月例経済報告(R4.10.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は、緩やかな持ち直しが続いている。2022年成長見通しは、アメリカで下方修正となったが、 世界全体では変わらずプラス成長の
見込みとなっている。
・足下、ドイツをはじめユーロ圏では消費に足踏みがみられるものの、欧米諸国の失業率は総じて概ね横ばいとなっている。
先進国・新興国ともに消費者物価の上昇が続き、金融引締めが進展する中、金融資本市場には不安定な動きがみられる。
今後も金融資本市場の変動や物価上昇、供給制約等による下振れリスクの高まりに留意が必要である。
・中国では共産党大会において、技術革新や安全保障などの経済関連方針が発表された。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・9月以降、外食や旅行・宿泊などサービス消費の改善が継続している一方、消費を取り巻く環境をみると、雇用情勢が
改善し、賃上げの流れが定着・拡大する中、総雇用者所得は名目ではプラスだが、物価上昇により実質ではマイナスが
続く。
・消費者マインドも物価上昇を背景に弱含んでおり、低所得層ほどマインドが低い状況となっている。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、4月+1.1%、5月+0.8%、6月+0.4%、7月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、5月+1.1%、6月▲2.0%、7月▲1.9%、8月+2.3%、9月▲1.7%。
・8月の実質総雇用者所得は、前期比で0.0%となった。
物価
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、上昇している。
輸入物価・輸出物価ともに上昇している。
・国際商品市況は、世界的な金融引締め等を背景に不安定な動きが続く中、足下では円安も進行している。こうした動き
を受け、国内企業物価も引き続き上昇となった。
・消費者物価は、エネルギーや食料品を中心に9月は3.0%(総合)と引き続き高い伸びとなあっている。スーパー等の
POSデータから、食料品について日次の物価動向をみると10月に入って更に上昇率が高まっていることなどから、
消費者物価は10月も上昇が見込まれる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、5月▲6.5%、6月+2.1%、7月▲2.4%、8月+9.4%。
・持家着工数は前月比で、5月+1.4%、6月▲2.0%、7月▲2.8%、8月+3.1%。
・貸家着工数は前月比で、5月▲4.6%、6月+2.2%、7月▲2.8%、8月+8.0%。
・分譲着工数は前月比で、5月▲15.4%、6月+5.9%、7月▲0.7%、8月+14.6%。
○ 公共投資は、底堅さが増している。
・請負金額は前月比で、4月▲3.4%(出来高+1.7%)、5月▲2.0%(出来高+2.3%)、6月+7.7%(出来高+2.6%)、
7月▲9.0%(出来高▲0.4%)、8月+1.4%(出来高+1.1%)、9月+3.2%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
○ 8月の失業率は低下し、就業者数は概ね横ばいの動きとなっている。
○ 有効求人倍率の上昇は継続している。日銀短観9月調査によると、企業の雇用人員判断は不足感が高まっており、特に、
ウィズコロナの下で消費の改善が続く宿泊・飲食では、春以降の不足感の高まりが顕著となっている。
○ 一人当たり賃金は、前年比でプラスが継続している。堅調だった夏のボーナスと、賃上げによる所定内給与増の寄与が
大きい。成長と分配の好循環の実現に向け、引き続き、賃上げの流れの継続・拡大が重要である。
・有効求人倍率は、4月1.23、5月1.24、6月1.27、7月1.29、8月1.32(正社員は1.02)となった。
・完全失業率は、3月2.6%、4月2.5%、5月2.6%、6月2.6%、7月2.6%、8月2.5%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直している。
・日銀短観9月調査によると、今年度の企業の設備投資計画は引き続き二桁の伸びと高い水準となった(前回6月調査から
上方修正)。
・機械投資も、先行指標である機械受注とともに持ち直している。非居住用の建設投資も、運輸業の倉庫や製造業の工場
の新設などにより増加傾向となっている。
・各社の個別案件をみても、コロナ禍で先送りされていた能力増強や国内生産の強化、デジタル化や脱炭素など、様々な
前向きな取組が表れている。
○ 業況判断は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・日銀短観9月調査によると、非製造業ではウィズコロナの進展 により前回6月調査から改善した一方、製造業では物価高
の下で横ばいとなった。特に中小企業の製造業では、引き 続き「悪い」が「良い」を上回って推移している。
・ 製造業の疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)は、仕入価格の上昇ペースが鈍化し、価格転嫁が進展して販売
価格が上昇したことで、わずかに改善した。ただし、大企業に比べ中小企業が相対的に厳しい状況は継続している。
・こうした中、今年度の経常利益計画は、中小企業において前年度比でマイナスとなった。引き続き、価格転嫁が課題となっ
ている。
・倒産件数はおおむね横ばいとなっている。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2021年12月+18、2022年3月+14、6月+9、9月+8、12月+9。
「大企業・非製造業」は、2021年12月+9、2022年3月+9、6月+13、9月+14、12月+11。
「中小企業・製造業」は、2021年12月▲1、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲4、12月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2021年12月▲4、2022年3月▲6、6月、▲1、9月+2、12月▲3。
○ 生産は、持ち直しの動きがみられる。
・製造業の生産は、ICなどの電子部品・デバイスが弱含みに転ずる一方、生産用機械が増加しており、全体として持ち直し
の動きがみられる。
財別にみると、企業の前向きな投資行動等を背景に、機械や建設資材などの投資財が堅調な伸びがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、6月+9.2%、7月+0.8%、8月+3.4%、9月(予測)+2.9%、10月(予測)+3.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、5月▲5.0%、6月+9.0%、7月+6.0%、8月+6.2%。
・電子部品・デバイスは前月比で、5月▲4.2%、6月+11.6%、7月▲9.2%、8月▲6.4%。
・輸送機械は前月比で、5月▲7.4%、6月+11.8%、7月+10.7%、8月▲1.0%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・品目別にみると、生産関連の機械や自動車で増加傾向がみられる一方、世界的なスマホ・PCの需要一服等を背景に
半導体等電子部品やプラスチック等が減少傾向となった。
○ 輸入は、おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
参考 我が国の経常収支は、リーマンショック以降、所得収支に支えられ、貿易中心から投資中心に変化。貿易収支は概ね均衡する下、輸出の増加
要因は数量から付加価値へと変化した。こうした中、2022年以降、エネルギー輸入は価格上昇を要因に輸入額が大幅に増加し、これに伴い、
貿易収支も経常収支も赤字化となった。経常収支の改善には、エネルギー構造の改善、知財等を含むサービス輸出の強化、円安を活かした
輸出拡大が重要となる。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、5月+3.6、6月▲1.1、7月▲9.1、8月+1.7、9月+2.9。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、2か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、5月+2.2、6月▲4.9、7月▲4.8、8月+6.6、9月▲0.2。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが
期待される。ただし、不動産市場の動向や金融資本市場の変動、経済活動の抑制の影響等を注視する必要がある。
・22年4-6月期の実質GDP成長率(前年同期比)は+0.4%となった。
・消費は持ち直しの動きがみられる。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出は緩やかに増加している。
・固定資産投資は伸びがおおむね横ばいとなっている。
・都市部調査失業率は低下している。
・消費者物価上昇率はこのところ低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はおおむね横ばいとなっている。
○ 韓国では、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。
○ インド・タイでは、景気は持ち直している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾では、景気はこのところ回復に足踏みがみられる。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融引締め
に伴う影響等による下振れリスクの高まりに留意する必要がある。
・2022年4-6月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率▲0.6%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・9月の失業率は3.5%となった。
○ 生産は底堅く推移している。
○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数は弱い動きとなっている。
○ 設備投資はこのところ横ばいとなっている。
○ コア物価上昇率は高水準でおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出は緩やかに増加した。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は総じてみれば緩やかに持ち直している。
ドイツは、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。
イギリスでは、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。
・22年4-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+3.3%
(イギリスは▲0.3%、ドイツは+0.6%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはこのところ低下している。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏・イギリスともに上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+6.0%(9月)、イギリス+7.1%(9月)。
○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直しに足踏みがみられ、イギリスは横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ弱含んでいる。