月例経済報告(R5.4.25) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。 〈先行き〉 ・先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、 景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め 等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクと なっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動 等の影響に十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は一部の地域において弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いている。
・2023年の成長見通しは、世界全体ではわずかに下方修正となったものの、欧米では上方修正された。
・中国では感染症の収束、政策効果の発現を受け、生産、消費、輸出共にプラスになるなど、景気は持ち直しの動きがみられる。
・消費者物価の上昇に一服感がみられるが、上昇率の水準は依然高く、物価安定に向けた金融引締めが継続される見込みとなっている。
・今後とも世界的な金融引締めに伴う影響、物価上昇等による下振れリスクに留意が必要。また、金融資本市場の変動の影響を引き続き
注視する必要がある。
日本の実質GDP成長率
○ 2022年10-12月期(2次速報)の実質GDP成長率は、前期比0.0%(年率+0.1%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、緩やかに持ち直している。
・財が弱めの動きとなる中で、サービスの持ち直しが消費全体の回復を牽引した。足下では居酒屋での飲食や海外旅行などコロナ禍で
遅れていた部門でも徐々に回復の動きがみられる。
・消費者マインドは、22年は物価上昇の下で低下傾向だったが、コロナ禍からの経済社会活動の正常化や賃上げの進展も背景に、
このところ持ち直しの動きがみられる。
・こうした中、民間調査によると、GWの旅行者数はコロナ禍前を上回り過去最高となる見込み。引き続き消費の回復が経済を牽引する
ことが期待される。
・実質総消費動向指数は、前期比で、12月▲0.1%、1月+0.1%、2月+0.2%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、11月▲1.3%、12月+1.3%、2023年1月+0.3%、2月+0.0%、3月+2.6%。
・2月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.3%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。
消費者物価は、上昇している。
・国内企業物価は、資源価格の下落等を受けて電力・都市ガスや鉄鋼等の上昇率が縮小する中、3月は前年比上昇率が3か月連続で
低下となった。
・消費者物価は、2月以降の電気・ガス価格激変緩和対策事業により押し下げられる中、3月の前年比上昇率はコアで3.1%。
物価上昇の大半は財によっている。サービスの上昇率は徐々に高まっている。
・企業の価格転嫁の進捗を疑似交易条件(販売価格DIと仕入価格DIの差)でみると、1年前と比べて幅広い業種で改善している
が、製造業部門(財関連)と比べ、サービス関連では相対的に価格転嫁に遅れ。。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、11月▲2.9%、12月+0.5%、2023年1月+5.5%、2月▲3.8%。
・持家着工数は前月比で、11月▲1.5%、12月+0.7%、2023年1月▲0.8%、2月▲+3.6%。
・貸家着工数は前月比で、11月▲2.5%、12月▲1.0%、2023年1月+0.1%、2月+1.0%。
・分譲着工数は前月比で、11月▲2.2%、12月+1.9%、2023年1月+20.0%、2月▲15.1%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、11月▲6.9%(出来高▲0.5%)、12月+0.9%(出来高+0.2%)、2023年1月+0.9%(出来高+2.1%)、
2月+51.7%(出来高+0.5%)、3月▲22.8%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、持ち直している。
・失業率は2月に2.6%と5か月ぶりに上昇したが、増加した失業を理由別にみると、より良い条件を求める等の自己都合離職や、
新たに求職活動を開始する者が増加しており、労働移動の動きもみられる。
・企業の人手不足感は全産業で高まっており、中でも、経済社会活動の正常化に伴い業況の改善が進む宿泊・飲食サービス業で
顕著となっている。こうした中、パートタイム労働者の賃金は一般労働者を上回るペースで上昇した。
・春闘の賃上げ率を企業規模別にみると、第4回集計時点において、中小企業を含めすべての規模で3%を上回る大幅な賃上げが
見込まれている。
・有効求人倍率は、10月1.35、11月1.35、12月1.35、2023年1月1.35、2月1.34(正社員は1.02)となった。
・完全失業率は、9月2.6%、10月2.6%、11月2.5%、12月2.5%、2023年1月2.4%、2月2.6%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善しているが、そのテンポは緩やかになっている。
・企業の業況判断は、引き続き「良い」が「悪い」を上回り、持ち直しの動きが継続している。ただし、前期からの変化で
みると、製造業では海外需要の鈍化等を背景に電気機械や素材系業種で悪化する一方、非製造業ではコロナ禍からの経済
社会活動の正常化に伴って幅広い業種で改善するなど、業種により状況は異なる。
○ 設備投資は、持ち直している。
・設備投資は、機械投資は足下で持ち直しの動きに足踏みがみられるものの高水準で推移しており、ソフトウェア投資は緩やか
な増加が続くなど、全体として持ち直しの動きとなった。
・こうした中、日銀短観によると、22年度の設備投資は前年度比で二桁増と高い伸びとなる見込みとなっている。
23年度も当初計画としては22年度を上回るなど、企業の投資マインドは引き続き力強さがみられる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2022年6月+9、9月+8、12月+7、2023年3月+1、6月+3。
「大企業・非製造業」は、2022年6月+13、9月+14、12月+19、2023年3月+20、6月+15。
「中小企業・製造業」は、2022年6月▲4、9月▲4、12月▲2、2023年3月▲6、6月▲4。
「中小企業・非製造業」は、2022年6月、▲1、9月+2、12月+6、2023年3月+8、6月+3。
○ 生産は、このところ弱含んでいる。
・鉱工業生産指数は前月比で、12月+0.3%、1月▲5.3%、2月+4.6%、3月(予測)+2.3%、4月(予測)+4.4%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、11月▲6.0%、12月+0.8%、2023年1月▲15.3%、2月+8.9%。
・電子部品・デバイスは前月比で、11月+0.5%、12月▲0.7%、2023年1月▲4.2%、2月+7.1%。
・輸送機械は前月比で、11月▲0.5%、12月+0.9%、2023年1月▲9.9%、2月+13.9%。
外需
○ 輸出は弱含んでいる。輸入はおおむね横ばいとなっている。
・我が国の輸出は、中国の経済活動回復等を背景にアジア向けが減少傾向から横ばいに転じたものの、全体としては弱含み。
こうした中、製造業の生産も弱含みとなっている。一方で、2月は自動車等の輸送機械を中心に増加しており、部材供給不足
が緩和される中、今後の回復に期待感がもてる。
・サービス輸出であるインバウンドは堅調に増加。3月の訪日外客数は19年比で66%(中国を除くと84%)まで回復した。
旅行消費額でみると1-3月期に1.0兆円と、19年比で88%の水準。1人当たり単価は円安もあって19年比で4割超上昇した。
引き続き、インバウンド需要の拡大が期待される。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、2か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、11月▲1.8、12月▲0.7、1月▲0.2、2月+3.5、3月+1.3。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、4か月連続で上昇した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、11月▲1.3、12月+0.5、1月+2.5、2月1.5、3月3.3。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気はこのところ持ち直しの動きがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、不動産市場の動向等を注視する必要がある。
・23年1-3月期の実質GDP成長率は前期比で2.2%(前年比+4.5%)となった。
・消費はこのところ持ち直している。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出は持ち直しの動きがみられる。
・固定資産投資はおおむね横ばいとなっている。
・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率はこのところ低下している。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きがみられる。
※各種の政策措置
○ 自動車購入
・地方都市の購入補助金(23年1月)
・環境基準の厳格化(23年7月)
○ 輸出促進策(23年4月)
・ASEAN等の市場の開拓、 先進国向け輸出の安定化
○ 金融政策
・預金準備率の引下げ(23年3月)
○ 不動産支援策(22年11月~)
・ディベロッパー向け融資安定化、 住宅引き渡し支援、住宅ローン 支援等。
○ 韓国・台湾では、景気は弱い動きとなっている。
○ インドでは、景気は持ち直している。
○ タイでは、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
○ インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は緩やかな持ち直しが続いている。 先行きについては、緩やかな持ち直しが続くことが期待される。
ただし、金融引締めに伴う影響等による下振れリスクに留意する必要がある。
・2022年10-12月期のGDP成長率(3次推計値)は、前期比年率+2.6%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・3月の失業率は3.5%となった。
○ 設備投資は緩やかに持ち直している。
○ 消費は緩やかながらも持ち直しの動きがみられ、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。
○ 住宅着工は減少し、住宅価格は下落している。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏では、景気は持ち直しに足踏みがみられる。
ドイツ・イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
・22年10-12月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.2% (イギリスは+0.5%、ドイツは▲1.7%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスは弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏は上昇、イギリスはおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+7.5%(3月)、イギリス+7.2%(3月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはこのところ横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはこのところ横ばいとなっている。