月例経済報告(R3.9.16) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、このところ そのテンポが弱まっている。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染拡大の防止策を講じ、ワクチン接種を促進 するなかで、各種政策の効果や 海外経済の改善もあって、持ち直し の動きが続くことが期待される。ただし、内外の感染症の動向、サプ ライチェーンを通じた影響による下振れリスクの高まりに十分注意 する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要 がある。
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四半期別GDP速報
○ 本年4-6月期の実質GDP成長率(2次速報)は、実質国内総生産は、前期比0.5%増(年率1.9%増)となった。
世界経済
○ 欧米では、ワクチン接種証明の活用など、感染拡大防止と経済活動の両立に向けた動きがみられており、今夏は、飲食・宿泊等の消費や人流の
持ち直しが継続している。
○ アジアでは、感染再拡大及びそれに伴う経済活動の抑制措置等により、製造業景況感が低下している。
○ 物価の動向をみると、経済活動の再開に加え、原材料価格の上昇や供給制約等を背景に、消費者物価の前年比は、アメリカで高止まりしている
のに加え、ユーロ圏でも上昇。引き続き注視が必要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、このところ弱い動きとなっている。
・感染再拡大を背景に、外食、旅行などのサービス消費は弱い動きとなった一方、これまで底堅く推移してきた新車・家電販売などでこのところ弱い
動きと なった。
・直近までの週次消費額は、8月以降、例年の夏季の盛り上がりはみられていない。
・景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状判断DIは、感染拡大等の影響により大幅に低下した。
消費者マインドは、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、4月+0.8%、5月▲2.8%、6月+2.5%、7月+0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、4月▲1.4%、5月▲0.6%、6月+3.3%、7月+0.1%、8月▲0.8%。
・6月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、このところ持ち直しの動きとなっている
・堅調な住宅需要に加えて、グリーン住宅ポイント制度や住宅ローン減税制度等の住宅取得支援策の下支えもあり、着工は増加した。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、4月+0.3%、5月▲0.9%、6月▲1.0%、7月+6.9%。
・持家着工数は前月比で、4月▲1.1%、5月+1.4%、6月▲0.2%、7月+8.0%。
・貸家着工数は前月比で、4月+3.3%、5月▲5.2%、6月+4.8%、7月+1.4%。
・分譲着工数は前月比で、4月▲1.7%、5月+0.3%、6月▲7.9%、7月+14.2%。
○ 公共投資は、高水準で底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、4月▲8.4%(出来高▲2.1%)、5月+15.0%(出来高▲1.4%)、6月▲1.6%(出来高+1.2%)、7月▲11.0%、8月+0.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、求人等の動きに底堅さもみられる。
・7月の雇用状況は、弱さが続く中でも、雇用者数は前月から9万人増加、失業率は2.8%と前月差で0.1ポイント低下するなど、
底堅い動きとなった。足下の感染拡大の影響には注意が必要だが、ハローワークによるネット経由の日次求人件数は、2019年
同月比で水準は低いものの、持ち直しの動きが続く。
・産業別に雇用者数の推移をみると、宿泊・飲食業、生活関連・娯楽業等において減少が続く。
・7月の賃金は、所定内・所定外給与が下支えし、前年比プラスで推移した。
・有効求人倍率は、3月1.10、4月1.09、5月1.09、6月1.13、7月1.15(正社員は0.94)となった。
・完全失業率は、3月2.6%、4月2.8%、5月3.0%、6月2.9%、7月2.8%となった。
物価の動向
○ 国内企業物価は、上昇している。
消費者物価は、このところ底堅さがみられる。(7月総合前月比+0.1%)。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
・4-6月期の企業の経常利益は、製造業では引き続き増加し、コロナ前の水準を上回る一方、非製造業では前期に比べて小幅減少となった。業種別に
みると飲食サービス業や宿泊業は依然として経常赤字が残る。
・宿泊・飲食サービス業の中小企業の経常利益の動向をみると、2020年後半以降、政府による各種補助金の受取等が計上される「その他営業外収益」が
経常利益の増加に寄与した。ただし、本業の収益を表す「営業利益」は2019年差で依然マイナスが続いており、売上回復が重要である。
・倒産件数は、資金繰り支援等もあり、過去50年間で最も低い水準が続いているが、企業債務の水準は高く、経済の活動レベルを高めていくことが必要で
ある。
○ 設備投資は、持ち直している。
・4-6月期の設備投資は、製造業・非製造業ともに前年を上回る水準となった。特にソフトウェア投資は、4四半期連続プラスとなり、コロナ前を大幅に上回る
水準 となった。
・2021年度の設備投資の見通しは、「前年度比6.6%増」の見通しと高い伸びを維持している。特に、ソフトウェア投資や研究開発投資が大きく増加する見込み。
このような企業の前向きな投資が、今後も経済をけん引することが期待される。
○ 業況判断は、一部に厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年9月▲27、12月▲10、2021年3月+5、6月+14、9月+13。
「大企業・非製造業」は2020年9月▲12、12月▲5、2021年3月▲1、6月+1、9月+3。
「中小企業・製造業」は、2020年9月▲44、12月▲27、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲6。
「中小企業・非製造業」は、2020年9月▲22、12月▲12、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲12。
生産
○ 生産は、このところ一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
・製造業の生産は、5G関連需要向けの電子部品・デバイスや設備投資向けの生産用機械を中心に持ち直し。しかしながら、半導体不足及び東南アジア
での感染拡大に伴う部品供給不足により、自動車等の輸送機械にはこのところ弱さがみられている。
・主要国・地域の景況感をみると、改善テンポは鈍化。生産調整は、今後自動車産業以外にも広がる可能性があるなど、海外経済の動向や国際的なサプライ
チェーンを通じた影響に注意が必要である。
・鉱工業生産指数は前月比で、5月▲6.5%、6月+6.5%、7月▲1.5%、8月(予想)+3.4%、9月(予想)+1.0%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、4月+7.7%、5月▲6.0%、6月+10.3%、7月+1.6%。
・電子部品・デバイスは前月比で、4月+5.5%、5月▲0.2%、6月+3.9%、7月+0.9%。
・輸送機械は前月比で、4月+0.2%、5月▲16.6%、6月+17.6%、7月▲3.8%。
外需
○ 輸出は、緩やかな増加が続いている。
○ 輸入は、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、おおむね均衡している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに大きく下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、5月▲1.0、6月+9.5、7月+0.8、8月▲13.7。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、4月▲8.1、5月+5.9、6月+4.8、7月▲4.0、8月▲4.7。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は緩やかに回復している。
・21年4-6月期の実質GDP成長率は7.9%増(前々年比では5.5%増)となった。
・消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・生産は、伸びがやや低下している。
・輸出は着実に増加している。
・固定資産投資は持ち直している。
・消費者物価上昇率はこのところおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は低下した。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インドでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるなかで感染の再拡大により、足下で景気は弱い動きとなっている。
○ インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるなかで感染の再拡大により、足下で景気は下押しされている。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に持ち直している。
・2021年4-6月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+6.6%。
○ 雇用者数は増加し、失業率は低下した。
・8月の失業率は5.2%となった。
○ 生産は持ち直した。
○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数は減少した。
○ 設備投資は緩やかに増加した。
○ 財輸出は持ち直している。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリスともに、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直している。
・21年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+9.2% (イギリスは+20.7%、ドイツは+6.7%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに持ち直している。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ上昇しており、イギリスは上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+1.6%(8月)、イギリス+1.7%(7月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスはこのところ横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばいとなっており、イギリスはこのところ横ばいとなっている。