月例経済報告(R5.1.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、 景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め 等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクと なっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の 影響や中国における感染拡大の影響に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 2023年の世界経済は、1月公表の世界銀行の見通しでは先進国を中心に減速が見込まれている。今後も世界的な金融引締めに伴う
影響、中国における感染拡大、物価上昇等による下振れリスクの高まりに留意する必要がある。
・中国では感染再拡大の影響により消費の弱さが続く中で輸出も減少し、景気はこのところ弱さがみられる。
こうした影響を受けやすい韓国、台湾では、世界的な半導体需要の鈍化もあり、景気は弱い動きとなっている。
・欧米では、消費者物価上昇率は総じて高いものの、エネルギー価格等の下落を受け、アメリカに続きユーロ圏でも
一服感がある。雇用面では、求人数はこのところ緩やかに低下した。
日本の実質GDP成長率
○ 2022年7-9月期(2次速報)の実質GDP成長率は、前期比▲0.2%(年率▲0.8%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・ウィズコロナの下、感染状況がサービス消費を下押しする傾向は弱まっており、22年秋以降は概ねコロナ禍前より
高い水準で推移している。
・足下の動向について、カード支出を見ると12月後半にかけて財・サービスともに改善しており、年末年始の交通機関
の利用実績を見ても航空(国内線)や新幹線はコロナ禍前水準に近づいている。
・外食についても、忘年会等の自粛が続くことで居酒屋等では回復に遅れが見られるが、総じてみれば概ねコロナ禍前の
水準を回復した。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、7月+0.2%、8月0.0%、9月+0.5%、10月0.0%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、8月+2.3%、9月▲1.7%、10月▲0.9%、11月▲1.3%、12月+1.7%。
・11月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.1%となった。
物価
○ 国内企業物価・消費者物価は、ともに上昇している。
・輸入物価は、昨秋以降、国際商品市況が不安定ながらも下落し、円高が加わり下落した。国内企業物価は、輸入物価
から遅れて変動することから、足下では引き続き上昇している。
・消費者物価について、品目別の価格変化の分布を見ると、上昇率ゼロの品目の割合が減少し、プラス幅の大きい品目の
割合が増加した。また、当面は、食料品等の値上げが見込まれる。一方、1月に電気・ガス価格激変緩和対策事業が
開始、支払い月の2月から電気・ガス代の引下げ効果が発現する見込みとなっている。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅建築費が上昇する中で持家着工は弱含んでいるが、貸家着工は、床面積の大きな賃貸住宅を中心に持ち直しの動き
がみられる。
・金融環境を見ると、固定型の住宅ローン金利は上昇傾向となっている。一方、金利タイプ別割合を見ると、相対的に
低利の変動金利型が多く、住宅ローン返済額の可処分所得に対する割合も低下傾向となっている。ただし、住宅ローン
残高は増加しており、金利変動の影響には留意が必要である。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、8月+9.4%、9月▲5.0%、10月+1.5%、11月▲3.7%。
・持家着工数は前月比で、8月+3.1%、9月+1.9%、10月▲6.6%、11月▲1.0%。
・貸家着工数は前月比で、8月+7.9%、9月▲1.1%、10月+3.5%、11月▲4.5%。
・分譲着工数は前月比で、8月+14.6%、9月▲13.7%、10月+4.5%、11月▲2.6%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、7月▲9.0%(出来高▲0.4%)、8月+1.4%(出来高+1.1%)、9月+3.2%(出来高▲0.7%)、
10月▲3.2%(出来高▲1.0%)、11月▲12.7%(出来高▲0.5%)、12月+0.9%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。完全失業率は低水準で推移し、有効求人倍率は持ち直している。
・労働需給がタイト化する中で、パート募集時の平均時給が改善しており、一般労働者の現金給与総額を見ても、
21年半ば以降、時給の改善が現金給与総額の増加に寄与している。
・処遇改善や会社の将来性不安を理由とした自発的な転職では、転職を通じて賃金の伸びは高まり、仕事に対する
意欲も改善傾向となっている。
・有効求人倍率は、7月1.29、8月1.32、9月1.34、10月1.35、11月1.35(正社員は1.04)となった。
・完全失業率は、6月2.6%、7月2.6%、8月2.5%、9月2.6%、10月2.6%、11月2.5%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、一部に弱さがみられるものの、総じてみれば改善している。
○ 設備投資は、持ち直している。
・投資は、足下で、資本財総供給の持ち直しの動きに足踏みがみられるが、ソフトウェア投資は引き続き緩やかに
増加した。企業による設備投資計画によると、設備投資意欲は引き続き強い。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 倒産件数は、低い水準ではあるものの、このところ増加がみられる。
・ 中小企業の資金繰り環境は緩和的となっている。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2022年3月+14、6月+9、9月+8、12月+7、2023年3月+6。
「大企業・非製造業」は、2022年3月+9、6月+13、9月+14、12月+19、2023年3月+11。
「中小企業・製造業」は、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲4、12月▲2、2023年3月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2022年3月▲6、6月、▲1、9月+2、12月+6、2023年3月▲1。
○ 生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・輸送機械に持ち直しの動きがみられる一方、生産用機械(半導体製造装置等)の増勢が鈍化するなど、総じてみると
持ち直しの動きに足踏み。
需要先を鉱工業出荷でみると、輸送機械工業は供給制約の影響で回復が遅れており、その他業種の輸出向けの出荷が
生産の増加に寄与している。
・鉱工業生産指数は前月比で、9月▲1.7%、10月▲3.2%、11月0.2%、12月(予測)+2.8%、1月(予測)▲0.6%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、8月+6.2%、9月▲1.8%、10月▲5.4%、11月▲6.0%。
・電子部品・デバイスは前月比で、8月▲6.4%、9月+0.4%、10月▲4.1%、11月+0.5%。
・輸送機械は前月比で、8月▲1.0%、9月▲10.3%、10月+4.5%、11月▲0.5%。
外需
○ 輸出は、このところ弱含んでいる。
・我が国の輸出は、アジア向けがこのところ減少し、全体として弱含みとなっている。
一方、貿易収支を見ると、鉱物性燃料の輸入価格が下落し、赤字幅は縮小した。
・水際対策の緩和を受けて、12月の訪日外客数は2019年平均の半分程度まで回復した。10-12月の訪日外国人消費額は
国別に見ると、一人当たり消費額の増加により、一部で2019年水準を概ね回復している。
・2000年半ば以降のサービス輸出の動向を見ると、デジタル関連サービスの伸び悩みなどから、世界に比べ成長に遅れが
みられる。デジタル人材育成やスタートアップの支援等を通じたデジタル関連産業の競争力強化が重要である。
○ 輸入は、このところ弱含んでいる。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で下降した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、8月+1.7、9月+2.9、10月+1.5、11月▲1.8、12月▲0.2。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、8月+6.6、9月▲0.2、10月▲2.8、11月▲1.3、12月1.9。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は感染の再拡大の影響により、このところ弱さがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、感染拡大の影響の長期化による下振れリスクに留意する
必要がある。
・22年10-12月期の実質GDP成長率(前期比)は0.0%となった。
・消費はこのところ弱含みとなっている。
・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・輸出はこのところ減少している。
・固定資産投資はこのところ弱含みとなっている。
・都市部調査失業率はこのところおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率は低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ低下した。
★ 中国の貿易措置緩和(1月8日~)
・新型コロナの感染症分類を引き下げ、隔離措置・濃厚接触者の判定・高リスク地域の設定等を取りやめ。
感染者数は月に一度の発表に変更。
・医療機関における新型コロナ関連死者数は、12月8日~1月12日は5万9938人、1月13~19日は1万2,658人と発表。
・当局は、本年の春節前後(1月7日~2月15日)の旅客数を延べ20.95億人(2019年比29.7%減)と予測。
○ 韓国・台湾では、景気はこのところ弱い動きとなっている。
○ インド・タイでは、景気は持ち直している。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融引締め
に伴う影響等による下振れリスクの高まりに留意する必要がある。
・2022年7-9月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+3.2%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・12月の失業率は3.5%となった。
○ 生産はこのところ弱い動きとなっている。
○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 設備投資は緩やかに持ち直している。
○ コア物価上昇率は高水準でおおむね横ばいとなった。
○ 財輸出はこのところ弱い動きとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は緩やかに持ち直している。
ドイツは、景気はこのところ持ち直しに足踏みがみられる。
イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
・22年7-9月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+1.2% (イギリスは▲1.2%、ドイツは+1.6%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は上昇、イギリスはおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+6.9%(12月)、イギリス+7.1%(12月)。
○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスは弱含んでいる。