月例経済報告(R3.8.26) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが 増している。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じ、ワクチン接種を促進 するなかで、各種政策の効果や 海外経済の改善もあって、持ち直し の動きが続くことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクの 高まりに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の 影響を注視する必要がある。
|
GDP・設備投資計画
○ 本年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.3%と2期ぶりのプラス。海外経済の改善の下、輸出は4期連続の増加となった。
また、個人消費も、緊急事態宣言等を発出し、人為的に活動を抑制した中で、長引く自粛の下で旺盛な消費意欲もみられ、2期ぶりの増加となった。
○ 4-6月期は設備投資も増加した。先行きについても、2021年度計画は、設備投資全体、特にソフトウェア投資について大幅増が見込まれており、
グリーンやデジタルに関する前向きな投資が計画されている。こうした動きが今後も経済のけん引役となることが期待される。
世界経済
○ 欧米の実質GDPは、ワクチン接種の進展などを背景に、21年4-6月期にプラス成長となり、アメリカではコロナ前の水準まで回復した。
世界経済は持ち直している。ただし、世界的な半導体不足に加え、感染再拡大、アメリカの物価動向、金融資本市場の変動等を注視する必要が
ある。
○ 先進国と比べてワクチン接種が遅れているアジア諸国においても、感染が再拡大した。経済活動の制限措置が実施され、製造業景況感が急低下
する国もみられる。
個人消費の動向
○ 個人消費は、サービス支出を中心に弱い動きとなっている。
・4-6月期の個人消費は、財が底堅い動きを続ける中、サービスが低水準ながらも前期から増加した。
世帯主年齢別に4-6月期の世帯支出をみると、コロナ前(2019年)に比べ、30代以下が世帯主の家計ほど相対的に消費を行っており、60代以上が世帯主の
家計ほど相対的に消費を抑制している。
・7月以降の週次消費額をみると、7月下旬の4連休を含む週では過去3年並みとなったが、8月は、通常であればお盆時期で消費が盛り上がるところ、今年は
例年に比べ低い水準で推移している。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、3月+1.9%、4月+0.8%、5月▲2.8%、6月+2.5%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、3月+2.2%、4月▲1.4%、5月▲0.6%、6月+3.3%、7月+0.1%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、3月+9.0%、4月+0.3%、5月▲0.9%、6月▲1.0%。
・持家着工数は前月比で、3月▲0.4%、4月▲1.1%、5月+1.4%、6月▲0.2%。
・貸家着工数は前月比で、3月+8.3%、4月+3.3%、5月▲5.2%、6月+4.8%。
・分譲着工数は前月比で、3月+22.9%、4月▲1.7%、5月+0.3%、6月▲7.9%。
○ 公共投資は、高水準で底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、3月+10.0%(出来高+1.4%)、4月▲8.4%(出来高▲2.1%)、5月+15.0%(出来高▲1.4%)、6月▲1.6%(出来高+1.2%)、7月▲11.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、求人等の動きに底堅さもみられる。
・6月の雇用状況は、弱さが続く中でも、雇用者数は前月から20万人増加、失業率は前月差0.1ポイント低下するなど、生産増と連動した動きと
なった。7月以降の感染拡大の影響には注意が必要だが、ハローワークによるネット経由の日次求人件数は、2019年同月比で水準は低い
ものの、持ち直しの動きがみられる。
・6月の賃金は、ボーナスが減少したものの、所定内・所定外給与が下支えし、前年比プラスを維持した。
なお、パートタイム労働者の特別給与(ボーナス)は同一労働同一賃金の適用で厳しい中でも前年比増となった。
・携帯電話通信料下落等の特殊要因を除いた消費者物価の基調をみると、このところ底堅さがみられる。
・有効求人倍率は、2月1.09、3月1.10、4月1.09、5月1.09、6月1.13(正社員は0.94)となった。
・完全失業率は、2月2.9%、3月2.6%、4月2.8%、5月3.0%、6月2.9%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、上昇している。
消費者物価は、このところ底堅さがみられる。(7月総合前月比+0.1%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
・4-6月期の上場企業の経常利益は、前年の反動もあり、製造業・非製造業ともに前年比大幅増となった。非製造業では、運輸業の利益がコロナ前よりも引き続き抑制されているなど回復にばらつきがみられる。
・今年に入り企業物価は上昇した。川上の「素原材料」は国際市況を受けて大きく上昇しているが、川下の「最終財」への価格転嫁は限定的である。価格転嫁の動向によっては、企業収益にマイナスの影響が生じ得る。
・倒産件数は、資金繰り支援等もあり低水準が続く。ただし、企業債務の水準は高く、経済の活動レベルを高めていくことが必要である。
○ 設備投資は、持ち直している。
○ 業況判断は、一部に厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年9月▲27、12月▲10、2021年3月+5、6月+14、9月+13。
「大企業・非製造業」は2020年9月▲12、12月▲5、2021年3月▲1、6月+1、9月+3。
「中小企業・製造業」は、2020年9月▲44、12月▲27、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲6。
「中小企業・非製造業」は、2020年9月▲22、12月▲12、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲12。
生産
○ 生産は、持ち直している。
・海外経済の回復を背景に、輸出は緩やかな増加が続く。その下で、製造業の生産も、5G関連等で需要が旺盛な電子部品・デバイスや設備投資向けの生産用
機械を中心に持ち直している。
・ただし、東南アジアにおける感染拡大に伴う部品供給不足が生じており、一部自動車メーカーは8月下旬~9月に国内での減産を発表。国際的なサプライ
チェーンを通じた感染症の影響には注意が必要である。
★ 東南アジアにおける感染拡大に伴う部品供給不足
感染が拡大している東南アジアにおいて、ロックダウン等の制 限により、現地の生産活動が停滞している。
これによる同地域からの部品供給不足のため、一部国内自動車メーカーは8月下旬~9月に国内での減産を実施。
・鉱工業生産指数は前月比で、4月+2.9%、5月▲6.5%、6月+6.5%、7月(予想)▲1.1%、8月(予想)+1.7%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、3月▲2.8%、4月+7.7%、5月▲6.0%、6月+10.3%。
・電子部品・デバイスは前月比で、3月▲1.1%、4月+5.5%、5月▲0.2%、6月+3.9%。
・輸送機械は前月比で、3月+8.1%、4月+0.2%、5月▲16.6%、6月+17.6%。
外需
○ 輸出は、緩やかな増加が続いている。
○ 輸入は、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、4月▲9.9、5月▲1.0、6月+9.5、7月+0.8。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、3月▲1.5、4月▲8.1、5月+5.9、6月+4.8、7月▲4.0。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は緩やかに回復している。
・21年4-6月期の実質GDP成長率は7.9%増(前々年比では5.5%増)となった。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、伸びがやや低下している。
・輸出は着実に増加している。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価上昇率はこのところおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は低下した。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ タイ・インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるなかで感染の再拡大により足下で景気は下押しされている。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は依然として厳しい状況にあるが、着実に持ち直している。
・2021年4-6月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+6.5%。
○ 雇用者数は増加し、失業率は低下した。
・7月の失業率は5.4%となった。
○ 生産は持ち直した。
○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数はこのところ弱含みとなっている。
○ 設備投資は緩やかに増加した。
○ 7月の消費物価指数(コア)は前年比+4.3%となった。
○ 財輸出は持ち直している。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏は、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
イギリスは、景気は依然として厳しい状況にあるが、景気は持ち直している。
・21年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+2.0%
(イギリスは+4.8%、ドイツは+1.6%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しの動きがみられ、イギリスは持ち直している。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスは上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+0.9%(7月)、イギリス+1.7%(7月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスは持ち直している。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスはこのところ横ばいとなっている。