月例経済報告(R5.3.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、 景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め 等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクと なっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動 等の影響に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は一部の地域において弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しがみられる。
・世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いている。
・中国では輸出が減少する一方、感染が収束して生産・消費に持ち直しの動きがみられる。
・ユーロ圏では設備投資は持ち直してきたがこのところ一服感がみられ、消費は持ち直しに足踏みがみられる。
・財貿易量は低下傾向となっている。欧米の景況感は製造業で引き続き悪化となったものの、非製造業は改善がみられる。
・欧米の失業率はおおむね横ばい。消費者物価の上昇に一服感がみられるが、上昇率の水準は依然高く、物価安定に向けた
金融引締めが継続している。世界的な金融引締めに伴う影響、物価上昇等による下振れリスクに引き続き留意が必要である。
また、金融資本市場の変動の影響を注視する必要がある。
日本の実質GDP成長率
○ 2022年10-12月期(2次速報)の実質GDP成長率は、前期比0.0%(年率+0.1%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・個人消費は、雇用者所得が実質ではマイナスとなる中でも、緩やかに持ち直した。22年後半以降、財は弱めの動きとなる一方、
サービスの持ち直しが回復を牽引した。
・景気ウォッチャー調査(街角景気)の先行き判断は2月も引き続き上昇となった。物価上昇への懸念は下押し要因となる一方、
新型コロナの5類移行やマスク着用ルールの緩和が先行き期待の押上げに寄与した。
・訪日外客は堅調に増加し、2月は19年比で57%(中国を除くと77%)の水準まで回復した。引き続き、インバウンド需要の拡大
に期待できる。
・消費総合指数(実質)は、前期比で、9月+0.5%、10月▲0.1%、11月▲0.4%、12月▲0.9%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、10月▲0.9%、11月▲1.3%、12月+1.7%、2023年1月+0.7%、2月+0.1%。
・1月の実質総雇用者所得は、前期比で▲0.4%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。
消費者物価は、上昇している。
・国際商品市況は、引き続き、原油・LNG・石炭の価格がロシアによるウクライナ侵略前の水準を下回って推移している。
・国内企業物価は、石油・石炭製品の価格下落に加え、電気・ガス価格激変緩和対策事業の効果により、前年比上昇率が2か月
連続で低下するなど、上昇テンポが鈍化している。
・消費者物価は、食料等の身の回り品で今後も上昇が見込まれるが、2月の東京都区部速報値では、「電気・ガス価格激変緩和
対策事業」の効果が前年比上昇率を1.0%pt引下げた。これと同様に、2月の全国でも前年比上昇率は低下する見込みとなっている。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、10月+0.9%、11月▲2.9%、12月+0.5%、2023年1月+5.5%。
・持家着工数は前月比で、10月▲4.4%、11月▲1.5%、12月+0.7%、2023年1月▲0.8%。
・貸家着工数は前月比で、10月+1.7%、11月▲2.5%、12月▲1.0%、2023年1月+0.1%。
・分譲着工数は前月比で、10月+2.5%、11月▲2.2%、12月+1.9%、2023年1月+20.0%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、10月▲3.5%(出来高▲1.0%)、11月▲6.9%(出来高▲0.5%)、12月+0.9%(出来高+0.2%)、
2023年1月+0.9%(出来高+2.1%)、2月+51.7%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
・名目賃金の上昇率は、1990年代末以降、物価上昇率と同程度又は下回る傾向となっている。
一方、2022年の名目賃金上昇率は、過去の春闘結果と名目賃金の関係を上回るなど、物価上昇の下で賃上げが進展している。
・こうした中、23年の春闘の賃上げ率は第一回集計で3.8%と、1993年以来30年ぶりの高い伸びとなった。デフレ脱却と民需
主導の持続的な成長の実現に向け、物価上昇に負けない継続的な賃金上昇が重要となる。
・女性の年収は、正社員と非正社員とで大きな差がある。また、正社員の定期給与は、年齢が上がるほど男女間での差が拡大
している。女性の正社員化や男女間格差の縮小を進めることは、平均的な賃金水準の押上げにつながる。
・有効求人倍率は、9月1.34、10月1.35、11月1.35、12月1.35、2023年1月1.35(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、8月2.5%、9月2.6%、10月2.6%、11月2.5%、12月2.5%、2023年1月2.4%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善しているが、そのテンポは緩やかになっている。
・2022年の経常利益は、売上増加や円安による押上げ効果もあり過去最高水準。
四半期ベースで業種別にみると、10-12月期は輸送機械や運輸等で好調が続く一方、食料品や素材関係の製造業では原材料コスト
増の影響等により前年比で減益となった。
○ 設備投資は、持ち直している。
・企業の設備投資は、22年度の実績は当初計画を上回る見込みとなり、23年度の計画も22年度並みの伸びとなっている。
好調な収益の下、企業の投資マインドには引き続き力強さがみられる。個社の投資計画では、デジタル化や脱炭素化投資のほか、
市況悪化の一方で中長期的な需要を見据えた半導体関連の投資もみられる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 倒産件数は、低い水準ではあるものの、このところ増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2022年3月+14、6月+9、9月+8、12月+7、2023年3月+6。
「大企業・非製造業」は、2022年3月+9、6月+13、9月+14、12月+19、2023年3月+11。
「中小企業・製造業」は、2022年3月▲4、6月▲4、9月▲4、12月▲2、2023年3月▲5。
「中小企業・非製造業」は、2022年3月▲6、6月、▲1、9月+2、12月+6、2023年3月▲1。
○ 生産は、このところ弱含んでいる。
・製造業の生産は、市況悪化に伴う半導体の在庫調整と、それを受けた海外での半導体製造装置の投資先送り等により、電子部品・
デバイスや生産用機械でマイナス傾向となるなど、このところ弱含みとなっている。
・コロナ禍で大きく成長した我が国の半導体製造装置の売上高は、中長期的には拡大が見込まれるも、当面は需給の調整局面となり、
23年度は前年度比マイナスの見込みとなっている。
・こうした中、企業の景況感は製造業で低下傾向となっている一方、サービス業では上昇傾向が続いている。
・鉱工業生産指数は前月比で、11月0.2%、12月+0.3%、1月▲5.3%、2月(予測)+8.0%、3月(予測)+0.7%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、10月▲5.4%、11月▲6.0%、12月+0.8%、2023年1月▲15.3%。
・電子部品・デバイスは前月比で、10月▲4.1%、11月+0.5%、12月▲0.7%、2023年1月▲4.2%。
・輸送機械は前月比で、10月+4.5%、11月▲0.5%、12月+0.9%、2023年1月▲9.9%。
外需
○ 輸出・輸入ともに、弱含んでいる。
・我が国の輸出は、半導体市況の軟化等を背景として、アジア向けを中心に全体として弱含みとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月ぶりに上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、10月+1.5、11月▲1.8、12月▲0.7、1月▲0.2、2月+3.5。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、3か月連続で上昇した。
・物価上昇への懸念が引き続き下押し要因となる一方、インバウンド拡大に加え、新型コロナ5類移行が先行き期待の押上げに
寄与した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、10月▲2.8、11月▲1.3、12月+0.5、1月+2.5、2月2.5。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は一部に弱さが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、、不動産市場の動向等を注視する必要
がある。
・22年10-12月期の実質GDP成長率は前期比で0.0%(前年比+2.9%)となった。
・消費は持ち直しの動きがみられる。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出は減少している。
・固定資産投資はおおむね横ばいとなっている。
・都市部調査失業率はこのところおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率はこのところ低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きがみられる。
○ 韓国・台湾では、景気はこのところ弱い動きとなっている。
○ インドでは、景気は持ち直している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。
先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による下振れリスクに留意
する必要がある。
・2022年10-12月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.7%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・2月の失業率は3.6%となった。
○ 設備投資は緩やかに持ち直している。
○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工は減少し、住宅価格は下落している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
ドイツ・イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
・22年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.1% (イギリスは+0.1%、ドイツは▲1.7%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は上昇、イギリスはおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+7.4%(2月)、イギリス+6.7%(1月)。
○ 輸出は、ユーロ圏はこのところ持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。