月例経済報告

 

月例経済報告(R3.6.24)

基調判断

〈現状〉

・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい

状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが

増している。

〈先行き〉              

・先行きについては、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果

 や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待され

 る。ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要

 がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

 

 

世界経済

 ○ 世界経済は持ち直しており、OECDによれば世界の実質GDPは21年半ばまでに感染症前の水準を超える見通しとなっている。

    ワクチン接種が進展するアメリカや英国では、財消費に加え、サービス消費についても回復の傾向がみられている。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、サービス支出を中心に弱い動きとなっている。

・5月のカード支出に基づく消費動向をみると、ネット消費(EC)は好調である一方、サービス支出を中心に弱い動きとなっている。販売側データをみると、

 スーパー販売額は巣ごもり需要などもあり底堅い一方、外食は、特にパブ・居酒屋は低水準となっている。

・5月後半から6月中旬にかけて、週当たり消費額は、2017-19年の幅を下回って推移している。

・消費総合指数(実質)は、前期比で、1月▲2.3%2+0.9%3+1.0%4月▲0.8%

・消費者態度指数(DI)は前月差で、1月▲2.1%2+4.0%3+2.2%4月▲1.4%5月▲0.6%。 

4月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.2%となった。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設は、賃貸マンションの増加に牽引され、このところ底堅い動きとなっている。

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1+2.2%2+0.8%3+9.0%4+0.3%

・持家着工数は前月比で、1+2.4%2+1.5%3月▲0.4%4月▲1.1%

・貸家着工数は前月比で、1月▲5.8%2+13.2%3+8.3%4+3.3%

・分譲着工数は前月比で、1+15.2%2月▲13.9%3+22.9%4月▲1.7%

   公共投資は、高水準で底堅く推移している。

・請負金額は前月比で、1+17.4%(出来高▲1.6%)、2月▲12.3%(出来高▲0.6%)、3+10.0%(出来高+1.4%)、4月▲8.4%(出来高▲2.1%)、5月+15.0%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、雇用者数等の動きに底堅さもみられる。

  ・失業率は雇用調整助成金等により上昇が抑制されており、4月は2.8%。雇用者数は、均してみると、昨年6月以降持ち直しが続いている。

  また、女性の非正規雇用者は、2019年対比で58万人減少する一方で、正規雇用者は同72万人増加し、同一労働同一賃金導入に対応した正規化

   の動きが続く。

    ・4月の賃金動向は、所定内給与等の増加により、持ち直しの動きがみられる。連合第6回回答集計の賃上げ率は、厳しい中にあって、全体は1.79%、中小

      企業は1.74%と201213年の水準を上回っている。夏のボーナスは、前年を下回る見込みであるが、201213年の水準は上回っている。

  ・足下のハローワーク求人には、持ち直しの動きがみられるものの、その動きは緩やかなテンポとなっている。

  ・有効求人倍率は、111.05121.0511.1021.0931.1041.09(正社員は0.88)となった。

   ・完全失業率は、113.0%123.012.9%22.9%32.6%42.8%となった。

   

物価の動向  

  国内企業物価は、上昇している。

消費者物価は、横ばいとなっている。(4月総合前月比▲0.7%5月総合前月比+0.3%)。

・石油・石炭製品や非鉄金属などの価格上昇を受け、5月の国内企業物価は上昇した(前月比+0.7%)。  

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業では弱さがみられるものの、総じてみれば持ち直している。

  ・輸出・生産の増加を受けて、1-3月期の企業の経常利益は、製造業を中心に増加した。倒産件数は、資金繰り支援もあり、低水準となっている。

○ 設備投資は、持ち直している。

・企業収益の持ち直しもあり、機械投資はこのところ増加、ソフトウェア投資は横ばいとなっている。

2021年度の設備投資は、法人企業景気予測調査(4-6月期調査)をみると、前年度比7.4%増の見通しと高い伸びを維持している。その内訳をみると、

      ソフトウェア投資の大幅増加が見込まれている。

○ 業況判断は、厳しさは残る中で、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

 ・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

    「大企業・製造業」は、20206月▲349月▲2712月▲1020213+56+4

    「大企業・非製造業」は20206月▲179月▲1212月▲520213月▲16月▲1

    「中小企業・製造業」は、20206月▲459月▲4412月▲2720213月▲136月▲12

    「中小企業・非製造業」は、20206月▲26、▲2212月▲1220213月▲116月▲16

 

生産

 生産は、持ち直している。

   ・製造業の生産は、5G関連などで需要が旺盛な電子部品・デバイスや設備投資向けの生産用機械を中心に持ち直している。世界の半導体の出荷見通し

     は、2021年が上方修正され、2022年も増加が見込まれており、半導体製品に対する強い需要は当面続く見込みである。

    ・鉱工業生産指数は前月比で、2月▲1.3%3+1.7%4+2.9%5月(予想)▲1.7%6月(予想)+5.0%

      ・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1+8.1%2+4.1%3月▲2.8%4+7.7%   

      ・電子部品・デバイスは前月比で、1+10.3%2月▲2.3%3月▲1.1%4+5.5%

      ・輸送機械は前月比で、1+0.5%2月▲3.3%3+8.1%4+0.2%

 

外需

 ○ 輸出は、緩やかな増加が続いている。

・海外経済の回復を背景に、輸出は緩やかな増加が続いている。品目別にみると、自動車関連財は横ばいだが、情報関連財や資本財が牽引している。

  ○ 輸入は、持ち直しの動きがみられる。

 ○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 5月の景気ウォッチャー調査の現状及び水準判断DIは、緊急事態宣言の影響もあり、小幅の低下となったが、先行き判断DIは、ワクチン接種の

  進展への期待感等もあり、3か月ぶりの上昇となった。

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、2+10.13+7.74月▲9.95月▲1.0

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに上昇した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、2+11.43月▲1.54月▲8.15+5.9

 

アジア経済の動向  

〇 中国では、景気は緩やかに回復している。

   ・21年1-3月期の実質GDP成長率は18.3%増(前々年比では10.3%増)と高い伸びとなった。

・消費は緩やかに持ち直している。

・生産は、このところ伸びがやや低下している。

・輸出は着実に増加している。

・固定資産投資は持ち直している。

・消費者物価はやや高まっている。

・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。

○ 韓国では、景気は持ち直している。

○ インドでは、景気は厳しい状況にあるなかで、感染の再拡大により、持ち直しに足踏みがみられる。

  ただし、足下の感染の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある。

○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、下げ止まっている。

○ 台湾では、景気は回復している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、着実に持ち直している。

・アメリカでは、エネルギー価格の上昇に加え、景気の着実な持ち直しに伴い、その他の財・サービス価格も上昇しており、消費者物価の上昇率が高まっている。

20211-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+6.4%

○ 雇用者数は増加し、失業率はやや低下となった。

 ・5月の失業率は5.8%となった。

○ 生産は足踏みが見られる。

○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数も増加傾向にある。

○ 設備投資は緩やかに増加した。

○ 財輸出は持ち直している。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・ドイツでは、景気は弱い動きとなっている。

  イギリスは、依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。

   ・211-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲1.3%

   (イギリスは▲5.9%、ドイツは▲7.0%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏は、弱い動きとなっているが、一部に持ち直しの動きがみられる。

   イギリスは、持ち直しの動きがみられる。

○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスは低下している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低下、イギリスはこのところ上昇となった。

   ・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+0.9%5月)、イギリス+1.8%4月)。

○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスは持ち直しの動きが見られる。

○ 生産は、ユーロ圏はこのところ横ばいとなっており、イギリスは持ち直している。