月例経済報告(R3.5.26) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが 増している。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じる中で、各種政策の効果 や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される が、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要 がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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日本のGDP・感染状況
○ 1-3月期の実質GDP成長率は、前期比▲1.3%と3期ぶりのマイナスとなった。
・緊急事態宣言の影響を受けた個人消費は、財は底堅いものの、サービスが弱いことから、マイナスに転じた。
・輸出は海外経済の回復を背景に増加基調となった。
・設備投資は前期比マイナスであるが、日銀短観の2021年度設備投資計画(3月調査)が前年度比プラス、特にソフトウェア投資は高い伸びの見通しとなる
など、日本経済は潜在的な回復力があると評価されている。
○ 変異株の感染者の増加等を踏まえ、4月に入り、大都市部を中心に、再び緊急事態宣言等を発出した。
ただし、10万人当たりの新規感染者数や死亡者数は、国際的にみて少ない状況が続いている。
個人消費の動向
○ 個人消費は、サービス支出を中心に弱い動きとなっている。
今後、ワクチン接種の進展・感染拡大の収束により外出・移動が正常化すれば、消費回復が期待できる。
・財支出の底堅さとサービス支出の弱さは4月も続いており、例えば新車販売台数はおおむね横ばいで推移している。
旅行関連の宿泊施設の稼働率は、振れはあるものの低下傾向となっている。
・4月後半から5月中旬にかけて、週当たり消費額は、2017-19年の平均と比べたマイナス幅が拡大傾向となった。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、12月▲0.4%、1月▲2.3%、2月+0.7%、3月+1.8%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、12月▲1.5%、1月▲2.1%、2月+4.0%、3月+2.2%、4月▲1.4%。
・3月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設はおおむね横ばいとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、12月▲4.2%、1月+2.2%、2月+0.8%、3月+9.0%。
・持家着工数は前月比で、12月▲1.1%、1月+2.4%、2月+1.5%、3月▲0.4%。
・貸家着工数は前月比で、12月▲3.6%、1月▲5.8%、2月+13.2%、3月+8.3%。
・分譲着工数は前月比で、12月▲8.8%、1月+15.2%、2月▲13.9%、3月+22.9%。
○ 公共投資は、高水準で底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、12月▲9.7%(出来高+0.9%)、1月+17.4%(出来高▲1.6%)、2月▲12.3%(出来高▲0.9%)、3月+10.0%(出来高+2.3%)、4月▲8.4%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっている中で、雇用者数等の動きに底堅さも見られる。
・3月の雇用者数は、昨年6月から80万人増加したが、1年前に比べると未だ44万人少ない。
失業率は雇用調整助成金等により上昇が抑制されてきた中、3月は2.6%に低下。
有効求人倍率は持ち直しの動きも、1年前に比べると低い。
・一方で、実質雇用者報酬は、1-3月期は前期比2.2%増と、3四半期連続の増加となった。
・連合第5回回答集計の賃上げ率は、厳しい中にあって、全体は1.81%、中小企業は1.77%と昨年(1.93%、1.91%)を下回るものの、
いずれも2012~13年を上回っている。
・4月の民間転職市場や足下のハローワーク求人には、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 倒産件数は、資金繰り支援もあり、前年に比べて減少が続いている。
・有効求人倍率は、10月1.04、11月1.05、12月1.05、1月1.10、2月1.09、3月1.10(正社員は0.84)となった。
・完全失業率は、11月3.0%、12月3.0、1月2.9%、2月2.9%、3月2.6%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、緩やかに上昇している。
消費者物価は、横ばいとなっている。(3月総合前月比+0.1%、4月総合前月比▲0.7%)。
・4月の消費者物価は、携帯電話の低料金プランの提供開始により下落となった。ただし、これは需給が緩和して物価が持続的に低下するデフレ現象とは
異なる。これを除外して基調をみると、消費者物価(コアコア)は横ばいとなっている。また、低料金プランに契約変更した家計の実質可処分所得は増加する
と考えられ、今後、消費の押上げを期待できる。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業では弱さがみられるものの、総じてみれば持ち直している。
○ 設備投資は、持ち直している。
○ 業況判断は、厳しさは残る中で、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・1-3月期の上場企業決算の経常利益は、製造業に牽引され、前年比で大幅に増加した。
・非製造業は、陸運業等で弱さが続いているものの、製造業は自動車生産の回復等から増加し、総じてみれば持ち直しとなっている。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年6月▲34、9月▲27、12月▲10、2021年3月+5、6月+4。
「大企業・非製造業」は2020年6月▲17、9月▲12、12月▲5、2021年3月▲1、6月▲1。
「中小企業・製造業」は、2020年6月▲45、9月▲44、12月▲27、2021年3月▲13、6月▲12。
「中小企業・非製造業」は、2020年6月▲26、▲22、12月▲12、2021年3月▲11、6月▲16。
生産
○ 生産は、持ち直している。
・製造業の生産は、5G関連などで需要が旺盛な電子部品・デバイスや生産用機械を中心に持ち直しの動きがみられる。マシニングセンタ等の工作機械
の受注をみると、内外需共に増加が続いており、今後の生産増に期待できる。
・自動車生産については、世界的に品薄感の強い半導体製品の供給制約の影響に留意が必要である。
・鉱工業生産指数は前月比で、1月+3.1%、2月▲1.3%、3月+1.7%、4月(予想)+8.4%、5月(予想▲4.3%)。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、12月▲0.7%、1月+8.1%、2月+4.1%、3月▲2.8%。
・電子部品・デバイスは前月比で、12月+0.7%、1月+10.3%、2月▲2.3%、3月▲1.1%。
・輸送機械は前月比で、12月▲2.5%、1月+0.5%、2月▲3.3%、3月+8.1%。
外需
○ 輸出は、緩やかな増加が続いている。
・海外経済の回復を背景に、輸出が緩やかな増加が続く。
品目別にみると、情報関連財や資本財は増加傾向となっている。アメリカや中国の回復により増加が続くことが期待される。
○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、黒字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 緊急事態宣言が発出されたこともあり、4月の景気ウォッチャー調査の現状判断・先行き判断ともに低下した。
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲3.1、2月+10.1、3月+7.7、4月▲9.9。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月+3.8、2月+11.4、3月▲1.5、4月▲8.1。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は緩やかに回復している。
・総人口は当面緩やかな増加が続く見込みだが、生産年齢人口は2015年の10億人超から既に減少しており、国連の推計では2050年に8.4億人となる
見込み。今後成長の下押し要因となることに留意が必要。
・21年1-3月期の実質GDP成長率は18.3%増(前々年比では10.3%増)と高い伸びとなった。
・消費は緩やかに持ち直している。
・生産は、このところ伸びがやや低下している。
・輸出・輸入ともに増加している(21年4月前年比で輸出+32.3%、輸入+43.1%)。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価はやや高まっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は持ち直している。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は厳しい状況にあるなかで、感染の再拡大により、持ち直しに足踏みがみられる。
ただし、足下の感染の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。
○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、着実に持ち直している。
・実質GDPは他の主要先進国に先駆けて感染症前の水準を回復する見込みとなっている。
・景気の持ち直しを背景に、消費者物価や長期金利が上昇した。
・雇用面では、感染症の影響の長期化等により、就業者数の回復が遅れている点に留意が必要である。
・家計は、現金給付や失業手当の上乗せ措置等により下支えされている。
・2021年1-3月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+6.4%。
○ 雇用者数は増加し、失業率はやや低下となった。
・4月の失業率は6.1%となった。
○ 生産は足踏みが見られる。
○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数も増加傾向にある。
○ 設備投資は緩やかに増加した。
○ 財輸出は持ち直している。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツでは、景気は弱い動きとなっている。
イギリスでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
・21年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲2.5%(イギリスは▲5.9%、ドイツは▲6.6%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は、弱い動きとなっているが、一部に持ち直しの動きがみられる。
イギリスは、持ち直しの動きがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスは低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低下、イギリスはおおむね横ばいとなった。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+0.8%(4月)、イギリス+1.2%(4月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスは持ち直しの動きが見られる。
〇 生産は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっており、イギリスは持ち直している。