイトが高い情報関連財は増加傾向にあり、アジア向けを中心に持ち直しの動きがみられる。
○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 企業の景況感は、依然として「悪い」という回答が「良い」を上回っているものの、持ち直しの動きがみられる。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、12月▲9.5、1月▲3.1、2月+10.1、3月+7.7。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりで下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、12月+1.1、1月+3.8、2月+11.4、3月▲1.5。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は緩やかに回復している。
・2021年1-3月期の実質GDP成長率(前年比)は+18.3%となった。
・生産は、このところ伸びがやや低下している。
・輸出・輸入ともに増加している(21年3月輸出+30.6%、輸入+38.1%)。
・消費は、緩やかに持ち直している。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価はやや高まっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直している。
○ 韓国・インドでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直している。
○ タイ・インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。
○ 台湾では、景気は緩やかに回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、着実に持ち直している。
・2020年10-12月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+4.3%。
○ 雇用者数は増加し、失業率はやや低下となった。
・3月の失業率は6.0%となった。
○ 生産は足踏みが見られる。
○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数も持ち直し、3月は大幅増加した。
○ 設備投資は持ち直している。
○ 財輸出は持ち直している。
<バイデン政権による経済政策>
①米国救済計画 :21年3月11日 法成立【総額:約1.9兆ドル(約200兆円、対GDP比8.9%)】
[内容]:現金給付(1人当たり最大1,400ドル)、失業手当の拡充措置の延長、児童税額控除の拡大 等
②米国雇用計画 :21年3月31日 公表【総額:約2兆ドル(約220兆円、毎年GDP比1%を投資)】
[内容]:インフラ投資、研究開発投資 等
※法人税率引上げ等の税制計画も併せて公表
◎ 歳出<8年間で約2兆ドル(毎年GDP比1%を投資)>
(主な内容)
・世界クラスの交通インフラの構築(6,710億ドル)
・水道、電力、ブロードバンドの再建(3,110億ドル)
・200万以上の住宅・商業施設の新改築、教育施設の最新化等(3,780億ドル超)
・介護従事者の雇用創出等を通じたケアエコノミーの基盤強化(4,000億ドル)
・R&D投資、製造業 ・中小企業再生、人材育成(5,800億ドル)等
歳入<15年間で2兆ドル以上>
(主な内容)
・法人税率を 21%から28%に引上げ
・アメリカの多国籍企業の海外収益への課税強化(最低税率を10.5%から21%に引上げ)
・化石燃料産業への優遇措置の廃止と環境汚染企業に対する環境改善費用の負担 等
③米国家族計画 ※詳細未公表
[内容]:育児、医療、教育等の分野における投資計画
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリス・ドイツともに、景気は弱い動きとなっている。
・2020年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲2.7%
(イギリスは+5.2%、ドイツは+1.4%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は、経済活動の抑制により、弱い動きとなっている。
イギリスは、弱い動きとなっているが、一部に持ち直しの動きがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏、イギリスともにおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率(コア)は前年比で、ユーロ圏+1.0%(3月)、イギリス+0.9%(2月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスは持ち直しの動きが見られる。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに持ち直している。