月例経済報告(R5.6.22) 基調判断 〈現状〉 ・景気は、緩やかに回復している。 〈先行き〉 ・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果 もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な 金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しする リスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に 十分注意する必要がある。
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世界経済
○ 世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している。
・ユーロ圏では、これまでの物価高の影響もあり消費が弱含むなど、景気は足踏み状態が続いている。
・欧米の消費者物価は、エネルギー価格下落を受け上昇率に一服感がみられるが、国内の財・サービス価格への波及は、ユーロ圏を
中心に引き続き進行している。
・中国では、世界的な物価上昇や貿易の鈍化等を受け輸出が伸び悩むなど、感染収束後の回復ペースは緩やかとなっている。
・こうした中、直近、アメリカでは政策金利を据え置き、ユーロ圏は利上げ、中国は利下げの動きとなっている。
今後とも世界的な金融引締めに伴う影響、物価上昇等による下振れリスクに留意。また、金融資本市場の変動の影響を注視する
必要がある。
日本の実質GDP成長率
○ 2023年1-3月期(2次速報)の実質GDP成長率は、前期比+0.7%(年率+2.7%)となった。
個人消費の動向
○ 個人消費は、持ち直している。
・所得面では、雇用情勢の改善に伴い実質総雇用者所得が下げ止まりとなった。
・消費の内訳をみると、財では、生産の供給制約が緩和されたこともあり、付加価値の高い普通乗用車を中心に新車販売が増加
傾向となっている。
・サービスでは、コロナ禍で外出を控えがちだった世帯(小規模自治体居住)でも外食消費が増加した。宿泊者数(延べ人数)
は、政策効果もあり、日本人は高水準で推移した。外国人は堅調に増加しているが、更なる回復が期待される。
・実質総消費動向指数は、前期比で、2月+0.5%、3月▲0.3%、4月+0.1%。
・消費者態度指数(DI)は前月差で、1月+0.3%、2月+0.0%、3月+2.6%、4月+1.5%、5月+0.6%。
・4月の実質総雇用者所得は、前期比で+0.2%となった。
物価
○ 国内企業物価は、このところ緩やかに下落している。
消費者物価は、上昇している。
・国際商品市況では、原油・LNG・石炭の価格がロシア政府によるウクライナ侵略前の水準を下回って推移している。
・こうした中、我が国の交易条件は、輸入物価下落に伴って、約2年ぶりに前年比プラスに転換した。
・国内企業物価は、5月は再生可能エネルギー発電促進賦課金の引下げもあり、前年比が5か月連続で低下している。
・消費者物価の前年比を寄与分解すると、財に続いてサービスの寄与が徐々に拡大している。
一方、エネルギーは、過去の原油価格下落等の影響が徐々に反映される中、5月は再エネ賦課金の引下げが加わり、マイナス
寄与が拡大した。
住宅投資・公共投資
○ 住宅建設は、底堅い動きとなっている。
・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、1月+5.5%、2月▲3.8%、3月+2.0%、4月▲12.1%。
・持家着工数は前月比で、1月▲0.8%、2月+3.6%、3月▲8.0%、4月▲0.8%。
・貸家着工数は前月比で、1月+0.1%、2月+1.0%、3月+9.8%、4月▲12.9%。
・分譲着工数は前月比で、1月+20.0%、2月▲15.1%、3月+0.1%、4月▲19.8%。
○ 公共投資は、底堅く推移している。
・請負金額は前月比で、1月+0.9%(出来高+2.1%)、2月+51.7%(出来高+0.3%)、3月▲22.8%(出来高+2.9%)、4月▲4.1%、5月+3.0%。
雇用・賃金の動向
○ 雇用情勢は、このところ改善の動きがみられる。
・就業率はコロナ禍以前を上回る水準で推移し、失業率も4月は低下。雇用者数は女性の正規雇用を中心に増加している。
・一人当たり賃金は緩やかに増加した。春闘の賃上げが一部反映され始め、4月のフルタイム労働者の定期給与は最近のトレンド
を一段上回る伸びとなっている。今後、賃上げの反映が進むにつれて増加が続くことが期待される。
・中小企業でも、民間調査によれば、今年度に給与総額を3%以上引き上げる企業の割合が5割を上回るなど、賃上げが進展した。
一方で、賃上げの理由として、物価上昇を挙げる企業は5割超となっているが、一定の価格転嫁の実現を挙げる企業は1割に
とどまる。
持続的な賃金上昇に向けては、コストの適切な転嫁を通じたマークアップの確保が重要である。
・有効求人倍率は、12月1.35、2023年1月1.35、2月1.34、3月1.32、4月1.32(正社員は1.03)となった。
・完全失業率は、11月2.5%、12月2.5%、2023年1月2.4%、2月2.6%、3月2.8%、4月2.6%。
投資・収益・業況
○ 企業収益は、総じてみれば改善している。
・企業収益は、経常利益が23年1-3月期に前年比で増益、水準も1-3月期として過去最高となるなど、総じてみれば緩やかに
改善している。
・業種別の動向をみると、製造業は素材関係等の市況悪化により前年比マイナスだが、非製造業は経済社会活動の正常化に伴い、
陸運、宿泊・飲食、小売など幅広い業種でプラスとなり、全体の回復を牽引している。
○ 設備投資は、持ち直している。
・企業の設備投資は、製造業・非製造業ともに前期比で増加するなど、堅調に推移している。ソフトウェア投資もDXの進展等も
背景に高い水準が継続している。
・2023年度の投資計画も前年度比で高い伸びが示されており、引き続き、企業の積極的な投資意欲がうかがえる。
○ 業況判断は、持ち直しの動きがみられる。
・ 倒産件数は、増加がみられる。
・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、
「大企業・製造業」は、2022年6月+9、9月+8、12月+7、2023年3月+1、6月+3。
「大企業・非製造業」は、2022年6月+13、9月+14、12月+19、2023年3月+20、6月+15。
「中小企業・製造業」は、2022年6月▲4、9月▲4、12月▲2、2023年3月▲6、6月▲4。
「中小企業・非製造業」は、2022年6月、▲1、9月+2、12月+6、2023年3月+8、6月+3。
○ 生産は、持ち直しの兆しがみられる。
・鉱工業生産指数は前月比で、2月+3.7%、3月+0.3%、4月+0.7%、5月(予測)+1.9%、6月(予測)+1.2%。
・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、1月▲15.3%、2月+8.9%、3月+5.8%、4月▲6.3%。
・電子部品・デバイスは前月比で、1月▲4.2%、2月+7.1%、3月▲10.6%、4月+6.9%。
・輸送機械は前月比で、1月▲9.9%、2月+13.9%、3月+4.9%、4月+3.5%。
外需
○ 輸出は底堅い動きとなっている。輸入はおおむね横ばいとなっている。
○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。
・貿易収支は、原油価格下落等に伴う鉱物性燃料の輸入減少と、供給制約緩和に伴う自動車の輸出増加を背景に、赤字幅が縮小
傾向にある。
・こうした中、輸出数量は、ICや半導体製造装置では弱めの動きだが、自動車の輸出増加によって全体としては底堅い動き。
同様に、製造業の生産も、輸送機械の回復によって全体として持ち直しの兆しがみられる。
・半導体部門は、足下では市況の悪化が続くものの、中長期的な需要拡大も見据え、先端分野の工場新設など各地で前向きな
投資の動きがみられる。今後、これらの進捗に伴う関連資材・設備の生産増加にも期待がもてる。
景気ウォッチャー調査
○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、4か月連続で上昇した。
・現状・季節調整値DIは前月差で、1月▲0.2、2月+3.5、3月+1.3、4月+1.3、5月+0.4。
○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、6か月ぶりに下降した。
・先行き・季節調整値DIは前月差で、1月+2.5、2月+1.5、3月+3.3、4月+1.6、5月▲1.3。
アジア経済の動向
〇 中国では、景気は持ち直しの動きがみられる。
先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが期待される。ただし、不動産市場の動向等を注視する必要が
ある。
・23年1-3月期の実質GDP成長率は前期比で2.2%(前年比+4.5%)となった。
・消費はこのところ持ち直している。
・生産は、持ち直しの動きがみられる。
・輸出は持ち直しの動きに足踏みがみられる。
・固定資産投資はこのところ伸びが低下している。
・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。
・消費者物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。
○ 韓国では、景気は下げ止まりの兆しがみられる。
○ 台湾では、景気は減速している。
○ インド・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。
○ タイでは、景気はこのところ持ち直している。
アメリカ経済の動向
○ アメリカでは、景気は緩やかに回復している。
先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等による下振れリスクに留意する必要
がある。
・2023年1-3月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+1.3%。
○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。
・5月の失業率は3.7%となった。
○ 設備投資は緩やかに持ち直している。
○ 消費は緩やかに増加しており、自動車販売台数は持ち直している。
○ 住宅着工・住宅価格ともにおおむね横ばいとなっている。
○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。
○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。
ヨーロッパ経済の動向
○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。
・23年1-3月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で▲0.4% (イギリスは+0.5%、ドイツは▲1.3%)。
○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっており、イギリスは弱含んでいる。
○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はおおむね横ばい、イギリスは上昇している。
・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+6.8%(5月)、イギリス+7.9%(4月)。
○ 輸出は、ユーロ圏は持ち直しに足踏みがみられ、イギリスはおおむね横ばいとなっている。
○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはおおむね横ばいとなっている。