月例経済報告

 

月例経済報告(R5.9.26)

基調判断

〈現状〉

・景気は、緩やかに回復している。

〈先行き〉              

・先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果

 もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な

 金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の

 下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価

 上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。

 

 

世界の経済情勢

○  アメリカ経済は回復しているものの、中国は持ち直しの動きに足踏み、ドイツを始め欧州も足踏み状態となっている。

○  24年の世界経済は減速の見通しとなった。中国における不動産市場の停滞による下振れリスクに注意する必要がある。

 ・中国の輸出入は、18年以降、米中貿易摩擦を受け減速している。感染症収束後の現在も輸出入ともに弱含んでいる。

 ・ドイツは、中国向け輸出が20年以降停滞している。景況感は大幅に悪化した。ドイツ政府は、国内企業の競争力強化の

  ための経済対策を発表した。

  「経済拠点としてのドイツのための計画」 (8/29公表)ポイント

 〇「成長機会法」を決定

 2028年まで年間70億ユーロ(1.1兆円)規模

 ・研究開発費用の損金算入を現行の3倍へ引上げ。

 ・グリーン技術投資に対して15%を補助。

 ・中小企業への研究開発補助金の補助率 を引上げ(25%35%)。 等

 

日本の実質GDP成長率

○  20234-6月期(2次速報)の実質GDP成長率は、前期比+1.2%(年率+4.8%)となり、実質GDPはコロナ前の水準を

  超え、過去最高になった。

 ・GDPギャップは解消に向かい、234-6月期には、33四半期ぶりにプラスに転換したものの小幅であり、また、外需

  高い伸びによるものである。今後、内需中心の成長により、プラス傾向が安定的に続いていくことが重要となる。

 ・一方、潜在成長率(潜在GDPの伸び率)は、G7諸国の中で最も低い。供給力の強化が課題である。

 

個人消費の動向

○ 個人消費は、持ち直している。

・雇用・所得環境の改善が続く下、家計調査(2人以上世帯)は弱い一方で、供給側の動きを捉えた指標やカード支出データ等の

 様々な指標によると、個人消費は持ち直してきている。

・物価高が続く中で、相対的に低所得の世帯における消費動向には注意が必要である。消費支出に占める食料品やエネルギーの

 シェアは、収入が低い世帯ほど高い。また、消費者マインドを見ると、収入が低い世帯ほど「暮らし向き」の回復が弱いなど、

 所得階層間のバラツキが拡大した。

・個人金融資産残高はコロナ禍で積みあがった貯蓄(超過貯蓄)もあって2,115兆円まで増加したが、これが消費に向かうことが

 期待される。また、米欧と比べ現金・預金の比率が高く、物価が上昇する中、貯蓄から投資に回っていくことが重要である

実質総消費動向指数は、前期比で、5月▲0.2%60.0%7+0.2%

  ・消費者態度指数(DI)は前月差で、4+1.5%5+0.6%6+0.2%7+0.9%8月▲0.9%。 

  ・7月の実質総雇用者所得は、前期比で▲1.2%となった。

 

物価

○ 国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。輸入物価は、おおむね横ばいとなっている。

 消費者物価は、上昇している。

・消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、激変緩和措置等によりエネルギー価格が抑制される中で、前年比3%程度で推移

 している。その構成は、財(食料やエネルギー等)、サービス(家賃や外食・宿泊等)が半々となっている。

・消費者物価上昇の主因である食料品価格は、ロシアによるウクライナ侵略等を受けた世界的な価格高騰等により、食パン

 をはじめ、幅広い品目で価格が上昇した。

・サービス物価は、宿泊料・外食等で大きく上昇している。その他サービスでも、家賃や公共サービスを除き、上昇率が

 高まっている。

 

住宅投資・公共投資

   住宅建設はこのところ弱含んでいる。 

・住宅着工は、持家や分譲住宅を中心に弱含んでいる。木材価格の上昇は一服したものの、コンクリート等の資材価格は上昇

 した。加えて、労務費上昇もあり、建築費が高止まりしていることが主な背景としてある。

・首都圏マンション新規販売平均価格は、都区部の高価格マンション供給の影響もあり上昇した。住宅リフォームは、補助事業

 の効果もあり、23年以降増加がしつつある。

・住宅着工戸数の総戸数は前月比で、4月▲12.1%5+11.8%6月▲5.9%7月▲4.1%

・持家着工数は前月比で、3月▲8.0%4月▲0.8%5+0.1%6月▲0.5%7+1.0%

・貸家着工数は前月比で、3+9.8%4月▲12.9%511.3%6月▲8.9%7+1.5%

・分譲着工数は前月比で、3+0.1%4月▲19.8%5+23.7%6月▲5.9%7月▲16.0%

   公共投資は、堅調に推移している。

・請負金額は前月比で、4月▲4.1%(出来高+2.9%)、5+3.0%(出来高+2.8%)、6+5.1%(出来高▲5.0%)、7月▲4.3%

(出来高+1.7%)、8月▲10.8%             

 

雇用・賃金の動向

○ 雇用情勢は、改善の動きがみられる。

  ・有効求人倍率は、41.3251.3161.3071.29(正社員は1.02)となった。

・完全失業率は、32.8%42.6%52.6%62.5%72.7%となった。

 

投資・収益・業況

○ 企業収益は、総じてみれば改善している。

   ・ 234-6月期の経常利益は過去最高を更新した。今年度の設備投資計画に おいて、大企業・中小企業ともにデジタル化や

   省力化を背景にしたソフトウェア投資を最も重視する傾向にある。

・本業による収益である営業利益も総じてみれば増加した。ただし、中小企業では、製造業は2期連続の減益となり、設備

 投資も減少した。継続的な賃上げに向け、適切な価格転嫁とともに、中小企業が設備投資を進め、本業の収益力を高める

 ための後押しが重要となってくる。

・インバウンドは2019年の9割弱まで回復した。インバウンド需要もあり、宿泊・飲食サービスではコロナ禍前と同水準まで

 人手不足感が拡大し、宿泊料や外食の価格は上昇した。

・宿泊・飲食業の設備投資計画は、全産業平均と比べて弱い。売上げ拡大のチャンスを取りこぼさないよう、省力化投資を

 通じた効率化や、高付加価値化・差別化を通じた価格設定力強化が課題となってくる。

○ 設備投資は、持ち直している。

○ 業況判断は、持ち直している。

・ 倒産件数は、増加がみられる。

・ 業況判断DI(「良い」-「悪い」)ポイントは短観で、

  「大企業・製造業」は、20229+812+720233+16+59+9

  「大企業・非製造業」は、20229+1412+1920233+206+239+20

  「中小企業・製造業」は、20229月▲412月▲220233月▲66月▲59月▲1

  「中小企業・非製造業」は、20229+212+620233+86+119+7

 

生産

 生産は、持ち直しの兆しがみられる。

・鉱工業生産指数は前月比で、5月▲2.2%6+2.4%7月▲1.88月(予測)+2.6%9月(予測)+2.4%

・はん用・生産用・業務用機械は前月比で、4月▲6.3%5+3.6%6+3.0%7月▲4.8%

・電子部品・デバイスは前月比で、4+6.9%50.0%6+6.8%7月▲5.1%

   ・輸送機械は前月比で、4+3.5%5月▲4.0%6月▲2.8%7+0.4%

 

外需

○ 輸出はこのところ持ち直しの動きがみられる。輸入はおおむね横ばいとなっている。

○ 貿易・サービス収支は、赤字となっている。

 

景気ウォッチャー調査  

○ 景気の現状判断(DI)季節調整値は、1か月ぶりに下降した。

・現状・季節調整値DIは前月差で、5+0.46月▲1.47+0.88月▲0.8

○ 景気の先行き判断(DI)季節調整値は、1か月ぶりに下降した。

・先行き・季節調整値DIは前月差で、5月▲1.36月▲1.67+1.38月▲2.7

  

アジア経済の動向  

○ 中国では、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。 先行きについては、各種政策の効果もあり、持ち直しに向かうことが

   期待される。ただし、不動産市場の停滞に伴う影響等に留意する必要がある

・実質GDP成長率は、234-6月期で前年比+6.3%(前期比+0.8%)。

・消費は持ち直しに足踏みがみられる。

・生産は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。

・輸出はこのところ弱含みとなっている。

・固定資産投資は伸びが低下している。

・新築住宅販売価格はこのところ下落している。

・都市部調査失業率はおおむね横ばいとなっている。

・消費者物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。

・製造業購買担当者指数(PMI)はこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる。

○ 韓国では、持ち直しの兆しがみられる。

○ 台湾では、景気は下げ止まりの兆しがみられる。

○ インド・インドネシアでは、景気は緩やかに回復している。

○ タイでは、景気は持ち直している。

  

アメリカ経済の動向 

○ アメリカでは、景気は回復している。 先行きについては、回復が続くことが期待される。ただし、金融引締めに伴う影響等に

  よる下振れリスクに留意する必要がある。

20234-6月期のGDP成長率(2次推計値)は、前期比年率+2.1%

○ 雇用者数は増加、失業率はおおむね横ばいとなっている。

8月の失業率は3.8%となった。

○ 設備投資は緩やかに増加している。

○ 消費は増加しており、自動車販売台数はおおむね横ばいとなっている。

○ 住宅着工数はこのところ緩やかに増加・住宅価格は上昇している。

○ コア物価上昇率はおおむね横ばいとなっている。

○ 財輸出はおおむね横ばいとなっている。

     

ヨーロッパ経済の動向  

○ ユーロ圏・ドイツ・イギリスでは、景気はこのところ足踏み状態にある。

 ・234-6月期のユーロ圏のGDP成長率は前期比年率で+0.5% (イギリスは+0.8%、ドイツは+0.1%)。

○ 個人消費は、ユーロ圏はおおむね横ばいとなっており、イギリスは弱含んでいる。

○ 失業率は、ユーロ圏は横ばいとなっている。イギリスは上昇している。

○ 物価(コア物価上昇率)は、ユーロ圏はこのところ低下している。イギリスはおおむね横ばいとなっている。

・消費者物価上昇率(コア)は前年同期比で、ユーロ圏+6.2%8月)、イギリス+7.1%8月)。

○ 輸出は、ユーロ圏・イギリスともにおおむね横ばいとなっている。

○ 生産は、ユーロ圏は横ばい、イギリスはおおむね横ばいとなっている。