月例経済報告(R3.10.15) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい 状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、そのテンポが 弱まっている。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策を徹底し、ワクチン接種を促進するなか で、各種政策の効果や 海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが 続くことが期待される。ただし、内外の感染症の動向、サプライチェ ーンを通じた影響による下振れリスクの高まりに十分注意する必要が ある。 また、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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世界経済
○ IMF見通しによれば、世界経済は持ち直しが続くことが見込まれる。
前回の見通しと比較すると、21 年の成長率見通しはアメリカやドイツ等で下方修正がされ、物価見通しは欧米で上方修正された。
○ 足下の動きをみると、供給面での制約や原材料価格の上昇がみられる。中国では、生産コストの上昇等 により、製造業景況感が
低下。また、世界的に、半導体不足等により乗用車生産が下押しされており、 エネルギー価格の上昇もみられる。こうした供給面
の動向について、注視が必要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緊急事態宣言中は、弱い動きとなっている。
・外食などサービス消費の弱さに加え、新車販売は、9月にかけて、供給面の影響により減少した。
・一方、9月末実施の景気ウォッチャー調査の先行き判断DIは、緊急事態宣言の解除やワクチン接種の進展への期待などから大きく上昇。消費者
マインドは、持ち直しの動きとなっている。
・足下までの消費を週次データでみると、9月後半以降も全体としては弱さがみられるが、10月の宣言解除後には、外食の支出に上向きの動きとなって
いる。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、5月▲2.8%、6月+2.5%、7月+0.2%、8月▲2.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、5月▲0.6%、6月+3.3%、7月+0.1%、8月▲0.8%、9月+1.1%。
・8月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.5%となった。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、このところ持ち直しの動きとなっている
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月▲0.9%、6月▲1.0%、7月+6.9%、8月▲7.7%。
・持家着工数は前月比で、5月+1.4%、6月▲0.2%、7月+8.0%、8月▲3.5%。
・貸家着工数は前月比で、5月▲5.2%、6月+4.8%、7月+1.4%、8月▲7.5%。
・分譲着工数は前月比で、5月+0.3%、6月▲7.9%、7月+14.2%、8月▲13.3%。
○ 公共投資は、受注の減少を受け、高水準にあるものの、このところ弱含んである。
・請負金額は前月比で、5月+15.0%(出来高▲1.4%)、6月▲1.6%(出来高+1.2%)、7月▲11.0%(出来高+1.1%)、8月+0.6%、9月▲6.9%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、求人等の動きに底堅さもみられる。
・雇用状況は、弱さが続く中、8月の雇用者数は横ばいで推移している。日銀短観9月調査で雇用の過不足感をみると、先行きで
も、全体としては不足超が続いており、宿泊・飲食サービス業においても過剰感が縮小。ハローワークによるネット経由の日次
有効求人件数は、2019年同月比で水準は低いものの、10月に入っても持ち直しの動きが続く。
・8月の賃金は、所定内・所定外給与が下支えし、前年比プラスで推移。実質総雇用者所得は、持ち直しの基調が続く。
・有効求人倍率は、4月1.09、5月1.09、6月1.13、7月1.15、8月1.14(正社員は0.92)となった。
・完全失業率は、4月2.8%、5月3.0%、6月2.9%、7月2.8%、8月2.8%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響により、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
○ 設備投資は、持ち直している。
・日銀短観9月調査によると、設備の過不足感は、製造業・非製造業ともに前回6月調査から改善し、過剰感はおおむね解消した。今後、企業の前向きな
投資を期待。2021年度の設備投資は、6月調査と同水準の前年度比9.3%増と大幅な増加見込み。
業種別にみると、製造業を中心に高い伸びの見通しとなっている。宿泊・飲食や個人サービスなど、サービス業の中には、伸びが限定的な業種もみられる。
○ 業況判断は、一部に厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。
・日銀短観9月調査によると、企業の景況感は、非製造業では依然としてマイナス、製造業は前回6月調査から改善した。2021年度の経常利益計画は、
製造業・非製造業ともに増加した。業種別にみると、宿泊・飲食サービス業は、前年度に続き経常赤字の見込みである。
・製造業において、仕入価格DIは足下で大きく上昇しているものの、販売価格DIの上昇は限定的となっている。価格転嫁の程度を表す疑似交易条件
(販売価格DIと仕入価格DIの差)は、特に中小企業において悪化傾向。企業収益にマイナスの影響もある。
・倒産件数は、資金繰り支援等もあり、過去50年間で最も低い水準が続いているが、企業債務の水準は高く、緊急事態宣言の解除もあり、経済の活動
レベルを高めていくことが必要。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2020年12月▲10、2021年3月+5、6月+14、9月+18、12月+14。
「大企業・非製造業」は2020年12月▲5、2021年3月▲1、6月+1、9月+2、12月3。
「中小企業・製造業」は、2020年12月▲27、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲3、12月▲4。
「中小企業・非製造業」は、2020年12月▲12、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲10、12月▲13。
生産
○ 生産は、このところ一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
・製造業の生産は、電子部品・デバイスや生産用機械により、持ち直しているものの、半導体不足及び東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給不足により、
自動車等の輸送機械に弱さがみられる。
・自動車部品や電気回路等の機器などは、東南アジアからの輸入が減少しており、供給不足の長期化・拡大を指摘する見方もある。海外経済の動向や国際的なサプライチェーンを通じた影響に、引き続き注意が必要である。
★【自動車減産の長期化や関連業種への拡大】
・金属製品:半導体不足等により自動車向けを中心に減産。
・一般機械:自動車関係は、感染症による影響に加え、半導体不足の影響が予想以上に根深く、来年まで影響が続くとみている。
【自動車以外の分野における影響】
・工作機械:モーター・コネクタ・継電器などの電気・電子部品の調達が困難。10月以降生産に遅れが生じる可能性。
・建設機械:7~8月にエンジン部品供給に影響があった。
・家電:主にベトナムからの部品供給停滞により冷蔵庫や洗濯機に、マレーシアからの供給停滞により掃除機にそれぞれ供給不足が発生。
・鉱工業生産指数は前月比で、6月+6.5%、7月▲1.5%、8月+3.2%、9月(予想)+0.2%、10月(予想)+6.8%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、5月▲6.0%、6月+10.3%、7月+1.6%、8月▲3.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、5月▲0.2%、6月+3.9%、7月+0.9%、8月▲2.9%。
・輸送機械は前月比で、5月▲16.6%、6月+17.6%、7月▲3.8%、8月▲12.5%。
外需
○ 輸出は、増勢が鈍化している。
○ 輸入は、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
・我が国の輸出は、コロナ前の水準を回復したものの、自動車の弱さなどもあり、足下では増勢が鈍化している。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、6月+9.5、7月+0.8、8月▲13.7、9月+7.4。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、6月+4.8、7月▲4.0、8月▲4.7、9月+12.9。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気の回復テンポは、このところ鈍化している。
・21年4-6月期の実質GDP成長率は7.9%増(前々年比では5.5%増)となった。
・消費はこのところ伸びが低下している。
・生産は、伸びがやや低下している。
・輸出は着実に増加している。
・固定資産投資は伸びがやや低下している。
・消費者物価上昇率はこのところおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)は低下した。
○ 韓国では、景気は持ち直している。
○ インド・インドネシアでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるなかで感染の再拡大により、景気は弱い動きとなっている。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は着実に持ち直している。
・2021年4-6月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+6.7%。
○ 雇用者数はこのところ増勢が鈍化、失業率は低下した。
・9月の失業率は4.8%となった。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は着実に持ち直し、自動車販売台数は減少した。
○ 設備投資は緩やかに増加した。
○ 財輸出は持ち直している。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・イギリスともに、景気は依然として厳しい状況にあるが、持ち直している。
・21年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+9.2%
(イギリスは+23.9%、ドイツは+6.7%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しており、イギリスは持ち直しているが、このところ一服感がみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+1.9%(9月)、イギリス+3.0%(8月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱い動きとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに横ばいとなっている。