月例経済報告(R4.2.17) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス 感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる。 〈先行き〉 ・先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続して いく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち 直していくことが期待される。ただし、感染拡大による影響や供給 面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する 必要がある。 また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。
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我が国の実質GDP成長率
○ 2021年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比1.3%と2四半期ぶりのプラスとなり、概ねコロナ前の水準まで回復。緊急事態宣言等の解除を受けた
経済社会活動の段階的な引上げ、東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給不足の緩和もあり、個人消費、輸出、設備投資がいずれもプラスに寄与した。
・特に、個人消費については、自動車等の耐久財や旅行・外食等のサービスが増加した。
○ 暦年でみると、2021年は前年比1.7%と3年ぶりのプラス成長となった。
世界経済
○ 欧米主要国の21年10~12月期の実質GDP成長率は、供給制約や感染拡大の影響もある中で、総じてプラス成長が続く。IMF見通しでは世界全体の22年
の成長率は∔4.4%と、景気は持ち直しが続く見込みである。
○ 昨年末以降、感染の急速な拡大・縮小が、欧米各国で時間差を伴ってみられたが、感染者数に比べ重症者数は抑制的、消費への影響も昨年対比では
限定的となっている。一方、ウクライナ情勢をめぐる緊張がみられる中、エネルギーを中心とした商品市場や金融資本市場等の変動には注視が必要である。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直しに足踏みがみられる。消費者マインドは、まん延防止等重点措置の実施等により、大幅に低下した。感染拡大を受け、小売・娯楽
施設の人流は、1月以降減少傾向にある。
・週次の個人消費は、昨年12月後半以降、平年水準(2017-19年)と同程度の水準で推移している。
・年末年始の売上高は、昨年より好調との声がある。
・外食や旅行のサービス消費は、引き続き持ち直しの動きとなっている。年末年始の交通機関の利用実績をみると、コロナ前(2019年度)を下回るものの、
昨年を大きく上回る水準に回復している。
・年末年始の小売・娯楽施設の人流は昨年より増加した。医療提供体制の強化やワクチン接種の促進、治療薬の確保に万全を期し、経済社会活動を
極力継続できる環境を作っていくことが重要である。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、8月▲1.8%、9月▲0.1%、10月+1.8%、11月+2.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、9月+1.1%、10月+1.4%、11月0.0%、12月▲0.1%、22年1月▲2.4%。
・12月の実質総雇用者所得は、前期比で▲1.0%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。消費者物価は、底堅さがみられる。
・原油価格は年初以降、再び上昇、国内ガソリン価格も1月第4週に170円超となるなど上昇した。
・国内企業物価は、原油・エネルギー関係品目を中心に、全体として上昇した。
・消費者物価について、生鮮食品・エネルギーを除いた「コアコア」で物価の基調をみると、底堅さがみられるが、「総合」でみると、エネルギー・資源
価格の上昇等を受けて、緩やかに上昇した。この下で、家計の電気、ガソリンなどエネルギー関連の支出増は、収入対比でみると、低所得層ほど大きい。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、このところ弱含んでいる。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、9月▲1.2%、10月+3.7、11月▲3.0%、12月▲1.5%。
・持家着工数は前月比で、9月+2.0%、10月▲0.2%、11月▲3.9%、12月▲3.3%。
・貸家着工数は前月比で、9月+0.7%、10月+2.7%、11月▲6.1%、12月▲0.2%。
・分譲着工数は前月比で、9月▲7.2%、10月+10.1%、11月+2.6%、12月▲1.5%。
○ 公共投資は、高水準にあるものの、このところ弱含んでいる。
・請負金額は前月比で、8月+0.6%(出来高▲3.2%)、9月▲3.3%(出来高▲2.6%)、10月▲3.4%(出来高▲1.0%)、11月▲0.3%(出来高▲1.0%)、12月+0.4%、22年1月▲2.4%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、感染症の影響が残る中で、引き続き弱い動きとなっているものの、求人等に持ち直しの動きがみられる。
・雇用者数及び失業率は概ね横ばいで推移している。日次有効求人件数は引き続き改善傾向にある。
・新規求人数は、水準は低いものの、持ち直しの動きがみられる。一方、高齢層を中心に、非労働力人口は増加した。
・2021年12月の賃金は、ボーナス(特別給与)の減少により、前年比マイナスとなった。なお、このところ前職と比べて賃金が1割以上増加した転職決定者
の割合は2期連続で上昇し、3割を超える。
・有効求人倍率は、8月1.14、9月1.16、10月1.15、11月1.15、12月1.16(正社員は0.86)となった。
・完全失業率は、8月2.8%、9月2.8%、10月2.7%、11月2.8%、12月2.7%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、感染症の影響が残る中で、非製造業の一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
・経済社会活動の水準を引き上げる中で、10-12月期の上場企業の経常利益は、製造業・非製造業ともに増加し、コロナ前の2019年10-12月期を大きく上回る水準まで回復した。DX需要の取り込みや物流の活発化した、資材の取引価格上昇の影響などを受け、多くの業種で増加した。
・GDPベースでみた10-12月期の設備投資は、プラスの伸びとなった。機械投資や構築物投資の
先行指標は、持ち直しの動きがみられる。また、デジタル化の対応もあり、ソフトウェア投資は10月以降、緩やかに増加している。
○ 設備投資は、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・倒産件数は、おおむね横ばいとなった。
・業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年3月+5、6月+14、9月+18、12月+18、2022年3月+13。
「大企業・非製造業」は、2021年3月▲1、6月+1、9月+2、12月+9、2022年3月+8。
「中小企業・製造業」は、2021年3月▲13、6月▲7、9月▲3、12月▲1、2022年3月▲1。
「中小企業・非製造業」は、2021年3月▲11、6月▲9、9月▲10、12月▲4、2022年3月▲6。
○ 生産は、持ち直しの動きとなっている。
・部品供給不足の緩和により、自動車等の輸送機械が持ち直し。生産用機械や電子部品・デバイスなどを中心に、先行きは増加が続く見込みとなっている。
また、世界的に製品納期が長期化する中、我が国は、相対的に影響は小さいものの、供給面の制約には引き続き注視が必要である。
・鉱工業生産指数は前月比で、10月+1.8%、11月+7.0%、12月▲1.0%、1月(予想)+5.2%、2月(予想)+2.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、9月▲3.3%、10月+4.2%、11月+0.1%、12月▲3.4%。
・電子部品・デバイスは前月比で、9月▲4.1%、10月▲1.1%、11月+3.1%、12月▲3.0%。
・輸送機械は前月比で、9月▲24.6%、10月+17.4%、11月+28.5%、12月+0.9%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・中国を中心とするアジア向けが弱含む一方、アメリカや欧州向けは概ね横ばいとなっている。
品目別では、自動車関連財が持ち直す一方、資本財や情報関連財が鈍化した。
○ 輸入は、このところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、5か月ぶりに大きく下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、10月+13.4、11月+0.8、12月+0.7、22年1月▲19.6。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、9月+12.9、10月+0.9、11月▲4.1、12月▲2.9、22年1月▲7.8。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気の回復テンポは、このところ鈍化している。
・21年10-12月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+4.0%となった。
・消費はこのところ伸びが低下している。
・生産は、このところ伸びがおおむね横ばいとなっている。
・輸出は増加している。
・固定資産投資は伸びが低下している。
・消費者物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところおおむね横ばいとなっている。
○ 韓国・インド・インドネシアでは、景気は持ち直している。
○ タイでは、景気は厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる。
○ 台湾では、景気は回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は持ち直している。
・2021年10-12月期のGDP成長率(1次推計値)は、前期比年率+6.9%。
○ 雇用者数は緩やかに増加、失業率は低下した。
・1月の失業率は4.0%となった。
○ 生産は緩やかに増加した。
○ 消費は持ち直しのテンポが緩やかになり、自動車販売台数は持ち直しの動きがみられる。
○ 設備投資はこのところ増勢が鈍化した。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏は、景気は一部で厳しい状況が残る中で、持ち直している。
イギリスは、厳しい状況が緩和される中で、持ち直している。
・21年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.2%
(イギリスは+3.9%、ドイツは▲2.9%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏・イギリスともに、持ち直しに足踏みがみられる。
○ 失業率は、ユーロ圏・イギリスともに低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+2.5%(1月)、イギリス+4.1%(12月)。
○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともにこのところ持ち直している。
○ 生産は、ユーロ圏・イギリスともに横ばいとなっている。