月例経済報告(R4.12.21) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、 景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め 等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクと なっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響や中国における感染動向に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は、中国、韓国等の一部の地域において足踏みがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いている。
・2023年の世界経済は欧米を中心に減速が見込まれている。
・感染再拡大の動きがみられる中国では消費や生産等の伸びが低下し、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
韓国では半導体需要の鈍化の影響等から輸出は弱い動きとなり、景気は弱い動きとなっている。
・欧米の失業率は引き続きおおむね横ばいとなっている。消費者物価の上昇テンポには各国差がみられだしたものの、
総じて高く、物価安定に向けた金融引締めが継続している。
・今後とも金融資本市場の変動や物価上昇、供給制約等による下振れリスクの高まりに留意が必要である。
日本の実質GDP成長率
○ 2022年7-9月期の実質GDP成長率は、前期比▲0.2%(年率▲0.8%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・カード支出の動向は、財が概ね横ばいである一方、サービス消費は、外食は持ち直しテンポが緩やかになっている
ものの、旅行・宿泊は全国旅行支援等の政策効果もあり着実に持ち直しとなっている。
・2022年は、ウィズコロナが進展したことで、感染拡大に伴う対面サービス消費の減少幅は、過去の感染拡大局面と
比較して大幅に縮小した。
こうした中、年末年始の旅行予約も昨年を上回る見通しとなっている。
・インバウンドも、水際対策の緩和によって観光目的の訪日外客が大幅に増加した。円安の環境もあり、旅行者一人
当たりの消費額も、コロナ前の2019年に比べて大きく増加となっている。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、6月+0.4%、7月+0.2%、8月0.0%、9月+1.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、7月▲1.9%、8月+2.3%、9月▲1.7%、10月▲0.9%、11月▲1.3%。
・10月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.0%となった。
物価
○ 国内企業物価・消費者物価ともに、上昇している。
輸入物価・輸出物価はともに下降した。
・国際商品市況は、引き続き不安定な動きが続いている中で、原油(円ベース)は足下ではロシアによるウクライナ
侵攻前の水準まで低下している。
・国内企業物価は、足下では引き続き高い伸びとなっている。これまでの原油価格等の上昇が時間差を伴って価格に
反映されること等から、電力・都市ガスのプラス寄与が高まっている。
・消費者物価も輸入物価に対して遅れて変動するため、足下では引き続き上昇している。
こうした動向も背景に、消費者物価を品目別にみると、食料品を中心に約8割の品目で前年比上昇となるなど、
物価上昇に広がりがみられる。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、7月▲2.4%、8月+9.4%、9月▲5.0%、10月+1.5%。
・持家着工数は前月比で、7月▲2.8%、8月+3.1%、9月+1.9%、10月▲6.6%。
・貸家着工数は前月比で、7月▲2.8%、8月+7.9%、9月▲1.1%、10月+3.5%。
・分譲着工数は前月比で、7月▲0.7%、8月+14.6%、9月▲13.7%、10月+4.5%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、6月+7.7%(出来高+2.6%)、7月▲9.0%(出来高▲0.4%)、8月+1.4%(出来高+1.1%)、
9月+3.2%(出来高▲0.7%)、10月▲3.2%(出来高▲1.0%)、11月▲12.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
○ 一人当たり時給(所定内)は、賃上げの流れの定着・拡大、ウィズコロナの下での労働需要の高まりから、一般・
パートともに緩やかに増加した。
○ 冬のボーナスは、連合の集計によれば、好調な企業収益を背景として前年比6.6%増と2年連続の高い伸びとなる
見込みである。
○ 民間調査によると、全体の約25%の企業が月給への上乗せや一時金としての支給等を通じ、物価高に対応する手当
を支給あるいは予定・検討している。
・有効求人倍率は、6月1.27、7月1.29、8月1.32、9月1.34、10月1.35(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、5月2.6%、6月2.6%、7月2.6%、8月2.5%、9月2.6%、10月2.6%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
・本年7-9月期の企業の経常利益は、前年同期比で7期連続の増益となっている。水準も7-9月期として過去最高となった。
特に、円安による押上げ効果もあり製造業が伸びを牽引している。
○ 設備投資は、持ち直している。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 特に、全国旅行支援やインバウンド再開を背景に非製造業で改善した。一方、原材料コストの上昇は企業の利益を
圧迫しており、特に中小企業では影響が顕著となっている。
・ 製造業の疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)は、仕入価格の上昇が鈍化し、価格転嫁が徐々に進んで販売
価格の上昇がみられる中、改善の動きがみられる。ただし、大企業に比べ中小企業が相対的に厳しい状況は継続して
いる。
・ 倒産件数はおおむね横ばいとなっている。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2022年3月+14、6月+9、9月+8、12月+7、2023年3月+6。
「大企業・非製造業」は、2022年3月+9、6月+13、9月+14、12月+19、2023年3月+11。
「中小企業・製造業」は、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲4、12月▲2、2023年3月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2022年3月▲6、6月、▲1、9月+2、12月+6、2023年3月▲1。
○ 生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・製造業の生産は、輸出の動向と連動し、輸送機械は持ち直しの動きだが、電子部品・デバイスは世界的なPC・
スマホ需要の一服等を背景にこのところ低下している。生産用機械では、受注が底堅い中で納期平準化の動きも
あり、このところ増勢が鈍化している。
・世界の半導体市場予測は大幅に下方修正となった。長期的なニーズは底堅いものの、コロナ禍での拡大は一服した。
・鉱工業生産指数は前月比で、8月+3.4%、9月▲1.7%、10月▲3.2%、11月(予測)+3.3%、12月(予測)+2.4%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、7月+6.0%、8月+6.2%、9月▲1.8%、10月▲5.4%。
・電子部品・デバイスは前月比で、7月▲9.2%、8月▲6.4%、9月+0.4%、10月▲4.1%。
・輸送機械は前月比で、7月+10.7%、8月▲1.0%、9月▲10.3%、10月+4.5%。
外需
○ 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
・品目別にみると、自動車等の輸送機器は持ち直し傾向である一方、半導体等の電気機器及び化学製品は減少傾向と
なっている。半導体製造装置等の一般機械はこのところ横ばいとなっている。
○ 輸入は、おおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、7月▲9.1、8月+1.7、9月+2.9、10月+1.5、11月▲1.8。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、7月▲4.8、8月+6.6、9月▲0.2、10月▲2.8、11月▲1.3。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、不動産市場の動向や経済活動の抑制の影響等を
注視する必要がある。
・22年7-9月期の実質GDP成長率(前期比)は+3.9%となった。
・消費はこのところ弱含みとなっている。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・輸出はこのところ弱い動きとなっている。
・固定資産投資はこのところ弱含みとなっている。
・都市部調査失業率はこのところ上昇している。
・消費者物価上昇率は低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ低下した。
○ 韓国では、景気はこのところ弱い動きとなっている。
○ インド・タイでは、景気は持ち直している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ 台湾では、景気はこのところ回復が弱まっている。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。
ただし、金融引締めに伴う影響等による下振れリスクの高まりに留意する必要がある。
・2022年7-9月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.9%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・11月の失業率は3.7%となった。
○ 生産は底堅く推移している。
○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数も持ち直しの動きがみられる。
○ 設備投資は緩やかに持ち直している。
○ コア物価上昇率は高水準でおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなった。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに持ち直している。
ドイツは、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。
イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
・22年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.3% (イギリスは▲0.7%、ドイツは+1.6%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は上昇、イギリスはおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+6.6%(11月)、イギリス+7.0%(11月)。
○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスは弱含んでいる。